第9話 恋愛相談
日にちが決まり、シュリヒト子爵には王宮に来てもらうことになった。
王宮は色んな位の人の出入りがあることで、好都合なことに誰も私と会うために訪れているとは思わない。
「お待ちしておりました!シュリヒト子爵」
「エーアリヒ様、この度はありがとうございます」
シュリヒト子爵は私と同い年の十八歳。
まさに青春真っ只中と言える。
「お話が出来るのを楽しみにしていたんです!どうぞ、座って下さい」
「あ、はい!」
私がやや興奮気味に目を輝かせてそう言うと、シュリヒト子爵は驚いてはいたが変に思ったりしないはしない優しい青年に見える。
これはかなり好印象だ。
(結構モテるタイプかな?)
「お嬢様、落ち着いて下さい」
「はい…」
やっと出来る恋話しに気分が舞い上がり、ヨハナに注意されてしまった。
「―では、お話を聞かせて下さい」
私も椅子に座り、深呼吸をして落ち着いてから早速本題に入る。
「はい。まず僕には幼い頃から一緒に育ってきたファインのことが好きなんです」
「ファインね!お茶会で何度か話したことがあります」
「二人で出かけたりプレゼントを渡してみたりアピールしているんだけど反応が薄いといいますか、いつも同じ反応で…。それで脈がないのかと告白する勇気が出ないんです」
「なるほど…」
(ファインと言えば、とても愛らしく綺麗な見た目とは裏腹にとても落ち着いた方なんだよねー)
お茶会では一人でお茶とかお菓子を楽しんでいることが多かったが、性格は優しい性格で自分から動かなくても他の令嬢が声をかけて人が集まるタイプ。
それから自分から話は振らないけど、聞かれたら笑顔で答えてくれる。
不愛想、という訳でもない。
(となれば…)
「ファインは自分の気持ちや感情をあまり表に出せないタイプかもしれないですね」
「表に出せないタイプ…ですか?」
「そう。シュリヒト子爵からのアプローチは嬉しいけれど、感情が表に出ないからファインがどう思っているのか私たちには分からなくて、反応が薄いと感じてしまうとか」
王太子殿下みたいに意地悪さが目に見えてると何を考えているのか分かりやすかったりするけど、見えていなかったらそれは不安になるになるだろうなと思う。
「それにファインはシュリヒト子爵だけでなく、他の人から貰った時も同じ反応じゃない?」
「確かに、彼女が両親から何かを貰った時も同じような反応でした。でもそれはそれで悲しいです…」
誰しも好きな人の特別でありたいと思うはずだ。
それで誰に対しても同じ反応だったなら、自分は特別じゃないのかとがっかりしてしまうのだろう。
(私に誰かの特別でありたい気持ちは分からないけど…)
「とりあえずファインの気持ちを知りたいから告白のことを考えるのは後にしましょう。そこで次に何か渡すときは感想を聞いてみたら?それか、彼女の行きたい場所を聞いてデートするとか!ファインなら答えてくれると思うし」
「はい!そうしてみます!」
ここへ来た時のような暗い表情が明るくなった。
(少しでも不安が減っているといいな)
「じゃあまた進展があったら訪ねて来て。いつでも大歓迎だから!」
「本当にありがとうございます。エーアリヒ様」
「あ、それと、私のことはエアでいいよ?これから成就するまでこうやって話すのだから。それに同い年でしょ、敬語の必要もなくない?」
ヨハナの顔から立場を考えて下さいという気持ちが読み取れる気がするがそれは気にしない。
今は王太子殿下の婚約者と子爵でも、いずれ公爵と子爵になるのだから。
「では…エア様。僕も呼び捨てでお願いします。後、僕は普段からこの話し方なので」
「そうなのね」
「お嬢様とは大違いです」
「ヨハナ!!」
ヨハナはついに我慢出来なくなったようで、一つも言い訳が出来ない正論を言われてしまった。
(シュリヒトは笑ってるし…)
「ははっ…なんだか元気が出ました。では、良い報告が出来るように頑張ります」
「頑張って!」
そうしてシュリヒトは部屋を出て行き、今日の恋愛相談は幕を閉じた。
読んで頂きありがとうございました!
次回は日曜7時となります。