第13話 勝利に一歩近づく
「じゃあこれで恋愛相談は終わりですね」
「あ!そうなんだけど、実は私の相談に乗って欲しくて…」
「エア様のですか…?」
「そうそう!男性側の恋愛観について聞きたいの」
「なるほど…僕が力になれるかわかりませんが」出来る限りお答えします」
「ありがとう!」
今回は忘れることなく聞くことが出来、少し安堵している。
この機会を逃していたらもう聞くことが出来なかっただろう。
長くなることを考え、立ち話はなんだからと座れるところへ移動した。
「まず、好きの気持ちに気づくまでどんな過程があるの?」
「そうですね…。昔は気の許せる友達という感じだったんですが、歳を重ねていくにつれて大人っぽくなっていく姿で女性として意識し出してから、かわいいなとか…好きだなって思うようになりました」
「ふむふむ。やっぱりそういう感じだよね」
シュリヒトは真剣に答えてくれていて、男性側の意見は本当に貴重だからありがたい。
「じゃあ、どんなことをしてもらったら嬉しい?」
「僕は傍に居てくれるだけでも嬉しいですけど、特に隣で楽しそうにしてくれてたり、笑顔で過ごしてくれてると僕も嬉しくなります」
「楽しそう…笑顔…」
私は過去の行動を振り返ってみると、楽しそうにしていたり笑顔の時はあったと思う。
けれど、王太子殿下と一緒に居るからではなく、カップルのイチャイチャを見れてるのが楽しかっただけで、シュリヒトの言っていることとは違うような。
「確かにそれは私に欠けてるかも…」
「僕は二人が一緒に居るところを見たことがないのでわからないですけど、楽しくないんですか?」
「う~ん、楽しい…とは違うかな…?」
自分の行きたいところに付き添ってくれて嬉しいという気持ちはあったものの、楽しいかと聞かれたら王太子殿下と一緒だったから楽しいというわけではない。
その心情が伝わっていたとしたら、王太子殿下も私と居ても楽しくなかったかもしない。
(相手を楽しませるのがいいのかな…)
「ありがとう。私の相談にも乗ってくれて」
「いえ、こちらこそありがとうございました」
「それじゃあ頑張って!!」
「はい!」
自分の中でもこれからの方向が決まったということで、シュリヒトとはここでお別れ。
次に会う時には、二人は結ばれて婚約していることだろう。
「私たちも中に入りますかー」
「はい」
私は大きく背伸びをして、ヨハナと一緒に自分の部屋へと戻った。
その日の夜、王太子殿下が今日は早く帰って来ていたという話を耳に。
(あ、これは何の説明もないままシュリヒトと話しているのを見られた…?)
そんな心配を胸に王太子殿下の待つ食堂へ。
「お待たせしました」
「…今日は楽しそうだったな」
「え?はい…楽しかったです」
(なんか不機嫌?)
そう答えると、王太子殿下の機嫌は更に悪くなった気がする。
私もなんだか冷や汗が。
「シュリヒトとは恋愛の話をしていて…」
「仲良さげに呼び合っていたな」
「まぁ、友達ですから?」
「俺のことはカイトと呼ばないのか?」
「婚約破棄することになるのにそう呼ぶ必要があります?」
いまいち私はなんでそんなことを聞いてくるのかもわかっていない。
(別に愛称で呼び合ったところで私たちの間に恋が芽生えるとは思わないし…)
「他の男に惚れても負けだからな」
「それはわかってますけど…」
「ならいい」
そう言って王太子殿下は食堂を出て行った。
(え?どういうこと?)
「ヨハナ。私、まずいこと言った?」
「まずいどころじゃありません」
「ええ?!」
「恋愛に詳しくない私でもわかるほど、明らかにヤキモチを妬かれていましたよ」
(ヤキモチ?!王太子殿下が?!)
私の中では、ヤキモチは少しでも相手に気がないとその気持ちを抱かないと思うのだが。
少しは王太子殿下が自分のことを好いているということなのだろうか。
「私まだ惚れられるような行動した覚えないんだけど…」
「お嬢様に婚約を申し込んできた以上、ゼロからのスタートではなかったのかもしれませんね」
「最初から少しは気になってたってこと?」
「そうです」
(じゃあ私は一歩勝利に近づいたのでは?)
浮かれそうになる気持ちを抑えようと思いつつも、浮かれずにはいられなかった。
読んで頂きありがとうございました!
次回は火曜7時となります。




