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ロマンス小説が大好きな令嬢は、自分の恋愛に興味ありません!  作者: 希空 蒼


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第31話 王太子殿下は心配性

 王太子殿下にグロース公爵と話したことを全て伝えた。


 グロース公爵は父親の願望のために厳しい教育を受け、良家との婚約を結ぶのに私が最適な人物であること。

 また、私と王太子殿下の婚約を破棄させられる術を持っていることも。


 話を来てから考え込んでしまった王太子殿下が、何かを思いついた表情を浮かべるものの、口に出すのを躊躇っていた。


「…?どうかしたんですか?」

「いや、作戦が一つ思い浮かんだが、これは危険だから言うのを止めただけだ」

「どんな作戦なんですか?」

「実行しないのだから言う必要はないだろう」

「気になるじゃないですか!」

「聞いたらお前はこの作戦をやると言い出しそうだからな」

「何ですかそれ!余計に気になる…!」


 どうやったら聞き出せるだろうか。


 最近、王太子殿下にお願いすることが多くて、またお願いするのは気が引けるが、私がやると言い出しそうな作戦と言われたらどうしても聞きたい。


 けれど、王太子殿下のお願いを聞くもそろそろ使えないだろう。 

 というか初めから使いたくなかったんだけど。


 でも、なんだかんだ言って教えてくれそうな気がしなくもない。


(そうだ!王太子殿下に少し意地悪しよう)


 ここで私はいいことを思いついた。

 いつも意地悪されてばかりは嫌だし、たまにはやり返させてもらわないと。


「教えてくれないんだったら、このままグロース公爵に婚約破棄をお願いして来ます」

「は?」


 呆然と立ち尽くし固まった王太子殿下をよそに、横をするりと抜けて扉から出ようとした。


 扉の取っ手に手を掛けたところで阻止される。


「待て!分かった、分かったから…」


 振り向くと王太子殿下は物凄く焦った表情をしていた。

 その表情が見られてとても満足だ。


(焦ってる…!やっとやり返せた!)


「冗談ですよ!行くわけないじゃないですか~、グロース公爵ところなんて嫌ですよ。いつもの仕返しです」

「それがな…」

「ん?なんですか?」

「そもそも作戦がそういうことなんだ」

「ええ!?」


(つまりそれは私がグロース公爵のところに行くのが作戦ということ?!)


 でもそれで私がこの作戦をやりたいと言うと思ったのは一体なぜか。

 不思議に思って思考を中断し、王太子殿下の次の言葉を待つ。


「婚約破棄出来る絶対的な自信があるならば、それを利用すればいい。俺に何かをしてくることは確実だ。実行したところを証拠に掴まえればいい」

「なるほど…。そう聞くといい作戦に思えますけど、それのなにが駄目なんですか?」

「お前の身が危ないだろ。俺が狙われるならお前を傍に置いておけない。ということは、お前がグロース公爵に何かされた時に俺は助け行くことが出来ない」

「あ…」


 私はそれを聞いて胸が痛んだ。


(いい作戦だけど、私のためにこの作戦をしないつもりなんだ…)


 自分が思っていたよりも、王太子殿下は心配して私を大事にしてくれている。

 私が危険に曝されないように。


 今回の恋愛相談を許可したのは隣の部屋に王太子殿下は居て、何かあってもすぐに助けに来られるからだ。

 私も近くに皆が居るから落ち着いて、安心してグロース公爵と話せていたのに、この作戦では私は一人になってしまう。


(きっと、グロース公爵は私と結婚することが目的だから、私に手出しはして来ない)


 考えが浮かんだところで気づいてしまった。


 この考えこそが、王太子殿下の言った私がやりたいと言う理由になると。


 自分の身は守られるから、作戦を実行することになっても問題ない。

 ただ、その作戦の間、私は事が終わるのを不安を抱えながら待つだけ。


「…私が傷つけられることはないから大丈夫だと、そう言うと思ったんですね」

「そうだ。この話も終わりだ。新しく作戦を考える」


 聞きたかったことが全部聞けたのに、胸にもやもやが残る。


 この作戦で一番危ない目に遭うのは王太子殿下。


(それなのに私の安全を優先するなんて…)


 私の安全ばかり気にしていては、作戦もあまり浮かばないだろうに。

 多少の犠牲も必要だと、私は思う。


 でも、王太子殿下はその犠牲が私であって欲しくないのだ。


(だからって王太子殿下が犠牲になるのは私も嫌だけど)

 

 ということは、一番の解決法はどちらも犠牲にならない作戦。

 これなら私も納得行くし、王太子殿下だって納得出来るはず。


「いい作戦が思いつきましたよ!私が絶対安全な作戦が!」

「どんな作戦を考えたんだ?」

「婚約破棄のための作戦はグロース公爵に実行してもらうとして、王太子殿下はイアンとして私の傍に居ればいいんです」


 この作戦なら王太子殿下は私の傍にずっと居ることが出来る。

 王太子殿下が懸念していた、すぐに助けに行けるかどうかの基準に達しているだろう。


 王太子殿下だって言っていた、確実に自分が狙われると。

 そう、私と婚約している『王太子殿下』が。


 ならば私の護衛騎士である『イアン』だったら、狙われることはない。


 


 

読んで頂きありがとうございました!


次回は火曜7時となります。

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