ヤマカシ
ショウリの言葉を合図にストップウォッチの数字が駆け上がり、それに合わせる様に僕のテンションも上がり気味に切り替わる。
だって戦場だ。
楽しまない方がどうかしている。
「睦月、如月、卯月」
モノズの司令塔と、狙撃分隊担当を呼び出す。何だ? 何だ? 何用か? と二機の小型と、一機の中型が転がって来た。睦月と卯月、小型二機を両手で掬い上げる様にして持ち上げ、その僕の行動に警戒する様に一瞬止まった中型の如月を足の裏で止めて、ころりと転がして引き寄せ、足の甲に乗せる。
「僕、睦月、A1。水無月、文月、葉月、A2。皐月、長月、アル、A3。そして卯月、如月をS1とする。各リーダーは僕、水無月、皐月、卯月が担当を」
「A分隊はポイントB4へ急行」
「S1はここの屋上からそれを援護」
「以上だ。何か質問は?」
言い切れば、何機かのモノズがビルを見上げて、その後僕が小脇に抱えた睦月と卯月を見て、次に足元に置かれた如月を見て、気まずそうに視線を逸らした。
何かを色々と察したのだろう。
因みに答えは、同じことを察して、楽し気に耳をピンとさせているアルの顔から判断して欲しい。
コーギーはボール遊びが大好きなのだ。
そんな訳で――
「質問が無いなら僕からもこの言葉を送ろう。――諸君、状況開始だ」
右手に持った卯月をぶん投げる。
そのまま次。足元に転がっている如月を掬い上げるよう様にして蹴り上げる。
そしてその二つを追う様に、僕も跳ねる。
一足。一階の窓枠に足を掛け、数週間前まで稼働していたであろう受付スペースを見つつ、跳ぶ。
二足。飛んだ勢いを叩きつける。その衝撃を溜めに変換すべく膝を溜めて二階の窓枠に。見えた景色はこちらも稼働時から余り変わって居なさそうなパーテーションで区切られた打ち合わせスペース。
三足。と言うか手を使って更に上へ。空いた右手で窓枠を掴み、トゥースの膂力で以って更に加速。三階、四階。すっかり荷物が運び出され、デスクだけが残された執務室を飛び越えて――
四足。五階。既に最高点に到達し、落下に切り替わっていた小型の卯月へ頭突きを一つ。アラガネの頭部装甲で以って金属球にヘディングを叩き込み、再び上へと飛ばす。
六足。これより上へ飛ぶのは難しいと判断。窓べりを掴み、勢いを殺し、或いは逃がして、先の卯月と同じ様に落下に切り替わっていた中型の如月に足刀を叩き込み、軌道を変更。オフィスの窓をぶち破り、中のデスクをなぎ倒して道を造る。
右手で窓べりにぶら下がったまま、左手の睦月を室内に放り込んでからフライをキャッチする様に落ちて来た卯月を掴んで同じ様に転がす。
そうしてから僕自身を入れて見れば三つの緑の瞳が抗議する様にこちらを見て来た。
「……」
少しバツが悪いので目を逸らす。
折角上がった評価が下がった様な気すらする。だが仕方がない。部下に嫌われるのを恐れて無難な命令しか出さない上司は上に立ってはいけない。それは優しくて無能な上官だ。人徳がある分、下手をすれば単なる無能よりも有害になる可能性すらある。
だから僕は動いた。
シリコン加工された小型ボディ。情報処理に特化したアロウン社製モノズボディ、エクネを、睦月を拾い上げる。
「S1、僕等は良い。他のA分隊のフォローにちからを割け」
そこまで言ってから一瞬、全回線通信を閉じる。
「ただし本部側のフォローを十分にこなした上で、だ」
“疑念:戦力的には我らの方が不足している件”
“追従:然り。仕事をこなす為にはA分隊のフォローを主にするべきでは?”
如月と卯月からのメッセージが頭部装甲のディスプレイに踊る。それに「いや」と首を振って僕。
「僕等にとっての最悪は本隊に消耗されて、その本隊に逃げられることだ。その場合、最悪だとアイリが置き去りになる」
ショウリが頭である以上、その手は取られない。
だが万が一、頭が変わり、ソレがビビりだった場合、物資を置き去りに直ぐに撤退する可能性がある。それが最悪だ。だから本隊の防御を固めておいた方が良い。
「そも、市街地戦だ。言葉は悪くなるが、君達程度の腕だと厳しいだろう?」
狙撃分隊とは言え、卯月と如月はまだそこまで腕は良くない。嫌がらせには使えても、止めには使えない。そう言うレベルだ。
ならば高速で移動しているA分隊のフォローにはそこまでの期待は出来ない。
二機にもその自覚はあるのか、数秒見合ってピピピ、と目を点滅させあった後、屋上へ向かい転がり出してくれた。
ただ、僕に文句があることには変わりが無いようで、わざとらしく脛にぶつかられた。
「……」
ムカデ装着時であっても僕の足は自前のモノだ。
鈍いが痛覚は残っているので地味に嫌だったことは記しておこうと思う。
先程の僕の扱いがお気に召さなかったのだろう。
脛に叩き込まれた鈍くて柔らかい痛みに何とも言えない気分になりながらも、屋上に向かう如月と卯月を見送り、振り返った僕を出迎えたのはサッカーボール大の大きさからバスケットボール大へと変わった睦月だった。
個々の特性により得意・不得意は有れど例外なく工兵であるモノズお得意の工作。睦月は自分の身体の周りを弾性のある建材で包み込んでいた。
“抗議:精密機器やぞおらぁん!”
そしてそんなメッセージが視界に踊る始末である。だが――
「ありがとう。丁度速度を上げたかったんだ」
僕のそんな言葉に、何か嫌なモノを感じてくれたのか、ぴぃ、と引き気味に睦月。構わず僕は彼を掬いあげる。想像通りだ。
「これなら雑に扱える」
“罵倒:この人でなし!”
「うん? 何だ? 知らなかったのか? トゥースだよ、僕は」
言って、床を蹴る。左腕の生体銃から弾丸を吐き出し、向かう先のガラスに罅を入れて――蹴破った。
ごうごうと風が鳴くのを聞きながら、道路を飛び越え、向かい側のビルの屋上に転がり落ちる。叩きつけた、睦月の反動を利用する様に止まることなく駆けながら、次へ。
出迎えたのはビルとビルの隙間だ。幅はそれなりに広い。
ぽーん、と高く、遠くへ睦月を放り投げ、僕はその隙間に飛び込む。壁を蹴る。壁を蹴る。蹴る。蹴る、蹴る、蹴る。ジグザグにビルの合間を跳びながら、次へ。
三角屋根のアパート。その雨樋を踏み砕き、落ちそうになりながら頂点目指して走って、跳躍。落ちて来た睦月をキャッチし、着地と同時に落下に切り替わった屋根を滑り、勢いそのままに宙返り一つ。くるんと回って、次の屋根――には届かなかったので背中で窓ガラスを突き破って無人のアパートの一室へ。部屋の中心に残されたテーブルを蹴り倒して勢いを殺してとまる。一人暮らし向けの1K。折角片付いていたそこを蹂躙しながら部屋と台所を繋ぐドアを蹴破り、流石に金属製の玄関のドアは蹴破れず、鍵を開けて外に。
出迎えた廊下の手摺りに足を掛け、跳ぶ。高さが足りない。飛距離が足りない。仕方がないので、ガレージの屋根で高さを減らしてから地面に。
「――ふっ!」
と鋭い呼吸。気合いを入れて無人の大通りを全力で横切る。
睦月を力いっぱいたたきつける。
跳ねるソレを追う様に壁に向かって跳び、窓枠に手を掛け、三階建ての四角い建物を昇る。屋上で睦月を受け取り、何となくドリブルしながら跳躍。
意識するリズムはワン、ツー、スリー。屋根を蹴って、屋根を蹴って、屋根へと。そうしてから再び突撃無人のお部屋訪問。マンションの一室を通り抜け、階段が回廊の様になっているその中枢へ。
ぽい、と睦月を投げ捨て、後を追う様に僕も跳ぶ。
そうして都合三階分の高さの衝撃を異形の両足に食わせつつ、跳ねようとする睦月を地面に押さえつけてみれば――
「タッチダウンだ」
B4へと一番乗りだ。
懸賞でたこ焼き機を当てたからことしのクリスマス男子シングルはたこパをやるよ!
心無い友人「一人でやるのはな、パとは言わんのだ」
うるせぇ!
クリスマス平日にやるのが悪いんだ!
祝日にしろ! 休ませろ!
取り敢えず幼少の頃の夢、「たこ焼きを好きなだけ食べる」を実現しようと思います。
……所で余りに不器用なため、大学時代のタコパで三個引っ繰り返すって言うかぐちゃぐちゃにした時点で焼き手を降板させられたことを思い出してしまったのですが、無事に焼けるんですかね?
まぁ、そんな訳でメリクリです。




