第4話「作戦開始!」
第5章第4話「作戦開始!」
…………
≪各車停止! 前方小隊規模騎士王国軍!≫
≪スペクター1-1より各車、発砲する≫
〔ズゴォォ——ン!!〕
≪命中確認、目標沈黙。各車前進≫
片道10時間と言う現代では日本とヨーロッパを結ぶ航空路ぐらいしか比較対象がない長距離行における前線突破は友軍地上部隊による支援を受け、強力な砲火力により強引に突破した後、その有力な速力(不整地でも時速50㎞)で敵追跡部隊を引きはがした。それにより、もっぱらの脅威は後方拘置されていた有力な予備部隊では無く、盗賊化した元農民と巡回警備中の小規模な騎士王国軍部隊だった。そのため、先遣偵察隊が発見報告と停止命令、護衛のロイカット装甲車によるGT4 76ミリ砲の発砲、前進再開という行程は流れ作業化していた。
そうして今は途中接敵によるものと休憩によるものを合わせて15回目の停止中だ。作戦前最後の休憩であり、先遣偵察隊が監視狙撃ポイントに移動中だ。この最終偵察の結果を踏まえて作戦の微調整をする予定だ。
≪ゴーストへ。こちらレコン。王都郊外に騎士王国軍約4千が展開中。映像転送中………転送完了。確認してくれ≫
きたきた……これは
「レコンへ。こちらゴースト。確認した。迫撃砲にて攻撃する前進観測を要請する」
≪ゴーストへ。こちらレコン。了解。通信終了≫
「レコンより報告が来た。作戦を説明する。小隊長と分隊長は集合!」
主要な指揮官たちが集合したのを確認し、説明を行う。騎士王国軍約4千が展開中と言うのに驚いたが怖気づく者いなかった。わざと騒がしくし、強力な迎撃を受けることが作戦上必要なことだからだ。そのための装備を持ってきているのだから想定通りことを進めれば良い。そういった安心感があった。
事前に計画されていた作戦を選択し、それを再確認するだけである為、作戦の説明はすぐに終わった。指揮官たちが部隊に戻り、迫撃砲が準備されていく。迫撃砲を組み立てるチーム。車内から弾薬箱を出し、砲弾を準備するチーム。車載機銃のブローニングを外し、Mk.19グレネードランチャーに取り替えるチーム。主にこの3チームに分かれて準備をする。
「準備終わりました!」
「分かった。…攻撃開始!」
「半装填!」
「半装填よし!」
「撃て!」
〔ポン!〕
「半装填!」
「半装填よし!」
「撃て!」
〔ポン!〕
俺の命令により3門の81ミリ迫撃砲から合計18発の砲弾が発射され、王都郊外に展開中の騎士王国軍約4千を半壊させる。
「撃ち方やめ! 迫撃砲撤収! 急げ! モタモタするな!」
計画投射を終了したらが直ぐに撤収する。1秒でも早く片付けられるようにキャビン外側にネットを取り付け、そこに放り込めるようにしている。忙しいが時間との勝負である以上一分一秒が惜しい。いつもの丁寧さなど邪魔なだけだ。装備が壊れるかもしれぬが、壊れたら壊れたで改善のための資料になるからそれでいい。
「ロイカットを先頭に突撃! 正面の庭園で停車し、ゴーストの退路を確保しろ!」
7両の装甲車が時速80キロメートルで突撃する。迫撃砲で半壊していた迎撃部隊は組織だった行動はできず効果的な反撃能力を失っていた。ロイカット装甲車の76ミリ砲やブッシュマスター装甲車のMk.19グレネードランチャーの攻撃を受けなすすべもなく、肉塊へと加工されて行った。
≪目標、正面の城門! 弾種、粘着榴弾! 小隊集中、指命! 撃てぇー!≫
〔ズゴォーン!〕
≪よしいいぞ! 体当りする! 砲塔旋回、180度! 全速前進!≫
2発の76ミリ砲弾により重く強固な蝶番が外れかけ、ダメ押しと言わんばかりに、体当りしたことで城門は耐え切れず、弾け飛んだ。
≪よし! 最初の門を突破したぁ! 砲塔旋回! 正面戻せ! 次弾装填! 次も粘着榴弾だ!≫
巨大な扉が弾け飛んだことで近くの屋台が粉々になり民家が半壊するがそんなことを気にすることもなく各車市内に突入し、先頭のロイカットが砲塔を再び正面に戻す。同じように平民街と貴族街を分ける第二城壁、王宮を囲む第一城壁を突破し、各車が相互に援護可能なように停車する。
「全員降車!〔ガガガガン!〕おぉぉと!」
停車と同時に立ち上がり、後部ドアをから駆け下り、車両の影に身を隠す。弾幕がやべぇがまずは、跳ね上げていたNVを下ろし、起動する。キューンと言う起動音とともに映し出されるのは緑色の景色ではなく白黒の世界だ。
今回使用するNVは所謂、白管と呼ばれるもので高額だが輪郭を認識しやすい。これにより認識力を強化し、歩兵の夜間戦闘能力をより高めてくれる。さらにライフルのPTD-P1__レーザーデバイス__を起動する。この2つを組み合わせることで250メートルぐらいまでならヒップショットでも胴体の何処かに命中するようになる。それに加えてIRサイリウムを活用することで効率的な戦闘が可能となる。
この夜を支配する能力こそが戦術次元での米軍の強さの源だ。それに加えて米軍式の訓練と装備によりまだまだ未熟ではあるもののチート級の強さを手に入れたのが101と言う部隊だ。
……ただ、いくら強くても歩兵でしかなく、狙うことを放棄した弾幕の前には防弾能力を有する遮蔽物に身を隠すしかない。更に言うと敵の本拠地のど真ん中だ。当然有力な部隊が居座っている。近衛師団や5式戦車の例を出すまでもなく、このような部隊は通常戦局に影響を及ぼすことのない歴史IFのネタにしかならないのだが、今回は思っクソ影響を及ばせれている。
「ロイカットとグレランで敵を排除しろ!! 敵が頭を下げた瞬間に打って出る!」
「ぐあぁぁ!」
「クソ! エルト、ダウン! エルト、ダウン」
「ホイールの裏に引っ張り込め! 救命止血と直接圧迫止血! それでだめなら止血帯止血だ! 訓練通りやれば大丈夫だ!急いで確実にやれ!」
「了解!」