第2話「機関銃と火炎放射器と」
〔ダン!ダン!ダン!ダン!ダン!…ガッシャ!〕
「数が多すぎる…きりがないぞ」
トラックから降りた俺は、砦の城壁上に登り、そこからステアースカウトで狙撃をしている。すでにマガジンポーチに入っていたマガジンを使い切り、ストレージから追加で取り出したマガジンをライフルの横に置き、それを使っている状態だ。
現時点で300程度のゴブリンがダンジョン出口から出てきている状態だ。
「シロウ!もっと早く撃つことできないの!?」
「10秒間、持ちこたえられるか!?」
「いけるわ!」
俺はステアースカウトを横に置き、MG42機関銃を購入、実体化した。同時に実体化させたアモケースからベルトを取り出し、装填する。
〔タタタタタタタ!タタタタタ!〕
元が早すぎて金切り声のように聞こえる射撃音は、カスタマイズにより弾薬節約のためにファイヤレートを大幅に下げていた。しかし、個々の射撃音が聞き取れるようになったものの、大して変わりなかった。しかし、明らかに弾持ちが良くなっているし、ゴブリンの数が劇的に減っている。
3つ目のベルトを打ち切った時ほとんど掃討が完了し、守備兵たちがダンジョン出口周辺を固めだしていた。これ以上の機関銃掃射は誤射の可能性が高い。そう考えた俺は3回目のリロードを中止し、ストレージにしまった。
代わりに取り出したのはドイツ国防軍が大々的に配備運用し、初期の電撃戦を支えた名銃MP40だ。当時、短機関銃は機関銃の劣化版という印象が強く大々的な配備はされていなかった。
当時の有名なサブマシと言えばギャングが大量に運用していたシカゴタイプライターことトンプソン機関銃ぐらいだ。あとはダンケルクの後に槍でも何でもいいから武器を作れの大号令で本気で鉄パイプに余剰銃剣を溶接したパイプを量産したUKが作ったステンガン、結局弾薬を補給できるはずがなく一般部隊に対する大規模配備をあきらめた日本の一〇〇式機関短銃、トンプソンとよく似た外見のソ連製PPSh-41や冬戦争や継続戦争で大活躍したスオミKP/-31などより大型の機関銃が大規模配備できないような中小国や逆に陸軍規模がでかすぎてとても配備しきれないような国しか配備していなかった。
またこれらのサブマシはやれドラムマガジンだ。やれ木製ストックだ。と量産性の乏しいものであったがMP40は量産性に優れ、軽量であることが特徴の一つであり、まるで分隊支援火器のような運用がされ、あまり目立たないが初期の電撃戦を支えた名銃なのだ。
そんな名銃と30連マガジン7個、3連マグポーチ2個を新たに購入し、ダンジョン出口の前に行く。
…………
〔バババン!バババン!〕
「数が多すぎる!」
同じことを何度も言っている気がするが本当に多すぎる。まるでゾンビ映画のようだ。
「爆裂魔法を使う!身を守れ!」
一言断ってから手榴弾をダンジョン内部に投げ込み影に隠れる。
〔ズドォン!〕
ひとまず近くのゴブリンが片付いた。
しかし、まだまだ奥から続々と新手がやってくる。その数、1000以上。とても銃弾や手榴弾でどうにかできる数とは思えない。
ペリリューや硫黄島で日本軍と戦った米軍はよく頑張ったと思う。ほんとそう思う。
…
……
………
「米軍……硫黄島……その手があったか!」
すぐさまスキルを発動させあるものがないか探す。
あった!
すぐに購入し、実体化させる。背中に重量を感じ、ホースを握りバルブを開ける。
「グギャーーア!!」
「何これ……こんなに強力な魔法は見たことがないわ……」
俺が購入したのは太平洋戦争で米軍が日本軍の坑道陣地攻略の回答とした『馬乗り攻撃』で使用されたM2火炎放射器である。
こいつは燃焼中の燃料を約35メートル投射可能な兵器で直撃しなくても坑道のような閉所では急速に酸素を消費し尽くし、酸欠を誘発する。という非人道的な兵器だ。
現代ではあまりの非人道的殺傷方法から世論の批判が強く、危険物の焼却処分用とされているが、そもそも人ではないゴブリンに使ったところでなんの問題もない。
可燃物入りのタンクを背負っている関係上、被弾に弱く、射程も短いことから主力装備とはならなかったが、こういった閉所にひしめく敵を掃討する。という場面ではこれほど有効な兵器は他にないだろう。
問題は、その特徴的な見た目から真っ先に狙われ、連続使用時間も短く、運用コストも高い。と主力どころか補助兵器にすらけわしいぐらいリスクが高いことだろう。
しかし、汎用性は皆無だが、『ハマれば無双できる』装備というのは時に、汎用兵器以上の能力を発揮するものだ。そして、そういったものはだいたいブームが到来し、後世のネットユーザーたちから馬鹿にされるようなリソースの無駄遣いをするものだ。
………
この日、初めて酸欠という攻撃方法により数千のゴブリンが死亡した。これはスタンピードという災害への対処法だけでなく、戦争における陣地戦戦術にも大きな影響を及ぼした。
これは酸素という物質が確かに存在するということをわかりやすく証明した出来事であり、後の魔導科学へ発展する第一歩となったのである。
………
その後、火がおさまるのを待ってからダンジョンに入り、残敵の掃討を行い戦闘終了となった。
…………………
○装備紹介コーナー
・M2火炎放射器
第二次世界大戦中に多くが使用され、トーチカなどの閉鎖型陣地に対して多大な効果を得られたとされる。サイパン・硫黄島・沖縄と、ジャングルや洞窟陣地などにこもる大日本帝国陸軍に対して非常に有効とされ、帝国陸軍では火炎放射兵は恐怖とともに憎悪の対象とされた。
その特徴的な見た目と憎悪から最優先目標とされ火炎放射兵は損耗の激しい兵科となったためアメリカ軍は戦車の手法の代わりに火炎放射器を備えた火炎放射戦車へ更新した。
M1が携行性重視のため、発射回数が3回程度であったの対して、M2では燃料タンクを2つに増やし発射回数を10回に増やしている、
発射燃料にはガソリンとタールの混合ゲル状燃料であり、燃料タンクのほかに噴射用の圧縮空気タンクを連結させた形状である。