第3話「出撃準備」
第5章第3話「出撃準備」
………
「……時間だな」
時計を見るとちょうど9時になったところだ。飲みかけのコーヒーを一気飲みし、苦さに顔をしかめつつ立ち上がる。
……シャツOK、パンツOK、ブーツOK、腕時計OK、ベルトOK。すべてよし。
確認を終えたオレは部屋から出て車両格納庫に向かう。
………
車両格納庫
………
慢性的に司令部要員が足りず、休日出勤が常態化している王国軍の基地であるが、明かりがついているのは事務区画だけである。しかし、今日は車両格納庫も明かりに包まれていた。
車両格納庫の一角に今回使用する車両が引っ張り出され、荷物の詰め込みが行われていた。その近くの即応部隊待機区画の机の上に7.62×51ミリNATO弾と9ミリパラべラム弾、手榴弾がマンパンまで詰め込まれたアモ缶が複数置かれ、大量のマガジンが置かれている。
別の山には人数分の無線機とヘッドセット、NVG、情報端末、タブレットにそれらのバッテリーなど電子デバイスが置かれ、別の山にはやはり人数分のメディカルポーチなど補給倉庫管理の装備品が置かれている。
机に自分の作業領域を確保したオレは、インベントリーから事前に用意しておいた装備一式を机の上に出す。机の上に出された救出作戦用のタクティカルベルト、プレキャリ、チェストリグ、ヘルメット、グローブ、アドミンアームバンドに破損が無いか? 入っているべきものが入っているかを確認する。
今装着している平時用のタクティカルベルトを外し、机の上の作戦用のタクティカルベルトをベルクロを縫い付けたリガーベルトに巻きつけながらベルクロでガッチリと固定する。ベルトを前後左右上下へとグリグリ動かし、ズレないか確認し、次に移る。
1stラインの次は2ndラインだ。今回からプレキャリにJPCを使用することになる。その上にD3CRMを身に着ける。正面にSCAR-Hマガジンを3つ入れ、ショルダーストラップにストラップカッターとレンザティック・コンパスを入れたコンパスポーチ、PTT、コントロールユニット、バッテリーの三役を兼ねるコムタック6専用PTTスイッチを取り付ける。正面の多目的ポーチにはチョコレートバーやダクトテープなどの小物が入っている。
プレキャリの右側カマーバンドには後ろから、DIRECTACTIONのユニバーサルラジオポーチ、タニケットポーチ、LBT-9022Aモジュラーメディカルポーチ、メディカルポーチの上に取り付けたメディックシザースポーチの順番で取り付けてあり、左側の後ろからカマーバンドにはタニケットポーチ、クリップオンを装着したSCAR-Hマガジン、ハイスピードギア ブリーダーブロウアウトポーチが取り付けてある。
ラジオポーチにはAN/PRC-152が、タニケットポーチにはSAM-XTタニケットが、ハイスピードギア ブリーダーブロウアウトポーチはエレベーターストラップで中のSWATタニケット、コンバットガーゼ、オムエスバンテージが迅速に取り出せるようになっている。とりあえず緊急性の高い止血だけは迅速に行えるようにした。
JPCの背面パネルには50オンスのハイドレーションシステムとサバイバルキットを入れた多目的ポーチ、IFAKⅡを取り付けている。自分用の装備はここまでだが、仲間用の装備としてパネル上部にトリガーポーチ3個とFASTマグポーチ2個を取り付けている。
このように大きく配置が変更された理由は、レッグホルスターやレッグポーチなど大腿部に装着する装備が救命止血の際に邪魔になるため上に移動させた関係で様々なポーチが玉突き事故を起こしたからだ。最初、ホルスターをレッグホルスターからヒップホルスターに変更した際、ドロウしやすくする為に右側カマーバンドのポーチ類をすべて撤去したのだが、そもそも、抜きやすくする必要など無い。と言う事に気づいた。
プライマリーをM4系のアサルトカービンから軽機関銃や狙撃銃と弾薬を共通化する為に、SCAR-Hに変更した事で室内戦は非現実的になった。そこで、室内戦は事前に拳銃に持ち替え、野外戦闘時も有効射程的を考えると、そもそも拳銃で威嚇以上の効果を出せるのか?という疑問が出てきた。
そこで、スピードドロウを捨てた。それまで、スピードドロウのために右の脇腹には何もつけないようにしてきたが、その制限がなくなった為自由度が増したのだ。
3adラインは通常、バックパックのことを言うが今回は機動性を重視してファニーバッグにした。中身は、非常食とマルチツールやダクトテープなどの頻繁に使う小物類、サバイバルブランケットやエマージェンシーホイッスル、などの救急品、ハンカチとしては勿論、包帯や三角巾としても使える手ぬぐいなどを入れている。
装備の点検が完了したオレは弾薬を取り、マガジンとグレネードポーチに詰め詰め込む。全て入れたあと、ずいぶんと重くなったな。と思いつつ装備を身に着けていく。着込んだら、左の裾を捲り、アドミンアームバンドと腕時計がよく見えるようにしておく。これは後で時刻規制をするからだ。今回は、アドミンアームバンドの奥側に腕時計をしているため、大きくめくらないと時計が見えないためだ。
次にヘルメットにNVGを取り付ける。既にシュラウド、マウント、カウンターバラストポーチ、ストロボライトを取り付けてある。使用するのはPVS-31、複眼のNVGだ。装着したらランヤードで固定し、万が一にも脱落しない様にする。
準備が完了した俺は車両搭載品の積載を手伝う。CLSバッグ2個と担架という標準構成に輸血パックを追加した車両衛生キットと12.7ミリ機銃、Mk.19、その弾薬、L72LAW、AN/PRC-117中距離無線機、車載のサバイバルキット、予備弾薬など重いものばかりだ。おかげで作業が遅れ気味だった。オレとあと数人が加わり、時間通りに終了した。
「全員集合! 」
「作戦について今更確認するまでもないと思う。作戦にあたり、特別な命令を追加することはないが、必ず全員で帰るぞ! いいな!?」
「オオオォォォ———!! 」
「よろしい。全員忘れ物はないな? 全員最初のマガジンを出せ。セカンダリー装填!」
〔ガチャ〕
グロック19にマガジンを入れ、スライドを引っ張り初弾を薬室に送り込む。
「次! プライマリー装填!」
〔ガチャ カチーン!〕
続いて、SCAR-Hにマガジンを差し込み、ボルトリリースを押す。
「よし。全員、乗車!」
各車両班の点呼の後、先発隊のオートバイ2両が先頭に、第102混成機甲旅団より借り受けた2両のロイカット装甲車、特殊部隊員各8名が乗車するブッシュマスター装甲車が4両、軍医と衛生兵が乗車するブッシュマスター装甲車が1両と合計9両が進発する。一路、ノーザンブリアへ向け、約10時間車の人となる。