第七話 冒険者登録と解呪
「ああそうだ、忘れていた。君が泊まっている宿はどこだ?時間になったら迎えに行かせる」
宿か。そもそも私今日始めてログインしたから宿とかとってないんだよな。正直に言おう。
「すいません、私今日この街に来たばかりなので宿を取ってないんです」
「なに?そうなのか。ならばこのギルドに有る冒険者用の宿舎に泊まるといい」
「良いんですか?私お金とかあんまり持ってないですけど」
「かまわん。黒龍王を撃退できなければ宿舎など何の意味も無いのだからな。そして黒龍王を撃退できれば国から莫大な報奨金が出る。そこから払ってくれればいい」
なるほど。たしかにそうだ。なら遠慮なく泊めてもらおう。
「そういうことならお世話になります」
「ああ。カイナート、Bランク用でいい。案内してやってくれ」
「分かった。じゃあ行こうか」
「あ、ちょっと待ってください。冒険者ギルドに登録したいんですけど」
「ん?そうなのか。じゃあついでに受付にも寄っておこう」
「ありがとうございます」
いろいろあったけど最初の目的を果たせそうでよかった。
「そうだ、今日の夕飯予定が無いんだったら「デイナムート」に行かないか?奢るよ。私も君がチャレンジメニューを食べているところを見てみたい」
カイナートさん...奢ってくれるなんて良い人だ。
「ありがとうございます。ご馳走になります」
「ああ。じゃあ夕方になったら「デイナムート」前で集合しよう」
しばらく雑談していると受付まで戻ってきた。
「じゃあ私は登録してきます」
「わかった。ここで待っているから終わったら来てくれ」
受付に近づくと「ライン」という名札を付けた人が話しかけてきた。
「はじめまして。冒険者ギルドになにか御用でしょうか」
「はい。冒険者登録をしたいんですけど」
「冒険者登録ですね。かしこまりました。文字は書けますか?」
「はい」
「ではこの用紙に名前と出来ることを書いてください。剣が出来るとかそういった大雑把なことで構いません」
そういえば私火魔法と水魔法のスキルを持ってるけど一回も使ったこと無いな。あとで使ってみよう。それでえーと、出来ることか。とりあえず剣と料理でいいかな。
「はい。受け取りました。それでは冒険者ギルドについて説明させていただきます。ここでは依頼を受けてそれを達成し報酬を貰う、それが仕事です。そして依頼を達成するとランクがあがりより難しい依頼を受けることが許されます。ランクは下からGFEDCBASの順で高くなります。最初はGランクからなので高ランク目指してがんばってください。依頼に失敗するとギルドからの評価がさがり賠償金も発生します。ランクが下がったり冒険者登録を消されることもあるので受けた依頼は失敗しないようにしましょう」
まあゲームやアニメを嗜んでいたらなんとなく分かるよね。
「基本的に冒険者ギルドは依頼の達成以外で報酬を支払うことはありませんので注意してください」
「え?そうなんですか?」
「はい。生産ギルドとの取り決めでして。冒険者ギルドは登録した冒険者に依頼を斡旋するための組織なので」
「素材を買い取ってもらいたいときってどうすればいいんですか」
「その場合は冒険者ギルドが恒常的に出している素材納品クエストを受けるか必要としている方と直接取引してください」
なるほど。そういう感じになっているのか。
「素材納品クエストは1個からの納品でも受け付けているので気軽に納品してください。依頼の達成報告やアイテムの納品は受付で行ってください」
「分かりました」
「最後に、冒険者カードの説明をします。冒険者カードは冒険者に配布されるカードでランクの確認や受けている依頼の確認などが出来ます。無くしたり破損したりすると再発行に12000ゴールドかかるので注意してください」
まあインベントリに入れておけば無くしはしないだろう。
「冒険者カードが発行できました。これであなたは冒険者です」
「ありがとうございます」
【チュートリアル クリア 〈武器強化結晶〉を入手しました】
登録できたか。じゃあカイナートさんに宿舎を案内してもらおう。
「カイナートさん」
「終わったか。じゃあ行こう。こっちだ」
どうやら宿舎は冒険者ギルドの後ろの建物らしい。
「ここだ。宿舎は下のほうが低ランク用で上のほうが高ランク用だ。ギルドマスターからはBランク用の部屋を案内するように言われてる」
「えぇ?Bランクって上から三番目ですよね。なんでそんなところに?」
「万が一にもCランク以下の冒険者に情報を漏らさない為だよ。そこから街の住民に伝わってパニックになったら目も当てられない。避難なんて出来ないんだ、それで暴動が起こってしまうと困る」
「そういうことですか」
「君の部屋はBの216番だ。鍵を渡しておく。三日間だけだが好きに使ってくれ。私はもう行く。夕方楽しみにしているよ。それじゃあ」
「ありがとうございます」
さて、私の部屋はどんなところかな。とりあえず安全にログアウトできるならどんなとこでもいいんだけど。
「おお。めっちゃ豪華だ」
思わず声に出てしまった。私の部屋の三倍はある。広すぎるだろ。ベットもふかふかで現実でも欲しいくらいだ。しばらくベットの感触を楽しんだ後金が無いことを思い出したのでフィールドに出ることにした。
「おや?悪魔の気配がしますね。あなたですか?」
玄関まで来たところ急に話かけられた。綺麗な女の人だ。しかし言っていることの意味がわからない。
「え、急になんですか?悪魔?」
「ええ、悪魔です。あなたから悪魔の気配がします。何か心当たりはありませんか?」
悪魔?悪魔か。そういえばさっき呪われた本を貰ったが。これが悪魔に関わるものだったのか?というか悪魔って何だ?魔物勢力か?
「えーと、悪魔の気配って言うのはこれのことですかね」
「まあ。これは...濃厚な悪魔の気配です。それに呪われていますね。解呪させてくれませんか?」
どうやら解呪してくれるようだ。お金とか持ってないんだがいいのだろうか。
「お金とか無いですけどいいんですか?」
「もちろん。呪いと悪魔の撲滅は私たちの使命ですので」
そういうことならありがたくお願いしよう。
「それならお願いします」
「はい。それでは...『ディスペル』」
バアァァァン
本に何か複雑な文様が浮かんだと思ったらこの人の手からでた光を弾いた。
「あら?思ったより強力な呪いがかかっていますね。ではもっと強力な術を試して見ます...『グレーター・ディスペル』」
バアァァァン
さっきより強い光だったのだがまた弾かれた。
「なっ。こ、こうなったら今出来る最大の術をかけます!『ゴッド・ブレス』!『魔力炉心』!『ジハード』!『セイクリッド・ディスペル・エンハンス』!」
パリーン
すさまじい光が溢れたと思ったら甲高い音を立てて本の文様が砕けた。
〔称号『大悪魔の呪いを解呪した者』『呪いに打ち克った者』『呪術王』『大聖者』を取得しました〕
〔〈???の書〉が解呪され〈大悪魔召喚の書〉になりました〕
えぇ...とりあえず詳細を確認しよう。
〔『大悪魔の呪いを解呪した者』 暴食の悪魔王の娘である偉大な大悪魔ブルーベリーのかけた強力な呪いを解呪した。”あっははは!あたしって天才じゃないかしら!こんなに強力な呪いを使えるなんて!”
悪魔に与えるダメージが上昇する(大)
悪魔から受けるダメージが減少する(大)
スキル:『呪術』獲得〕
〔『呪いに打ち克った者』 一定以上の強度の呪いを解呪する。”呪いなんて気合で何とかなる”
呪術耐性上昇(大)
スキル:『聖術』獲得〕
〔『呪術王』 一定以上の強度の呪いを一度も効果を受けることなく短時間で解呪する。”ふん、この程度か”
スキル:『呪術』の効果上昇(極大)
全呪術の解呪難度低下(極大)
呪術無効〕
〔『大聖者』 一定以上の強度の他者、またはアイテムにかかった呪いを一度も効果を受けることなく短時間で解呪する。”これでもう大丈夫ですよ”
スキル:『聖術』の効果上昇(極大)
全聖術の回復量上昇(極大)
聖術攻撃無効〕
〔〈大悪魔召喚の書〉R:Ex 耐久‐/‐ 帰属:イート 譲渡不可 破棄不可
呪われている。実害は無いようだが不快。
『鑑定』結果『偽装』を突破しました
これ位ハ突破してくれないとネェ
持ち主の経験を吸って成長する。成長しきったとき何が起きるかは不明。
経験値-1%(解呪済み)
一段階解呪
ふっふっふ。まさかその程度で私の呪いが解呪できると思っていたのかしら?
持ち主の経験を吸って成長する。成長しきったとき何が起きるかは不明。
経験値-10% アイテム-一個(解呪済み)
二段階解呪
ふん、なかなかやるようね。けどこの程度じゃ私の呪いは解けないのよ!絶望しなさい!
持ち主の経験を吸って成長する。成長しきったとき何が起きるかは不明。
経験値-30% アイテム-3個 スキル習得不可(解呪済み)
三段階解呪
あっははは!馬鹿ね!悪魔が素直に解呪されてやるわけ無いでしょ!いままであたしの為の供物あつめご苦労さま!
大悪魔を召喚する。召喚された大悪魔は暴れまわる。それは人類が絶望するまで終わることが無い。
大悪魔召喚(解呪済み)
四段階解呪
大悪魔ブルーベリーがかけたすべての呪いが解呪された。あまりに強すぎる解呪の力は逆流し大悪魔を従えるに至った。
大悪魔を召喚し従える〕
〔『呪術(強化)』 呪いを操る外道の技。
魔法攻撃力上昇(極大)
呪術の対象の呪術抵抗力減少(極大)
呪術の対象の被回復量減少(極大)
L技:クリエイトカース 死の宣告 崩壊魔手 etc...〕
〔『聖術(強化)』 聖なる光を操る神の御業
魔法防御力上昇(極大)
聖術の対象の呪術抵抗力上昇(極大)
聖術の対象の回復量上昇(極大)
L技:ヒール ディスペル エンハンスetc...〕
うわあ。ブルーベリーちゃんかわいそう。