第5話 初デート?!
自分の部屋に戻って来てからも、私はずっと勝負のことについて考えていた。
私が勝つには王太子殿下に惚れてもらわないといけないなら…。
どんな作戦がいいかなー?
誰かの恋愛にはたくさん携わってきたから恋愛には詳しいけど、いざ自分が行動を起こすとなるとどうするべきか…。
(…って、考えても無理ー!!)
目立ちたくない、惚れてほしくない思いで、自分磨きすらしたことないのに!
恋する令嬢たちは皆、可愛くなる努力をしていたというのに…。
でも王太子殿下が婚約を申し込んできたんだし、今は私が有利なのでは?だって婚約しても良いって思える相手ってことでしょ?
勝機はあるかも!
だからといって何もしない訳にはいかないか。
そして、夜会が終わってから数日が経っていた。
それなのに王太子殿下からは何もない。
(自分から持ちかけといてまた放置ー?!)
惚れさせてやるとか言いながら、そんな様子ありませんけど?!
部屋でお茶をしながら不満をぶつぶつ独り呟いていると、ヨハナが焦った様子で部屋に入って来た。
「どうしたの?」
「それが…今から王太子殿下と出かける予定が入りまして」
「…っ!ゴホッゴホッ…、えぇ?」
危うく吹き出してしまいそうでむせてしまった。
「大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫…。それより今から行くの?」
「はい。今からです」
「そっかぁ…」
気は乗らないけど仕方ない。勝負を受けたのだから覚悟はしてた。
でもせめて事前に…。
準備を終わらせ、急いで王太子殿下の元へ向かった。
「お待たせしてごめんなさい」
「いや、急で悪い」
「なかなか暇がなさそうですもんね」
だからといって放置はどうかと思うが…。
というか、服装がいつもと違う?騎士のような恰好をしているけど…。
王太子殿下の服装を疑問に思ってまじまじと見つめていたら、視線に気がついたのか服装の話をし始める。
「気づかれる訳にはいかないからな。今日はお前の護衛に扮してこの恰好をしている」
「そう…なんですね」
「俺のことはイアンと呼べ。敬語も控えろ」
「え?!」
確かに王太子殿下とも、名前を呼ぶ訳にもいかないけど…。
しかも周りを見ても誰も居ないし、今日はデートなのね?!
「分かりました」
「敬語になっている」
「今は誰も居ないんですから良いじゃないですか!」
(即効敬語を指摘してくるとか細かっ!)
それから馬車に乗って、街の方へ移動する。
「今日はどこに?」
「デートにはどこが良いかはお前の方が詳しいだろ」
「そうですね」
つまり好きな場所に行っていいんですね?!
気分が乗ってきたぞー!
馬車から降りて、私はすぐ王太子殿下の袖を引っ張った。
「早速行きますよ!王太子殿…イアン!」
「…っおい!」
止めようとする王太子殿下を無視して連れ回す。
今日は護衛のようですし、このくらいの無礼は大丈夫でしょう。
さて、最初の場所に向かう前に…。
「イアンの好きな食べ物は?」
「別に何でも食べる」
「好きなのを聞いてるんです!」
「ない」
「……」
なんなんですか!?人が聞いてるのに、会話は全然盛り上がらないし!!
「こう…よく食べるものとか、ないですか?」
「胃を満たすものとしか思っていない」
「料理長がイアンのことを想って、栄養バランスとか考えていつも作ってくれていると思います。ですから、ちゃんと味わって食べないと駄目です!」
「…分かった」
前に王太子殿下の食事を見た時に、疲労回復に良い食材が入ってて栄養もたくさん採れる献立だった。
主人想いの良い人なんだろうなぁ。
街のお店で買ったものを持って、ある場所に向かう。
「ここで食べます!私のおすすめラブラブスポットです!!」
「ここが?」
「はい!」
噴水のあるこの場所は周りにベンチがあって、そこにはカップルがよく休んでいる。
「カップルを眺めながら食事ができる最高の場所です!!」
「やっぱりか…」
「ん?何か言いました?」
「…いや」
「じゃあ食べますよ」
王太子殿下が溜め息をついて頭を片手で抱えているが、そんなことは気にせずさっき買ったサンドを取り出し、二人で食べる。
(あぁ…カップルがイチャついてる…!眼福!最高!)
何という幸せ…。
「ハッ!イアン!さっきあそこのカップルがキスしましたよ!!今日は良いものを見れました!」
「そ、そうか」
興奮して元気過ぎる私に、王太子殿下は動揺を隠せない様子。
「ごめんなさい。はしゃぎすぎました…」
「気にするな」
今日は一人じゃないから気をつけないと。ノアは慣れてるから私がはしゃいでても無視だけど…。
さすがにびっくりしますよね…。
「美味しかったー!食べ終わりましたし次の場所へ行きましょう!」
「それはまさか…」
王太子殿下は嫌な予感がするという顔をしていたが、そんなのも気にしない。
読んで頂きありがとうございました!
次回は木曜7時となります。