表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロマンス小説が大好きな令嬢は、自分の恋愛に興味ありません!  作者: 希空 蒼


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/129

外伝1話 エアとの出会い

 この日は街で不審な男がいるとの情報が入り、その男が貴族の者かもしれないと、カイト自身が変装して街に出向くことになった。


 一緒に街に潜んでいるのは、王宮騎士団長でありカイトの補佐であるレイナートだ。

 昔からの友人でお互いにカイト、レイと呼び合っている仲だった。


「調査によると今日この道を通ると思われます」

「外で待っていれば気づかれるかもしれない。建物の中に入って身を隠すぞ」

「はい」


 二人は道のすぐ横のカフェの中へと入った。

 ここのカフェは幸いにも女性ばかりじゃなく男性もいる店で、中にいても変に思われなさそうだ。


 とはいえ何も頼まずに佇むのは怪しまれると思い、適当に飲み物を頼んでただひたすら外を眺めていた。


「中々現れませんね」

「本当にここの道で合ってるんだよな?」

「はい、間違いはないです」


 数十分と時間は経っているのだが、男は姿を現さない。

 必死に道を歩いている人の顔を一人一人よく見ていたら、近くの席に座っていた令嬢たちの話が耳に入って来た。


『王太子殿下が愛する女性に向ける言葉とか視線を眺めているのとか最高に癒される気しかしない』


「すごい話が聞こえて来ましたね」

「そうだな。今は仕事に集中するぞ」

「…はい」


 レイはカイトが少し驚いたように見えたから話をふったようだった。

 けれどもカイトが気にしていないような素振りを見せたため、レイは不思議に思いながらもカイトに返事をする。


 カイトは仕事に集中するぞ、と言っておきながら本当はものすごく気になっていた。


(普通は自分に好意を向けて欲しいものじゃないのか…?)


 社交界に出れば令嬢たちはカイトに好意を向け、その親は婚約者にどうかと進めてくる。


 それでもカイトは令嬢たちに全くもって興味を示さなかった。

 仕事で忙しいのもあり、構う暇がない。

 好意を持たれていれば、余計に何かと言われて要求されるに違いないと思っていた。


 それならば自分の仕事に集中出来る、またはしてもいいと言ってくれる相手が欲しかった。

 そんな相手は見つからないと思っていたが、彼女はいい相手かもしれない。


(帰ったらどこの令嬢か調べるか…)


 そう思っていれば、外に男が視界に入りすぐに立ち上がった。

 会計はレイに任せ、カイトはカフェを飛び出て男を追いかける。


 男はカイトに気づき逃げようとするが、一瞬で追いつくことが出来て、すぐに体を押さえつけた。


「観念しろ。牢で洗いざらい吐いてもらうからな」

「くそっ!」


 ものすごい力で押さえているため、男は痛みに苦しみながら捕まったことに悔しんだ様子をしていた。


「カイト!無事に捕まえられたみたいですね」

「縛りあげて連れてくぞ」

「はい」


 レイがカイトの名前を呼んだことによって男はカイトの正体に気づき、悔しんだ様子から一気に顔が青ざめていった。


 牢に連れて行き吐かせれば、事業で失敗し家が没落寸前になったことで、窃盗から孤児を誘拐したり、数々の罪を犯していたことがわかった。

 男の家はもちろん爵位の剥奪、そして男の罪は重いため終身刑となる。


「これで一つ片付きましたね」

「そうだな。それで次の仕事だが」

「もう次…相変わらずですね」


 カイトはただ仕事が多いだけではなく、急ぎではない仕事でも時間がある限りはするという方向性でやっているため、休んでいることがほとんどない。


「カフェにいたあの令嬢を調べろ」

「え?あの杏色の髪に薄緑色の目をした令嬢ですか?」

「そうだ」

「興味ないのかと思ったけど、やっぱり気になってたんですか」

「…まぁ」


 否定することは出来なかった。

 理由はどうあれ、自分の望む婚約者の可能性があるなら調べても損はないだろう。


「彼女ならリアン公爵の娘であるエーアリヒ嬢ですよ」

「公爵家か…都合がいいな」

「婚約を申し込むつもりですか?」

「候補には入れておこう」


 公爵家なら王太子に婚約者として相応しい身分だ。

 彼女が数少ない公爵家の娘で良かったと、少し安堵する。


「ですが、彼女は婚約も結婚もしないと言っていると有名なご令嬢ですよ?カイトでも断られる可能性も…」

「それは都合がいいな。つまり俺に惚れることもないだろう」


 これは本当に望んでいた婚約者になりそうだ。

 婚約したくないと言っている理由は知らないが、何不自由ない生活の保証と、何も求めないのであれば、彼女だって断らないだろう。


「え、カイトまさか…」

「彼女に婚約を申し入れる」

「本気ですか…?」

「本気だ」

「…わかりました。ではすぐに手配します」


 レイは急いで執務室を出て行った。

 これで明後日くらいには手紙が届くことだろう。


(いい相手が見つかったな。エーアリヒ公爵令嬢…、一体どんな令嬢なのか)


「令嬢のことが気になる日が来るとはな」


 そう呟いてから、カイトは再び仕事のために書類と向き合い始めた。


 


 



読んで頂きありがとうございました!


第25話カイトの本心の冒頭シーンの更に詳しい話となります。

新しい人物、レイは明るく優しい青年です^^


次回は木曜7時となります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ