表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/78

第4話「第2段階」

第6章第4話「第2段階」

…………


 第1段階の地獄に比べれば第2段階は天国だった。と言える訓練生はいなかった。確かに、確かに、第47地域連隊練兵場での訓練が主であり、朝食前のランニングを除けば、戦闘訓練以外に体力を著しく消耗させるような激しい訓練はなかった。食事も毎日3食食べられ、戦闘糧食ではなく平時食だった。(1日合計3600キロカロリーのメニューは多すぎたが……)第1段階が「間引く」為の物であったとすれば第2段階は「育てる」為の物であったのかもしれない。



…………



 第1段階は素養訓練として候補生たちを徹底的に苛め抜いた。訓練前日に蒸留酒をたらふく飲まして代謝機能にダメージを負わせ、深夜にたたき起こす。その後、貨物用の馬車に詰め込み、敢えて未舗装のぼこぼこ道を通り、乗り物酔いを誘発させる。その状態で合格ラインが本来ならゆるゆるにもほどがある体力試験を行い、昼食は敢えて油ギトギトの食事を用意させ、胃腸にさらなるダメージを蓄積させた状態で、単調な筆記試験を課した。この筆記試験、実を言うと点数は全く関係ない。単調な作業をさせることで眠気を誘発させ、ある程度消化をさせることで体調を崩させる。それだけが目的だった。


 だから、『筆記試験の点数が基準値を下回った』と言う名目で不合格を言い渡したものは憲兵隊から『素行不良』や情報部から『秘密保持能力に疑問あり』と言われたものを追加ではじいただけだ。だから第2段階こそ本番と言える。



…………

第2方面軍第47地域連隊練兵場第7訓練大隊割り当て地区

第2段階訓練1日目 0550時

…………


「終了!終了! 朝の体力訓練(PT)を終了する! 本日より第2段階訓練が始まる。第1段階では体力試験、行軍訓練、基本ランドナビゲーション訓練、基本サバイバル訓練、を行い同時に欠乏物資代替能力、チームワークなどの測定を行った。第2段階では戦闘技術や語学、上級歩兵技能、特殊な偵察技能、より高度な戦場医療技術、爆薬取り扱い技術、通信技術、特殊作戦部隊の戦術、兵站、計画立案等の各種講義等を行う。……本来であれば諸君らと遊びたかったのだが、あいにくと仕事が立て込んでいる。代りに中央教導師団の教官らを用意したので訓練に励むように。……以上。朝食を食べ、0630までに第4運動場に集合しておくように」







…………

第2方面軍第47地域連隊練兵場第8訓練大隊割り当て地区

特殊部隊選抜訓練予備課程1日目0630時

…………


 現在第2段階課程中の第7訓練大隊割当区画から2キロほど東の区画に車で移動した俺は、既に訓練を受ける兵士たちが並んでいるのを確認して首を縦に振った。ただ、首を動かしただけなのになぜそんなにおびえるのだろうか?ここにいるのは現在訓練中の第1次選抜から漏れたがそれでも精鋭中の精鋭であり、見るからに屈強な兵士たちだ。立派なのは見た目だけか!? もっと精神を鍛えろ!!


 ……などと怒鳴ると、余計におびえそうなので口を閉じていようか。


「では、この予備課程の説明をする。この課程は必要人員、希望者ともに多く、訓練が間に合わないため、ひとまず正規選抜訓練から脱落しない程度の体力を身に着けてもらい、さらに第2段階以降で行われる訓練の一部を行い、正規選抜訓練での通過率を高める。これが目的となる。したがって、この訓練を通過したからと言って、必ず正規選抜訓練を通過できるとは限らない。……では、これより体力試験を開始する!この予備課程は、全てコンバットバディーと行うことになる!」


 なぜ2人1組にするのかと言うと、チームワークを鍛えるためには集団で行動した方が良く、コンバットバディー制度は軍隊において集団としては最小単位であるからだ。本来は4人とか6人でチームを組んでもらいたいのだが、いきなりやるならコンバットバディーからだろう。と言う意見が多かった。まぁ、そう言った裏話は置いておいて……ここにいるのは40名だから20個班が編成されることになる。


「いいか! 貴様らが志願した特殊部隊と言うのは自ら敵中奥深くに食い込み、そのまま孤立してしまうことがある! そんな時に頼りになるのは、はるか後方の友軍ではない! 自らと隣の戦友だけだ! その戦友を置き去りにしたり、見殺しにするのは兵士として最低な行為だ! その最低な行為を平然と行えるような恥知らずは特殊部隊に入るべきではない! そこで、脱落したら相棒も脱落とする! 相棒に迷惑をかけたくなければ、歯を食いしばれ! 脱落したくなければ、相棒を支えろ! いいな!!」


『『『『『『『『応ッ!!!!!!!!!』』』』』』』』


「よろしい。では大尉、ここは任せるぞ」


「ッハ」


 この大尉に何度か実施を任せれば立派な特殊部隊向けの部隊編成官となってくれるだろう。これで俺の負担も減るというものだ。そもそもの問題として、エアコンがガンガンに効いた部屋でケツで椅子を磨いて、だらだらするだけで汗水たらしながら生活費を稼ぐ一般兵(ブルーカラー)よりも短い労働時間で倍以上の給料をもらっている筈だったのに、なぜこんな富士レンジャー資格者でさえ裸足で逃げ出すような素養訓練(マゾヒスト量産コース)の監督をしなければいかんのだ。軍上層部に対して遺憾の意を表明したい。景気づけにミュージックでも流しながら電車を突撃させるのもいいかもしれない。……いかんいかん疲労で発想が過激(テロリストのよう)になっている。落ち着こう。次の予定は第1軍集団で精神鑑定の報告を受けるんだったか。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ