第23話 またもや墓穴を掘ってしまう
「ええ!?王太子殿下を惚れさせたら婚約破棄出来る?!なんでそんなことになったのよ!!」
「まあ…」
ノアにこれまでのことを全て包み隠さず話した。
話していない期間が空きすぎて、情報量の多さにパニックを起こしてしまっているようだ。
「そういう提案が王太子殿下からあったの」
「そう…。で、どうなのよ?」
「……全然」
「嘘でしょ?!あれだけ恋愛に詳しいのに?」
言われたことが図星で何も言い返す言葉がない。
でも仕方ないじゃないか。
生きてきて惚れさせる経験なんて滅多に得られないだろう。
「だって…恋愛小説でも男性側がアプローチして告白の展開が多いじゃん…」
「そうだけど…。あんなにたくさん読んでたら、女の子が惚れさせようと頑張っている物語だってあるでしょうに」
「なかなかないよ。それに王宮に来てから本屋に行ける頻度は物凄く減ってるし…」
ノアは相談に乗ってくれているが、実のところノアは相手からの熱烈なアプローチに負けて婚約に至っている。
つまり、参考にすることが出来ない。
(私の周りには男性側から告白する人しか居ないわけ?)
参考に出来る人が居ないなら、本当に自力でどうにかするしかないだろうか。
「もう、頑張ってとしか言えないわ。私は恋愛に詳しくないもの」
「うん。聞いてくれただけでも助かる」
王太子殿下をどうするかは、これから長い間部屋で過ごす間に考えるとして、私はノアに聞いておきたいことが。
「私の話し相手に来てくれるのは嬉しいんだけど、移動の間とかグロース公爵からノアも狙われたりしないか心配だよ」
「そのことなら大丈夫。王太子殿下が護衛をつけてくれてるから」
「…そうなんだ。そこまで手が回ってるんだね…」
それでも心配なのは変わらないが、本当にどうしてそこまでしといて何も言わないんだ。
(絶対に今度問い詰めるんだから…!)
ノアが来てからだいぶ時間が経過した。
こんなに長く人と話すのは久しぶりなことだ。
それに、おかげで暇つぶしになって本当によかった。
「それじゃあ気をつけてね」
「大丈夫だから。また来るね」
「うん、またね」
私は門からノアを見送るついでに護衛を確認しに行った。
ノアとノアの侍従、そして王太子殿下がつけた護衛が二人。
護衛は王宮でも見かけたことのある人で安心した。
王太子殿下が用意しているのだから、始めから疑う必要もないんだけど。
「さて、玄関で待ち構えますか!」
もうすぐ王太子殿下が帰って来ると聞いて、迎えるためではなく問い詰めるために待つことにした。
「お嬢様、そこまでしなくてもいいのではないですか?」
「いいの!やっぱりもっと大胆に行動しないとね」
「それは王太子殿下だけにして下さいね…」
ヨハナもさすがに私を止めることはしないらしい。
今回のことにヨハナも思うところがあったのだろうか。
そしていよいよ王太子殿下が帰って来た。
「お帰りなさい、王太子殿下」
最近は一切向けることのなかった愛想笑いを向けた。
「ただいまだが、明らかに何か言いたげだな」
「もちろん、何を聞かれるかわかってるんですよね?」
王太子殿下は目線を逸らし、何か気がかりがありそうだ。
「…多少は。とりあえずその話は場所を変えよう」
「そのつもりです」
王太子殿下が着替えるのを待っている間に執務室で座って待ち、戻って来たところで早々に話を切り出す。
「どうしてノアに話し相手を頼んだことを私に言わなかったんですか?」
「今朝移動中に思いついて家に訪ねたんだ。驚かせてしまったとは思っている」
それを聞いて私は頭を抱えて悩まずにいられなかった。
(そう言われると怒るわけにはいかないじゃん…)
その可能性は考えていなかった。
怒れる部分が一つもない。
というか、別に悪いこともしていない。
ノアと久しぶりに話せて嬉しかったし、その機会を与えてくれたのだから。
問い詰めてやろうと意気込んでいたのに、そんな気持ちはもうどこかへいってしまった。
「ならいいです…」
「他に俺に言うことはあるか?」
「え?勝手に怒ってごめんなさい…?」
私の言葉を聞いて、王太子殿下は何やら楽し気な表情をしている。
が、その表情は嫌な予感しかしないんだ。
(これは意地悪する時の顔だ…!)
「じゃ、じゃあ先に食堂に…」
「待て、俺の話が終わっていないぞ?」
全身から汗がにじみ出て来るのを感じた。
「俺は他に言うことはないか聞いただけなのに、自ら謝罪するとは悪いことをしたと思ったんだろう?なら、願いを一つくらい聞いてくれてもいいだろう?」
「どんな願いをするつもりですか…!」
あの王太子殿下の言葉は罠だった。
悪いことをしたとは思っているけれど、確実に私に謝らせる言い回しだったと思う。
「毎日の送り迎えとか?」
「それは二つです!せめてどちらかにして下さい!出来ればお迎えで…」
「送迎は一つの単語だろう?」
「うっ…たまには見送りしてもいいかもなんて思ってた私を殴りたい…」
「いいと思ってたんだな」
かなりの小声で呟いたつもりなのだが、王太子殿下の耳にはしっかりと届いてしまったようだ。
耳が良すぎではないだろうか。
「わかりましたよ…」
「そんなに気を落とすな。俺を惚れさせる機会が増えたと思えばいい」
「自分が優勢だからってそんなに余裕…!?」
機会が増えるのは嬉しいんだけど、そこまで余裕を見せられると本当に悔しい。
王太子殿下から見ても、私が劣勢だと思われているということだろう、それほどまでに反応しているということなのか。
「俺の方が優勢だと思っていたのか?俺は同じくらいだと思っていたが、そうか」
「あっ!」
完全に墓穴を掘ってしまった。
前にもこんなことがあったような。
(言うんじゃなかった…!)
それよりも重要な言葉を聞いた気が。
王太子殿下もニヤニヤした表情でこちらを見ている。
「…え?同じくらいだと思ってた?それって…」
「さて食堂に行くか」
「ちょっ!ちょっと待って下さい!いつからそう思ってたんですか!?王太子殿下~??」
私は置いて行こうとする王太子殿下の背中を問い掛けながら追って行った。
読んで頂きありがとうございました!
今日はバレンタインですね^^
エアは超ご機嫌で街に癒しを堪能しに行くことでしょう。
次回は木曜7時となります。




