第十六話 冥界行き
結局それからは一度も料理は途切れることなくいつの間にかパーティーが始まって終わった。途中現実での昼食のためにログアウトしたときはまだ誰も集まっていなかったのだが。パーティーが始まったことさえ気づかなかったのはたぶん黒龍王戦で疲れていたんだろう。普段だったら料理を食べながらでも人の話を聞くことが出来るのだから。ということでさっさとログアウトして寝よう。
と、思ったがギルドの宿舎は黒龍王戦までということで借りていたわけだし今から街にでて宿を取るというのもめんどくさい。さてどうしたものかと思っていると。
「なに?宿が無い?ならばここに泊まっていくといいだろう。部屋は用意させる」
ということで城に泊まることになった。
用意された部屋は今まで使っていたギルドの宿舎の数倍はあった。さらにベッドも最高級という言葉が相応しい寝心地。さすが王城といったところか。
「じゃあ、おやすみ」
「ええ、おやすみ」
「ログアウト」
〔お疲れ様でした〕
ふう。料理に夢中になってちょっと遅くなってしまったな。今日は宿題やらなくていいか。
◇◇◇◇◇
「ログイン」
ぐっすり寝て体調は万全だ。
「おはよう。今日はちょっと遅かったわね」
「昨日のことで疲れてたからね」
「そうね。昨日はあたしも疲れたわ」
さて、まずは黒龍王戦のリザルトの確認からやっていこう。とりあえずアイテムを確認しよう。〈黒龍王の魂〉って奴から見ていこかな。
〔〈黒龍王の魂〉R:Unique 耐久‐/‐ 帰属:イート 譲渡不可 破棄不可
Lv300を超えた生物は通常の手段では殺すことが出来ない。魂だけの状態からすら復活する。アイテムや魔力を捧げることで復活するまでの時間を短縮することが出来る。ただし現在黒龍王を形成する神力がほぼ尽きているので復活までかなりの時間が掛かる。
復活まであと1323年
{捧げる}〕
えっ。黒龍王復活するの?ってことはつまり。あの肉が食べ放題になるってこと?最高じゃん!でも復活まで1323年って...長すぎるでしょ。とりあえず魔力を復活しない程度に捧げてみよう。
〔〈黒龍王の魂〉に魔力を注ぎます〕
おお、なんか魔力が吸われてる。不思議な感覚だ。
〔黒龍王復活まであと1323...1300...1200...〕
わりと早いな。吸われてる魔力も感覚的にそんなに多くなさそうだし、もしかしたらいつでも美味しい肉が食べられるようになるかも。
〔黒龍王復活まであと300...200...100...〕
よし、これくらいでいいだろう。今すぐあの美味しい肉を食べたいって気持ちもあるけど今やったら王城が崩壊しちゃうからね。だから復活させるのはまた今度だ。
『ふっふっふ、この俺を復活させようとするとは愚かな奴だ!って、は!?なんで貴様が俺を復活させようとする!?』
!?黒龍王の声がする?どういうことだ?アイテム詳細をもう一度見てみよう。
〔〈黒龍王の魂〉R:Unique 耐久‐/‐ 帰属:イート 譲渡不可 破棄不可
Lv300を超えた生物は通常の手段では殺すことが出来ない。魂だけの状態からすら復活する。アイテムや魔力を捧げることで復活するまでの時間を短縮することが出来る。大量の魔力が注がれたので魂の状態でも見て聞いて喋ることが出来る。
復活まであと100年
{捧げる}〕
そんなことが出来るのか。すごいな、黒龍王。
『おい、聞いているのか?』
「ああ、聞こえてるよ」
「急にどうしたの?」
「あれ?ブルーベリーちゃんには聞こえてないの?」
『おい、聞いているなら俺の質問に答えろ!』
「聞こえるって何が?」
「黒龍王の声」
「黒龍王の声?どういうこと?」
『おい、無視するな、おい!』
「口で説明するより見たほうが早いかな。はい、これ」
「ええっ。死んでも蘇るって...規格外ね」
『おっ、そこの奴良いこと言った!そう!俺はただのドラゴンを超越した規格外の龍王!』
「そう。つまりあの肉がいくらでも食べられるってこと。ブルーベリーちゃんもまたあの肉食べたいでしょ?」
『えっ』
「えっ。まあ、うん。そうね。美味しかったしまた食べたいわ」
「でしょ」
『いやいやいや、なんだ貴様ら!お、俺はすべてのドラゴンの頂点に立つ黒龍王ラグナロクだぞ!!!』
「うわっ、うるさっ」
「ああ、何かと思ったら黒龍王が魂だけで喋ってるのね」
「そうそう」
「じゃああたしの家に広いところがあるからそこで復活させましょ」
「分かった」
『き、貴様らー!!!そんなことは許さんぞ!!!こ、この俺を食べるなど!!!』
いやほんとにうるさいな。どうしよう。...あ、ミュート機能がある。オンにしておこう。
『復活しない!!!俺は復活しないぞー!!!復活し』
よかった、静かになった。
うーん。確認って雰囲気じゃなくなったな。黒龍王の味を思い出してよだれが止まらん。適当にステータスだけ見て朝食にしよう。
「とりあえず朝食にしようか」
「そうね。あたしもおなか空いたわ」
◇◇◇◇◇
ふう。流石王城。朝食も最高級の味だった。さて、そろそろ冥界に行こうかな。
「なに?もう出るのかい?まあ英雄って言うのはそういうものなのかな。だけどまだ褒美が足りない気がするな。そうだ、マジックバッグに食材を用意させよう」
「それは...ありがとうございます」
「ああ。では僕は仕事があるのでこれで」
「あ、はい」
最後まで忙しい人だったな。
「で、冥界ってどう行けばいいの?」
「今なら魔法陣を書くだけだからすぐに行けるわ。でも魔法陣を書くのに時間が掛かるし怪しまれないように街の外でやったほうがいいと思うわよ」
「じゃあそうしよう」
そう言う事で王都近くの森にやってきた。ブルーベリーちゃんは地面に魔法陣を書いている。これ魔法陣って残るのかな。
「ねえ、この魔法陣ってここに残ったりする?」
「大丈夫よ。これは悪魔が暗躍用に使うやつだから。痕跡を残すようなものじゃないわ」
「それならよかった」
待つことしばし。魔法陣が完成したようだ。
「出来たわ」
「じゃあ行こうか」
「そうね。魔法陣に乗って」
「うん」
「開門」
うわっ。ブルーベリーちゃんがなにか呟いたと思ったら目の前が歪みだした。景色の色が混ざる。自分の手を見下ろすとそれも歪んでいる。なんだこれ。酔いそうだ。気持ち悪くて目を閉じる。!?まぶたの裏まで歪んでいる...どうやら何とかして耐えるしかないようだ。
景色が色を取り戻す。何だここは。見渡す限りの荒野だ。それ以外何もない。
「ブルーベリーちゃん、どういうこと?」
「あ、あら?おかしいわね。教わったとおりに発動したはずなんだけど...」
ブルーベリーちゃんも戸惑っているようだ。
「くせえな~。くせえくせえ。俺らの大嫌いな天使の臭いがぷんぷんするぜ~」
急に男が現れた。何だこいつ?
「はあ?急に何よ?」
ブルーベリーちゃんが謎の男に食って掛かる。
「へっへっへ...どこの間抜けから手に入れたのかは知らんが冥界直通の魔法陣は天使をはじくってのは知らなかったようだな」
え?あ!そういえばブルーベリーちゃん半分天使じゃん!ブルーベリーちゃんのほうを見ると気まずそうにしている。
「うん...そうね。あたし半分天使だったわね。完全に忘れてたわ」
「ま、まあ私も忘れてたからおあいこだって!」
「うん...ありがとう」
結構落ち込んでいる。
「あ~ん?何を話してるかは知らね~が。冥界に入りたいんだったら正規の入り口から入ってきな。そうしたら俺らが歓迎してやるよ。へっへっへ...」
うわっまたか。ここに来たときと同じように景色が歪む。わりときつい。
ふう、終わったか。何とか耐えられた。それで、ここはどこだ?岩で出来た洞窟の中だ。出口がありそうな気配はない。
「ブルーベリーちゃん、ここがどこか分かる?」
「そうね。あいつは正規の入り口って行ってたしたぶん黄泉比良坂だと思うわ」
「黄泉比良坂...」
「現界から冥界に行くにはいくつかある迷宮を通らないといけないの。黄泉比良坂はその一つよ」
「そっか。うーん。大変なことになったなぁ」
「ごめん、イート」
「まあ、いいよ。どんな迷宮だろうと死ななければいつか攻略できるだろうし」
「まあそれもそうね。ここのことは多少知っているし案内するわ。こっちよ」
「分かった」
さて、ブルーベリーちゃんの家に行くつもりがえらいことになってしまったな。まあさっきも行ったとおり死ななければ何とかなるでしょ!
この作品を読んでくれてありがとうございます。
今回の更新ですがだいぶ遅くなってしまいました。
たぶん今後もこれくらい遅くなるかも知れません。
もしかしたらもっと遅くなるかも知れません。
楽しい趣味なのでほどほどにがんばっていこうと思います。