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ロマンス小説が大好きな令嬢は、自分の恋愛に興味ありません!  作者: 希空 蒼


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外伝17話 彼女の実家、リアン公爵家へ

 彼女からの提案があって、グロース公爵について調べるため彼女の実家であるリアン家へ出向くことになった。

 それに伴い、カイトは手早く仕事を済ませ、出来る限り早くリアン家へ向かえるように日程を組んだ。


 リアン家に向かうのはとても楽しみだった。

 彼女が育った家や街の風景を見ることで、少しでもまた彼女のことを知られるのではないかと。


「帰って来たー!!」

「そんな嬉しいのか?」

「実家って安心するものですよ」


 彼女の表情から見るに、本当に心の底から嬉しそうだった。

 そんなに王宮の暮らしが嫌だったのかと、悲観的に考えてしまう。

 実家は安心するものと言われ、じゃあ王宮は安心出来ない場所なのかと聞いてしまいそうになる。


(まあ、今はあいつのせいで安心出来ない部分もあると思うが)


 それから周りを見渡すと、何かおかしく感じる。

 王宮では誰かが仕事をしている音が聞こえたり、使用人もよく見かけるのにも関わらず、ここでは彼女と自分の音以外に音がしない。


 人が住んでいるのか怪しいと思ってしまうほどに静かで、人の気配も物も無い。


「随分静かで、人の住んでいる気配が感じられないがどうしたんだ?」

「それは私が居なくなって、ここにはお父様と数人の使用人しか残っていませんからね」

「母親は居ないのか?」

「…もうこの世に居ないですよ。数年前に亡くなりました」

「すまない、軽率だった」


 レイなら知っていたのだろうが、そこまでカイトは知らず迂闊に聞いてしまって申し訳なかった。


(彼女には問題がないと、調べてもらった書類を軽く目を通しただけで終わってしまったのが仇となったな…)


「気にしなくて大丈夫ですよ。お母様とはあまりいい思い出がありませんから」

「……そうか」


 更には落ち込んでいることに気づかれて、彼女に気を遣わせてしまった。

 彼女の明るさと好きなことに真っ直ぐなことの裏には、母親との暗い過去があったからなのかもしれない。


 その過去は彼女も話せる勇気はないようだし、聞くのは止めた方がいい。

 気が向いたら、と彼女は言っていたが正直今すぐ聞きたいという気持ちは少なからずある。


 彼女の辛い過去に寄り添いたいという気持ちがあったからだ。

 何があっても支えるから、どんな些細なことも話して欲しい。


 けれど彼女は話すとしたら、例えば婚約破棄した時と言った。

 それでは遅い。隣で支える前に彼女は自分から離れた遠くへ行ってしまう。


 勝負に関わらず彼女の心を掴まなければ、彼女の本心も過去も何も聞けない。

 

(…やはり母親を亡くしたことまでは知っておくべきだった)


 そうすれば、彼女の自嘲した表情も見ずに済んだというのに。

 しかし、母親との過去の話はきっとレイの調べた書類に載っているだろう。

 だから彼女が自分から話し出すまで、あの書類は大事にしまっておく。


 その後も彼女が何事もなかったかのように笑顔で振る舞う姿を見る度に、胸がどうしようもなく痛んだ。


「じゃあ、お父様にお話を聞きに行きましょうか」

「そうだな」


 今日はグロース公爵について聞きに来たんだ、彼女の話に落ち込んでいれば、物事を解決するのも遅くなってしまう。

 とにかく、今最優先なのはグロース公爵のことだ。


 カイトは思考を切り替えて、仕事に臨む気持ちでリアン公爵の元へ向かった。


「お父様、ただいまー!」

「おかえり。元気そうでよかった」


 彼女は扉を開けるなり、すぐさま父親の胸へ飛び込んだ。

 その行動に驚くと共に、安堵した。


(父親との関係は良好なのか…良かった)


 母親とはいい思い出が無くとも、実家は安心すると言っていたということは良い父親だと想像することは出来た。

 その様子をしっかりと目で見れたことで、彼女の過去は辛いことばかりではなかったのだと安心する。


「王太子殿下もお越し頂きありがとうございます」

「ああ」


 本当に優しそうな父親だ。

 リアン公爵に促され椅子に座り、彼女がグロース公爵について聞き始め、リアン公爵は思い当たることがあるというように、難しい表情で話し出した。


「グロース公爵と言えば、それはもうずっと前から何度もエアに縁談の申し込みが来ていたよ。いくら断っても一ヶ月経てばまた送られて来るんだ」


(は?あいつはそこまで彼女を追っていたのか)


 それはカイトも知らなかったことだ。

 縁談を送っているかどうかは家同士が手紙でやり取りしているため、調べてもわからない。


 どちらかの家に聞かなければ知ることは出来ない情報なのだ。


「それで何年もそれが続いて、一応一度だけエアに話したんだ」

「私が聞いて断ったのはそれね」

「そうだ。でも、エアが王太子殿下と婚約してからも、婚約を止めさせるように言われたり、何で許可したのかと、色々言われたよ」

「ずっと前からということは、前グロース公爵の時からか?」

「そうです」


(俺と彼女の婚約にまで口を出していたとは、相当彼女が欲しいようだな)


 やはりただ純粋に彼女に好意を抱いていて、何度も縁談を送っていたのに断られて、そんな中カイトと婚約したことでどうして自分は駄目なのかと腹を立てたという線は確実に消えた。






読んで頂きありがとうございました!


次回は日曜7時となります。

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