エピローグ
エピローグ
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統一歴1892年。ルーメリア王国の長きにわたる戦いは終わった。それは2人の兄妹によってなされた部分が多かったが、数多くの英雄と無名の戦士たちの献身と犠牲を、そして銃後の援護を忘れてはならない。だが、物語ではなくまぎれもない現実である以上、それは一つの区切りであってもハッピーエンドではない。歴史は続くのである。血と鉄と硝煙によって彩られた戦争の歴史が……
統一歴1899年。100年以上にわたるプロイツェン帝国とフランソワール共和国との大戦争も終結した。当初、鉄道と電信によって驚異的な速度で進められ、首都パリゥースパを攻略したことで降伏すると思われていたが、ボルトーに亡命政府を打ち立て以後100年以上にわたりだらだらと戦争を続けた。だが、その新たな百年戦争はルーメリア王国によるシャングリラ作戦の影響を受けた共和国が短期決戦を狙ったプラン1899を発動したがその失敗と犠牲によりついにボルトーで革命がおこり、フランソワール第2帝政が樹立されるとともにプロイツェン帝国に対して降伏を申し入れ、1899年10月に戦争は終結した。
西と東、欧州の2ヵ所で発生していた戦争が同時期に集結したことで、世界は新秩序の建設を迫られた。もはや意味をなしていなかった世界会議は1902年に一度解散され、国際連盟として再スタートした。これにより世界は平和になっていくと思われた。
だが、1903年の極東大陸事変や翌年1904年の秋津洲=アルビレオ極東戦争などにより、再び、長距離砲撃を軸とした海戦や敗戦の影響によって簡易築城にとどまっていたにもかかわらず、国が崩壊する寸前まで至った旅順港攻略戦、機関銃の前に最強と思われていた騎兵軍団が壊滅した奉天会戦、青島攻略戦における航空母艦による対地攻撃など、またもや研究すべき軍事的大転換に直面した各国は大規模な軍事機構の改編を行うことになった。それは各国を悪戯に刺激することとなり、危機感を覚えた、北欧の協商連合が予備役の動員を行い。これに対して、騎士王国、ルーメリア王国、プロイツェン帝国、連合王国などの周辺諸国が過剰に反応した結果、鉄血宰相による多重同盟政策や連合王国の勢力均衡政策によりほぼすべての国家が何らかの形で参戦する世界大戦が1911年に勃発した。1921年までの間に3600万人が戦死し、欧州経済の58か月分のGDPに匹敵する経済損失を生み出した世界大戦は敗戦国に多大な賠償金をかけることで終結した。
それは、巨大な憎悪を生み出した地球の様に第2次世界大戦に発展することは無かったが、代りに共産主義革命の嵐を生み出し、世界中を混乱させた。
結局のところ、人が人である限り、相互理解などできようはずがないし、幾度となく同じような過ちを繰り返すのであった。だが、致命的な事態に至る前に、戦争に終止符を打たなければならない。なぜならば、そうしなければ戦争が人類に終止符を打つであろうからだ。
それが分かっていてもどうやって実現すればいいのかわからないのが非常にたちが悪いところだろう。国際的な結びを強めることで、戦争をすればたちまち経済破綻するように仕向けたグローバルニズムは反国際グローバルテロリストを育て、宗教原理主義者に次ぐテロ理宇と供給源となった。また、統一歴1950年代においても、国際インターナショナルは壊滅していなかった。
複数の人間が居れば、必ず争いが起こるという原則はどこの世界でも同じことであるが、少なくとも二者間であれば愛をはぐくむ事が出来るのも同じであった。世界はどうであれ、激動の時代に生きた人々はいつものように面倒ごとを若者たちに押し付け、結婚し家庭を持ったり、趣味の世界に没頭したり、長年喧嘩を続けていた兄妹が仲直りしたりと自分たちだけで勝手に幸せになっていくのも共通していたようだ。
1年以上に渡り、連載してきた本作はこれにて終了です。なんとも締まらない終わり方ですが、現実においても高校や大学を卒業したからと言って急に何かが変わるわけではないのと同じです。(両親は子供が無事就職できたことを喜ぶでしょうが、子供からすれば、同級生たちと連絡を断つわけではないのであまり節目であるという実感はないでしょう)
エピローグ内で一部語られていますが、まだまだ、問題は山積みです。官需に完全に依存した経済や戦争による労働人口の払底、一部で始まっている農業の崩壊、社会資本整備がいつまで立っても進まないために滞る物流、エトセトラエトセトラ……国内問題だけでもこれだけあります。
さて、本編は終わりですが、作中で語られなかったこぼれ話や後日談などをう定期に行う予定です。また、新作を同時投稿したので興味がありましたらぜひご覧ください。