第5話「森の中の戦闘(後編)」
「避けやがった!」
音速の倍だぞ! 何故よける事が出来る!? それは重要なことではない。あとから考えることだ。すぐにセレクターをフルオートに切り替え、弾丸をばらまく。
「当たらないか……」
ACOGのレンズ中でスポーツ系FPSよろしくサイドステップやジャンプで銃撃を避けるエルフの少女を見る限り、残弾をすべて撃ち尽くすつもりで撃っても当たらないような気がしてきた。銃撃が効かないのであれば、近接戦しかない。距離はすでに100メートルを割っている。
〔プキキキッ!カカ…〕
「弾切れか!」
撃ち尽くしてしまったSCAR-Hから手を離し、腰からコンバットナイフを抜き取る。
「っな!?」
人間の限界を超えた速度で接近してきたエルフの少女は10手前で跳躍し、木の幹に飛び移る。そこから飛び降りながら叩きつけるように振り降ろされたショートソードをコンバットナイフで受け止めることに成功する。受け止めると同時にコンバットナイフが悲鳴を上げるのを認識しながらエルフを睨みつけた。
そのエルフの顔を見た瞬間、寒気がした。口はヤクを決めたかのようにつり上がった笑みを浮かべていたが、目はどこまでも冷めていた。まるで死を宣告され、それでも祖国や愛する家族のために死を容認してしまった兵士の様に達観したような目をしていた。
それを見てしまった俺は、感じてしまった悪寒から逃れるために、相対するエルフの鼻にグーパンを叩き込んだ。しっかりと着弾の瞬間に止め、捻じりこんだ容赦のない一撃をだ。通常ならば腹の中の空気をすべて吐き出し、直前に食事をしていれば胃の内容物をすべて吐き出してしまうはずだった、そう、『はず』だったのだ。
後悔した。殴るのではなく。蹴ればよかったと。ハードレザーの防具は、銃弾に対しては十分な防弾性能を有していなかったかもしれないが、殴ってダメージを届けるのには硬すぎた。しかし、まったくのノーダメージではなかったようだ。この程度のダメージしか与えられないのだったら掌底でよかったし、殴るよりも蹴った方が3倍のダメージを出せるのだから多少無理してでもそっちの方が良かったかもしれない。
「ック!」
それでも、ペースを乱すことには成功したようで、距離を取らせることには成功した。目は変わらず達観したような死んだ目をしていたが、どこか動揺のようなものがあるように見える。それは、一撃でもって仕留めきれなかったことだろうか?それともほとんど効いていないといえ反撃を食らったことだろうか?それはわからないが、立て直しが必要なほどの衝撃を受けたのだろう。
「…………」
「…………」
お互いに相手を警戒しながら出方を伺う膠着状態になる。
〔ッシ!〕
先に動いたのは向こうだった。ショートソードを振り上げ、真正面から袈裟斬りの構えを見せた。それを逆手で構えたナイフで受け、そのまま鍔迫り合いに移行させたが、すぐに力を抜き受け流す。
鍔迫り合いになり、競り勝つために体重を乗せていたエルフの少女は突然の受け流しに対応しきれず、体制を崩してしまう。
「これで終わりだ!」
「――――!!」
腰の拳銃を抜き、ハードレザーの鎧の上から胴体に2発撃ち込み、さらに頭部に1発の合計3発を撃ち込んだ。所謂、モザンビーク・ドリルである。ただ、『死ぬまで撃つ』という射撃法であるからして、それでも死ななければ、4発目、5発目、と打ち込んでいくのだが…
…
……
………
死んだはずだ。
〔ダン!〕
死亡確認にもう一発。……悲鳴の類はなし。
拳銃を一度ホルスターに戻し、SCARのハートビートセンサーで周辺に他の敵がいないか確認が取れてから、拳銃をホルスターから抜き、マガジンを交換しセーフティーをかけてホルスターに戻す。次にSCARを手に取る。空のマガジンを抜き取り、チャージングハンドルを引き、1回目でチャンバー内部の残弾を落とす。2回目できちんと残弾を排除できているか直接確認する為に行う。次に、ボルトフォワードアシストをノックしてボルトを閉鎖し、トリガーを引き、ハンマーを落とす。新しいマガジンを差し込み、チャージングハンドルを引っ張り、初弾を装填する。ボルトフォアードアシスト、セーフティー、ダストカバーと手順通りに行い。ウェポンキャッチで固定する。
交換したマガジンなどの不用品をインベントリー内部の一時保管ホルダに突っ込み移動準備を完了させる。
「行くぞ」
ほとんど存在を忘れていた同行者に声をかけ、森の中を西に向け進む。




