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食欲少女、VRMMOを食べる  作者: 豚肉革命
第一章 黒龍王ラグナロク撃退戦。あるいは食欲少女が無敵になるまで。
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第十四話 決戦!黒龍王ラグナロク

 昨日行った京都は楽しかったな。お昼ごはんも美味しかったし。


 まあそれはいいや。ゲームをやろう。


「ログイン」


【ワールドアナウンス 魔物勢力プレイヤー『ムテキンニク』がゴブリン王の座を継承しました】


 えぇ...王ってすごいな。


「ん、おはよう」


「ブルーベリーちゃん。今日は起きてるんだね」


「当たり前じゃない。今日はこれから黒龍王と戦うのよ」


「そうだね。じゃあ朝ごはんだけ貰って待ってようか」


               ◇◇◇◇◇


 ブルーベリーちゃんと話しながら時間を潰しているととうとう迎えが来た。部屋のドアを叩く音がする。


「イート、居るか。迎えに来たぞ。入れてくれ」


「今開けます」


「分かった」


 ドアを開けると完全装備のカイナートさんと知らない人たち(おそらくカイナートさんのパーティーメンバー)が居た。でもなぜ部屋に?


「何で部屋に入ってきたんですか?」


「ああ、君は昨日寝ていたから知らないか。集合場所には転移で行くことになってるんだ」


 カイナートさんが手に持った結晶を掲げる。それが光を放ったと思ったら次の瞬間知らない場所に居た。大きい体育館のような場所だ。そうか、これが転移か。初めて体験したが面白いものだ。


「じゃあ作戦を説明するぞ。ここで準備を整えてから黒龍王の近くまで転移する。開幕は力をためた魔法使いたちの最大火力をぶつける。その後はなるべく死なないように攻撃し続けるって感じだな。正直開幕の魔法でダメージを与えられなかったら終わりだ。うまくいくよう祈っててくれ。それじゃあ私たちは挨拶に行くからこれで」


 なんというか雑だ。黒龍王なんていう化け物相手に戦うということで緊張しているのかな。


 しばらくボーっと眺めていると大きい声が聞こえてきた。


「よし!全員集まったな!今日は黒龍王戦に集まってくれてありがとう!言いたいことは昨日のパーティーで全部言った!だがこれだけは言わせてくれ!勝つぞ!」


オォォォォォォォォ!!!


 昨日のパーティー?何それ。


「ブルーベリーちゃん」


「ああ、あんたは昨日寝てたけどパーティーがあったのよ。美味しいものとかいっぱいでたわ」


「なにそれ聞いてない」


「まあ寝てたんだし仕方ないでしょ」


 う、うらやましい。はあ、まあ仕方ないか。私も京都で美味しいもの食べてきたし。


「最後に今日のために特別な配合をされたネクタルを配る!これは本来の効果とは違いどんな致命傷を受けても防ぎ効果時間が一時間減るというものになっている!効果時間は二時間!つまり二回だけ致命傷を防いでくれる!これの効果が切れたら一度転移でここまで戻ってきてもらう!ネクタルはそれなりの量を用意できた!なるべく死ぬなよ!」


 おお、目の前に赤い液体の入った瓶が浮かんでいる。周りを見るともう飲んでいるようだ。じゃあ私も飲むか...うまっ!何だこれ!美味しすぎる!


〔料理バフ〈ネクタル〉が発動しました 永続化しますか {はい}{いいえ}〕


〔料理バフ〈ネクタル〉効果時間:2:00

 致命傷を受けたとき効果時間を一時間減らし防ぐ

 効果の消去不可

 毒や出血で死亡する際にも発動する

 自傷でも発動する

 発動した際傷を全回復する〕


 え?なんだこれ。...っあ!スキル『デイナムート』か!今まで一度も料理バフが発動したことが無いからすっかり忘れてた!ん?ちょっとまてよ。これ、ネクタルを永続化って書いてあるよな。ネクタルの効果は致命傷を防いで効果時間が一時間減る...これ永続化したら私不死身になるんじゃないか?やってみよう。


〔{はい}が選択されました 〈ネクタル〉効果時間:∞〕


 いやーははは。まさかこんなことになるとは思っていなかったがうまくいけばこれで不死身だ。そうだ、ブルーベリーちゃんにも言っておこう。


「ブルーベリーちゃん、私不死身になったかも」


「はあ?何言ってんの?」


「いや、私のスキルに料理バフの永続化っていうのがあるんだけど」


「ええ?まさかそのスキルでネクタルのバフを永続にしたの?」


「そうそう」


「イカレてるわね。そのスキル」


「まあ私もそう思う」


 そんな話をしていると出発の時間のようだ。足元に大きな魔法陣が広がる。視界が真っ白になったと思ったら目の前が雪山になっていた。


『グルルルルルルル』


 う、おっ。真っ黒な体に一目見ただけで分かるほどの”力”が集まっている。これが黒龍王か!


〔〈ネクタル〉の効果が発動しました〕


〔ブルーベリーの『Illusion』によってダメージが押し付けられました 〈ネクタル〉の効果が発動しました〕


 えっ?まさか黒龍王を見ただけで死んだ?ええええ!いやまあ私レベル15しかない雑魚だけど!いくらなんでも見ただけで死ぬってのは...強すぎでしょ。そしてさらっとダメージを押し付けてるブルーベリーちゃん...まあいいけどね。


「よし!魔法を叩き込め!」


 うおおおお、すごっ。色とりどりで形もさまざまな魔法が黒龍王めがけて飛んでいく。それはどれか一発でもあたれば街が消し炭になるだろうと思えるほどの威力だった。


『グガァァァァァァ!』


 !黒龍王にダメージが通った!浅くない!これなら撃退くらいなら出来るんじゃないか!?


『グルルルルルル...まさかこの俺に傷を負わせるような奴が人間に居るなんてな...いいだろう。人間というか弱き身で有りながらそこまで力を高めたことに敬意を表して...本気を出してやろう』


 ええ!?今の段階でさえ撃退は出来ても討伐は出来ないだろうってぐらい強いのにさらに上があるの!?


〔黒龍王ラグナロクの決戦スキル『ラグナロク』が発動しました。このスキルの発動に対して干渉できません〕


 うわあ。何だこれ。あたり一面が真っ赤に燃えている。さっきから黒龍王がしゃべるたびにネクタルの効果が発動しましたって出てたのにここに来てからはそれが出っ放しだ。つまり本来ならここは私が来るところじゃないってことだ。その証拠に精鋭が集まっているはずなのにどんどんネクタルの効果を使い切って転移していく。最終的に私とブルーベリーちゃんを含んで十五人が残った。これだけ!?少なっ。


 『ほう...十五匹も残ったか...まさかこれほど残るとは思っていなかったぞ...では始めようではないか...我等の戦いを...!』


〔黒龍王が『レーヴァテイン』を発動しました〕


 極限まで鍛え上げられた黒い大剣が落ちてくる。あれが直撃すればたとえ山だろうと即座に消滅するだろう。


〔グレゴリオが『アイギス』を発動しました〕


 そんな威力の物を何事も無く受け止める半透明のドーム。どうやらグレゴリオという人が防いでくれたようだ。


〔アンナが『ゴッド・ブレス・エンハンス』『ジハード』『レクイエム』『ジャッジメント』を発動しました〕


 大量のバフが付く。でもこのバフ全部割合だから私たちには意味ないね。


〔トールマンが『ファイナルスター☆』『応援ありがとう!』『超新世界系アイドル』『墜天呪詛百八式』を発動しました〕


 何だこいつ!?スキルの名前から効果がまったく読み取れない。だがまあこのフィールドを生き残っているということは実力は確かなんだろう。


〔ザ・タイタンが『土壁生成』『大地震』『天蓋』を発動しました〕


 おお、大量の壁が出てきた。ちょっとここに隠れさせてもらおう。私が出て行ったところで何かが出来るとは思えないからね。


 そんなこんなで私には理解でない規模の戦いが始まり...黒龍王に大ダメージを食らわせたところで敗北した。だが黒龍王は満足そうだ。


『クックック...これほどの戦いなどどれくらいぶりか...嗚呼...久しぶりに満足したぞ...だがなぜだ...?『ラグナロク』が解除されない...まだ戦いが終わっていないというのか...?』


 え?もしかして私たちのこと?いやいや、あんな超インフレバトルに入り込めるほど強くないし。私たちはただ不死身なだけだよ。もう戦いは終わってるよ。


『とりあえず当たり一面吹き飛ばしてみるか...』


 ちょ、まっ。


〔黒龍王が『インフィニティ』を発動しました〕


 うわあああ!視界が揺れる!気持ち悪っ!


『ん...?何だこいつらは...まったく力を感じん...なぜ生きている...?...まあいい...出てきたのなら戦うのみだ...』


 ん?なんだこの匂い。めちゃくちゃいい匂いなんだが...どこからしてるんだ?


『?...何をしている...掛かってこないのか...?...ならばこちらから行くぞ...』


 そうか!こいつか!こいつの傷口からめちゃくちゃいい匂いがする!これ、食べたらどれだけ美味しいんだ...?


「ちょ、ちょっと、イート!どうすんのよこれ!完全に狙われてるわよ!いくら死なないって言っても怖いものは怖いんだからね!」


「ねえ、ブルーベリーちゃん。聞きたいんだけど...あいつって食べたらどれくらい美味しいか気にならない?」


「は?あ、あんたなにいってんの?そりゃあたしも暴食の悪魔だし食べられるなら気になるけど...」


「気になったら実践あるのみだよ!行こう!」


「きゃああああ!?ちょ!引っ張らないで!?」


『なんだ...貴様ら...何を言っている...!?』


 ブルーベリーちゃんの手を引いて黒龍王のところまで走る。さっきの攻撃で近くにこれたのは運がよかった。すぐにたどり着く。じゃあ食べてみよう。


がぶりっ


 うっっっっま。何だこの肉。今まで食べたどの肉よりも美味いぞ!?


「え、ちょ、ちょっとほんとに食べてるし!あーもう!すごく強い奴なのにこんなに美味しそうな匂い撒き散らして!これで食べるなって方が無理でしょ!...美味しいいい!何これ!?口に入れたとたん肉の旨みが爆発した!?牛肉や豚肉なんかとも違う!ドラゴン肉としかいえない味わい!溢れる血でさえ極上の味!こ、こんなものを食べてしまったらもう今までの肉には戻れない!」


『な、何だ貴様ら...!何をしている...!俺は頂点捕食者ドラゴンの王だぞ...!そ、その俺を食べるなど...!くっ...!は、離れろ...!』


 離れろといわれて離れるわけが無いだろう!それにこんなに美味い肉なんだ。味わいつくさなきゃ肉に失礼って物だ。


『グオオオオ!グハッ!や、やめろ...!』


「やめなーい」


『グッ、そ、そうだ...お前たちに俺の持っている物を何でもやろう...!だから離れてくれ...!』


「何でもくれるって言うならこの肉を貰う」


『グアアアアアア!!くそっ!分かった!俺のスキルをやろう!だからこれ以上俺を食べないでくれ!』


〔黒龍王ラグナロクからスキル『ラグナロク』『レーヴァテイン』『ユグドラシル』etc...を継承しました 継承したスキルがツリースキル『黒龍王』になりました〕


 肉が何か言っているが無視して食べる。腹の切り傷から入ってひたすら食べる。ああもう、口でちぎるのめんどくさいな。剣を使おう。いくら血が最高の味付けになるといってもそれだけじゃ真に肉を味わったとはいえないだろう。低品質だけど塩とかも使おう。


 しかしそんな時間もついに終わってしまう...。


『オ、オオオオオオ...こ、この俺が...こんな、ところ、で...』


〔黒龍王ラグナロクを討伐した Lvが286に上がった 〈黒龍王の魂〉〈黒龍王の鱗〉〈黒龍王の爪〉etc...を入手した〕


〔称号『黒龍王ラグナロク討伐者』『不死身』『到達者』etc...を取得しました〕


〔スキル『料理(強化)』が『我流料理術』に進化しました 『鑑定』が『神眼』に進化しました  『採取』が『我流採取術』に進化しました etc...〕


【ヘルプ 我流スキル 我流スキルとは通常のスキルとは大きくかけ離れた進化をしたスキルです。発現者の好きなように名前を変えられます。我流スキルは他者に伝授することが出来ます】


【ワールドアナウンスを流しますか?】


【ワールドアナウンスを流しますか?】


【ワールドアナウンスを流しますか?】


 ええ!ちょ!肉が消えていく!なんで!まさか黒龍王が死んだから!?今までの魔物は死んでも死体が残ったじゃないか!くっ、残念だ。だがまあ仕方がない。あんなに美味しい肉をたらふく食べられたのは一生に一度レベルの幸運だ。


 さて、黒龍王戦のリザルトだ。だがいま私は心地いい満腹感と美味しい肉の余韻に浸っているところで確認なんてしている暇は無い。ワールドアナウンスも適当にはいを押しておこう。


【ワールドアナウンス 人勢力プレイヤー『イート』が『黒龍王ラグナロク』を討伐しました】


【ワールドアナウンス 人勢力プレイヤー『イート』がLv100に上がり『到達者』の称号を取得しました】


【ワールドアナウンス 人勢力プレイヤー『イート』がLv200に上がり『超越者』の称号を取得しました】


 それにしても。黒龍王の肉...美味しかったなー。

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― 新着の感想 ―
[一言] あ……部位欠損のスリップダメージで…… 体内入っても不死身だから消化器官で溶かされなかったのか…… 黒龍王かわいそうに……
[一言] あーあ、ゲーム壊れちゃった♡
[一言] これはドラゴンイーターですわwww いや、草生やしてる場合じゃぬぇ!?
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