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ロマンス小説が大好きな令嬢は、自分の恋愛に興味ありません!  作者: 希空 蒼


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外伝20話 カイトの嫉妬

 リアン家に行った日から数日後、カイトはシュリヒトを王宮に呼び出していた。

 執務室の周りをレイに人払いしてもらい誰も入って来れないよう、徹底的にグロース公爵に気づかれないようにする。


「今日呼んだのはグロース公爵について聞くためだ。知っていることがあるなら全て話せ」

「グロース公爵について…ですか?そうですね…公爵家と子爵家ですかはあまり交流がなく…」


 シュリヒトはグロース公爵と話した時を思い返しているようだった。

 長く考え込まないといけないほどには話していないということがわかる。


「話したといえば…前に偶然グロース公爵にお会いした時に、最近よく王宮に行っているよね、と言われたくらいです」

「恋愛相談のために王宮へ通っていた時だな」

「はい」

「恋愛相談のことはあいつに言ったのか?」

「いえ、少し恥ずかしいなと思い話していません。仕事のためと誤魔化していました」

「そうか」


 となるとやはり、シュリヒトが恋愛相談を受けていたという情報がどこかから漏れている。

 それに、そもそも何故グロース公爵がシュリヒトが頻繁に王宮を訪れていたことを知っているのか。


 彼女が以前シュリヒトと数回会っていた日のことをカイトは思い返しても、彼女がグロース公爵と出会ってしまった日以外、グロース公爵は王宮を訪れていない。


(シュリヒトが監視されている可能性が高いな)


 その前から王宮に出入りしている人を毎日どこかで見ていたかもしれない。

 そこでシュリヒトに目をつけたのだろう。


「お前がグロース公爵に監視されている可能性がある」

「か、監視ですか?!」

「ああ、だから俺の婚約者のためにも、自分の身の回りには必ず気をつけろ」

「わかりました…」


 それだけじゃない、シュリヒトだって婚約者が居るのだから、気をつけておかないとその婚約者にも危険が及んでしまう。


 せっかく彼女が相談にも乗って応援してあれだけ喜んでくれたのだから、幸せになってくれないとカイトとしても困る。

 二人に何かあったとなれば彼女はとても心配するだろうから。


「俺ではなく彼女に会うために王宮に来る時は俺も日程を把握しておく。その日にはこちらから護衛をつけるから、彼女と会うのに遠慮はしなくていい」

「よろしいのですか?」

「別にお前のためじゃない。あくまで彼女のためだからな」

「はい」


 シュリヒトはカイトの発言に違和感を抱いているようだった。

 勝負のことを知っているシュリヒトからしてみれば、カイトが嫉妬の反応をしていることに気がついたのだろう。


 しかし、カイトはシュリヒトが勝負について知っている、ということを知らない。


「エア様のためにも常に警戒して行動致します」

「それは何よりだが、俺の前で彼女の愛称を軽々しく口にするなよ」

「あ…はい」


 カイトは釘を刺すように鋭い視線を向けたというのに、シュリヒトは少し笑って言葉を返して来た。


(何で笑ったんだ?)


 その理由をカイトは考えつくことが出来ないまま、また数日が経っていった。



 今日はカイトが街に公務に出ている間、彼女の元にグレンツェント侯爵令嬢とシュリヒトが訪れることになっている。


 幸いにもあの日からグロース公爵の動きはない。

 油断は出来ないが、こちらから大きく動かない限り暫くは大丈夫だろう。


 仕事を終えたカイトが彼女の部屋を訪れれば、まだ三人共揃っていた。


「おかえりなさい…」

「仕事が早く終わったんでな。だが、そんなに驚くことではないだろ」

「いや、驚きますよ…普通」

「「お邪魔しております、王太子殿下」」


 カイトが入れば皆が驚いた表情を浮かべていた。

 何か聞かれてはまずいような話でもしていたのではないかと疑いを持つ。


「今日は集まっていると聞いて、一体何の話をしてたんだ?」

「えぇ~っと…」

「エア!聞く時が来たわよ!」


(何故こんなに空気が悪い?)


 彼女だけが話しづらそうな顔を浮べ、他二人が応援するように見つめている。

 本当に何の話をしていたのだろう。


「…グロース公爵の恋愛相談を受けてみようかなって話してたんです。何か手がかりが得られるかと思ってたん…です…けど…」

「……」


 自分でそうしたつもりはなかったものの、カイトは険しい表情になっていた。


(どうして自ら危ないことに首を突っ込むんだ…)


 彼女を守るために部屋から出ないように言い、出来る限り早く解決しようと考えていたというのに。

 しかし中々尻尾を見せず、拘束に値する証拠は見つかっていない。


 彼女の言う作戦を考えたことがなかったわけじゃない。

 けれどそれは一番危ない作戦だった。


 だから思いついてもすぐに候補から除外し、他の方法を模索していたのに。

 彼女からそれを提案してしまうのか。


「馬鹿だろ。あんなに震えて怖がっていたのを忘れたのか?」

「覚えてますよ、それくらい…」

「なら止めておけ。もうお前に怖い思いはして欲しくない」


 カイトはあの日を忘れることは出来ない。

 グロース公爵について調べている間、その時の光景を何度も思い浮かべ、絶対に迅速に解決すると捜査に勤しんだ。


 本当にもう二度と彼女をあんなに目に合わせたくない。

 それでも心の何処かで彼女が望むなら、どうにかして望みを叶えられる策を考えようとする自分がいた。


(婚約と勝負まで、俺の願いを聞き入れてくれたからな…)


 渋々許可すると伝えようとしたところ、カイトよりも先にグレンツェント侯爵令嬢が口を開いた。


「許可したらエアが一つお願いを聞いてくれるわよ」

「ノア?!私そんなこと一言も…」

「―わかった」

「って、それを聞いてすぐに答えを決めないで下さい!!」


(勘違いされているが、まあいいか)


 彼女が動揺している中、他二人があっという間に部屋を出て行った。

読んで頂きありがとうございました!


外伝20話のカイトとシュリヒトの会話は、本編28話でシュリヒトが言いかけていたことです。


カイトが嫉妬していることをエアに言わずに黙っておくことにしたのは、恋をしていたシュリヒトはカイトに同情するところがあったからです。

エアと友達であり勝負の手助けをしながらも、密かにカイトも応援しているシュリヒト…。


次回は日曜7時となります。

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