第3話「海軍大改編」
第7章第3話「海軍大改編」
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かくして、全世界の海軍に大激震を与えたルーメリア王国であるが、海軍の組織・資材・運用の各面ではいまだに周回遅れもいいところであった。例えば、弾着観測射撃。主砲と副砲のすべてを(速射砲は含まず)同時に発砲する射撃同調装置と砲撃諸元を一元的に算出する中央諸元計算室を備えていたが、本格的な射撃指揮装置の実装には至っておらず、また、ここ20年程実戦を経験していない影響か、弾着観測用の水上観測機を装備か出来ていなかった。そのことに気が付いたのは就役式の2週間前であった。そのためFi156をコピーした陸軍のOS-1短距離観測連絡機に下履きを取り付けたOSF-1水上観測機を就役式の直前に急遽都合することになるという一幕があった。
海軍の改変として、最も注目されるのは正面戦力だろう。1万8000トン級戦艦8隻、8000トン級重巡洋艦8隻、6000トン級軽巡洋艦6隻、1500トン級駆逐艦24隻、2万トン級特殊揚陸艦2隻を新造し、戦艦2隻、装甲巡洋艦9隻、防護巡洋艦1隻、装甲帯巡洋艦2隻、水雷艇駆逐艦6隻、艦隊水雷艇9隻、沿岸水雷艇22隻を退役させる。後、特設船舶を増強する。
艦船の増強整理と共に、組織の再構築を行う。軍令部隊、戦闘部隊、兵站部隊、補助機関に整理し、戦闘部隊を決戦戦力と警備戦力に2分割する。こうすることで、決戦部隊は洋上にて地上軍を気にすることなく、バルチック艦隊を撃滅できる体制を整えられるし、友軍地上戦力は沿岸総軍隷下部隊より常に適切な対地艦砲射撃の支援を受けられる。さらに、友軍砲撃支援を沿岸総軍に任せることで、艦隊総軍はバルチック艦隊の撃破だけに専念できるため、戦闘効率の向上を期待できる。
そのほか、海軍の軍政部門を陸軍に移管し、軍令部分を強化した。従前の制度では陸軍参謀本部は海空軍参謀本部よりも高位に位置し、陸海空三軍統合作戦の企画・調整・指揮を行うという立場から統帥本部としての意味が強い陸軍参謀本部と違い、海軍は洋上打撃作戦のみ(水陸両用作戦や陸軍支援任務は陸軍参謀本部の管轄だった)に責任を負っていた。それを、中央作戦本部を設置し、陸軍参謀本部から統合作戦の企画・調整・指揮を引き抜くことで、陸海空参謀本部の地位同一化を進めた。同時に海軍参謀本部内に、それまで陸軍参謀本部の管轄であった、水陸両用作戦や陸軍支援作戦などの企画・調整・指揮部門を新設した。
しかし、陸軍支援作戦は海軍だけ成功しても意味がないし、水陸両用作戦成功後の戦火拡大は陸軍の任務になる以上、中央作戦本部所管になることが半ば決定しているようなものだ。だから、これだけでは陸軍参謀本部の地位低下でしかないが、これまで陸軍参謀本部が所管していた海軍の資材・装備等などの調達からデポ配備までを海軍参謀本部補給局で所管することとなった。これにより、王国軍としてではなく、王国海軍としての自己完結性を高めることになった。これは、即応能力の強化というよりも戦力の安定化という面が強い。(従前の制度では陸軍の兵站部隊によって輸送されていたため、地上戦が激化すると数カ月間にわたり食糧以外の一切の補給がストップすることが多発していた)そのほか、ルーメリア海軍はバルト海に引きこもる内海海軍であるからあまり意味がないような気がしないでもないが、独自に兵站を行えるということは作戦の柔軟性が高まることを意味する。
艦隊総軍
第1艦隊
第1戦隊 弩級戦艦4隻
第4戦隊 重巡洋艦4隻
第1水雷戦隊 軽巡洋艦2隻+駆逐艦8隻
第2艦隊
第2戦隊 弩級戦艦4隻
第5戦隊 重巡洋艦4隻
第2水雷戦隊 軽巡洋艦2隻+駆逐艦8隻
第3艦隊
第3戦隊 前弩級戦艦4隻
第6戦隊 装甲巡洋艦8隻
第7戦隊 防護巡洋艦8隻
第8戦隊 偵察巡洋艦8隻
第4水雷戦隊 軽巡洋艦2隻+駆逐艦8隻
第1海上補給隊 特設給炭艦2隻
第2海上補給隊 特設給油艦6隻
第1強襲揚陸隊 特殊揚陸艦2隻
附属 特設水上機母艦1隻
沿岸総軍
第21戦隊 砲艦9隻
第22戦隊 通報艦9隻
第23戦隊 特設巡洋艦8隻
第1輸送隊 特設輸送艦8隻
民間予備輸送隊
水陸両用軍団
第1水陸両用連隊(艦上任務)
第1大隊
第2大隊
第3大隊
整備中隊
通信中隊
衛生中隊
補給中隊
第2水陸両用連隊(警備任務)
第1大隊
第2大隊
第3大隊
第4大隊
第3水陸両用連隊(沿岸監視)
第1大隊
第2大隊
附属 特設敷設艦2隻 特設病院船3隻