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ロマンス小説が大好きな令嬢は、自分の恋愛に興味ありません!  作者: 希空 蒼


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外伝9話 全てカイトの思い違い

 嫉妬して冷たく言ってしまって後悔していたものの、彼女に会いに行くことは出来なかった。


 嫌われていたらどうしようと不安で会いに行くのを躊躇っていたのだ。

 しかしそれでも彼女の顔を見たいと、矛盾した気持ちを抱えていた。


(自分がこんなにも臆病だったとは…)


 王太子である自分のことを不満に思ったり嫌っている貴族や平民が、そういった負の感情を抱いていることは何も気にしていなかった。

 人の意見はそれぞれあって当然で、この立場である以上わかっていたことだ。


 けれど、彼女に嫌われるのだけは嫌だと思っている。

 彼女と婚約してから自分が変わっていってる自覚はあるが、こんなに変わるとは思ってもみなかった。


 そうして彼女の部屋を訪れることが出来ないまま数日が経過する。


 この日は王宮の外に行く予定はなく、執務室でいつも通り仕事をしていた。

 そんな中、彼女の方から執務室に訪れて来て、何を言われるのかと鼓動が速くなる。


 入って来た彼女にどうしたと、平然を装って問いかければ彼女は驚いた様子を見せた。


(…もしかして、俺が怒っていると思っていたのか?)


 少しの沈黙が続いた後、彼女が口を開き外出したいと申し出て来た。


 自分が考えていたことは完全に的外れで、始めから勇気を出して会いに行っていれば良かったと悔やむ。


 どこに行くのかと聞けば景色が綺麗な所だと言われ、何しに行くのかと聞けば見守り隊だと言われ、意思を汲み取ろうとしたがよくわからなかった。


 頭を回転させて考えていれば、見兼ねた彼女が告白が成功するか応援して見届けたいと言った。

 それだけで外出するのかと謎に思ったし、誰の告白を応援するのかと疑問ばかりが頭に浮かぶ。


 しかし彼女の外出を却下するつもりはない、もちろん自分もついて行くが。

 その意思を口に出せば案の定彼女は驚いた。


(そんなに俺と出かけるのは嫌か…)


 自分の言動のせいだが、やっぱり胸が痛む。

 それに、もしかしたら自分とではなくシュリヒトと出かけたかったと思っているかもしれない。


 それでも彼女が外出する時に自分も行かないと不安だった。

 変な虫がついたり、何かに巻き込まれたりするかもしれないと心配なのだ。

 だからこれだけはいくら嫌がられても、絶対に譲れない。


 心配だと言えば彼女も納得すると思ったのだが、他の護衛をつければ済む話と言われてしまった。


(本当に嫌なんだな…)


 とはいえ、他の護衛をつけるなど一番嫌だ。

 自分以外に彼女を任せるなんて考えられない。

 強いて言うなら他にレイしか居ないだろう。


 彼女が渋々受け入れてくれ、これでひとまず安心だ。


 話が終わると彼女は執務室を出て行き、それから報告に来たレイが入って来た。

 彼女が執務室から離れたことを確認してから、レイに調査報告を受ける。


「あいつについて調べられたか?」

「はい。シュリヒト子爵は現在お相手は居らず、幼馴染のファイン嬢に想いを寄せているが中々上手く行かず、恋愛に詳しいエーアリヒ様に相談に伺ったようです」

「そうか」


 レイの話を聞いて、完全に自分の思い違いだったことを知った。

 確かにあれほどカップルを眺めるのが好きで、婚約も結婚もしたくないと言っていたみたいだし、何よりデートした時に、カップルしか入れない所に自分は入れないと悔やんでいたではないか。


 シュリヒトもそういう関係だったなら、一度でも入ったことがあってもおかしくはない。

 それでも入ったことがないのなら、これまでそういった関係の人は居なかったということだ。


 彼女が惚れた男は居ないとわかり、心底安心した。


(全部俺の勘違い…)


 彼女はカップルを見るため何でもするようだ。

 想い人が居るシュリヒトと仲良くしているのは、これからカップルになる二人を近くで拝むためなのだろう。


「何やら気分が良さそうですね」

「ああ、今は最高に気分がいいな」


(彼女の見守り隊とやらについて行く時に、何かお詫びを考えておかないとな)


 カイトはその日が来るのを楽しみに待っていた。

 

読んで頂きありがとうございました!


次回は火曜7時となります。

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