第3話「王都脱出」
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〔カーン!カーン!カーン!〕
「囚人が逃げたぞ!捕まえろ!!」
「城門が破壊されているぞ!」
「騎士たちを起こせ!急げ!」
さすがに門を派手に破壊したらバレたようだ。さらに衛兵詰め所の衛兵を皆殺しにしたのもバレたようだな。仕方ない、ステルスはここで終わりだ。派手にいこう。
ユーティリティーポーチからプラスチック爆薬の無線式起爆装置を取り出し、自転車のブレーキレバーのような形状の起爆レバーを握り、王宮に仕掛けたプラスチック爆薬を一斉に起爆させた。
「ぶっとべ!」
〔ズドォォ―――ン!!〕
「ぎゃあ!」
「うぎゃぁぁ!!!」
「噴火か!?」
「天罰だぁぁ!いやぁぁぁ!!」
「やはりこれに限るな」
やはりふざけているようにしか思えないが、騎士や兵士たちが生活していた宿舎に武具や食料など大量の物資が保管されていた倉庫、監視塔などが一気に崩壊した王宮は混乱の極みに達し、脱獄者を捕まえるどこの話ではなく、王宮のダメージコントロールすらおぼつかない状態であった。当分は王宮から大規模な討伐部隊が組まれることはないだろう。
主人公であり、この惨状を生み出した本人は現代日本人には理解不能な思考回路をしているらしい騎士王国王家と言えど……いや、理解不能な思考回路をしているからこそ、脱獄者の大規模捜索よりも王宮の応急再建による恥の隠蔽を優先するに違いない。と確信していた。通常戦力による大規模な捜索はないだろうと確信しているものの、まだ敵の総本山である王都の中にいることには違いなかった。王都巡回警備部隊は突然爆発した王宮に向かうだろうから可能な限り早く王都から脱出した方がよいだろう。時間をかければかけるほど現在地である王宮周辺に兵士が集まってくるだろうと考えた。その集まった兵士たちを追撃部隊にさせないために、地面にM18を仕掛けておき、先を急ぐことにした。
「王宮で大きな爆発があったため我々は至急、確認のため兵を送ることにする!ポール!貴様は隊を率いて王宮に向かえ!それからジャクソン!貴様はこの詰め所で待機を命じる、ネズミ一匹たりともここを通すな!!私は隊の半分を率いてポールの後を追うことにする!」
スキルの一つである聴覚拡張スキルによって200メートル先の衛兵詰め所の会話を聞きながら、やり過ごすため物陰に隠れる。
「あいつは……ッ!!」
〔プキキ!プキキ!プキキ!プキキ!〕
「ぐぁ!」
「ぎゃぁ!」
「どうなっているのだ!?」
「ふんぬ!」
「あべし!」
俺を素敵な格安アパートに入居させてくれた兵士にお礼をしようと思う。お礼って大事だよな?ということで感謝を込めて渾身のパンチをお見舞いしてやる〔やめろ!〕もう一発!〔ぐぁ!!〕もういっちょ!〔やめ…ッ!〕四つ!〔ごっば!〕いつつ!〔……〕むーっつ!〔………〕
返事がないただの屍のようだ。とりあえず蘇生してやろう。ストレージからタバスコを取り出し、鼻の穴にねじ込んでからダクトテープでぐるぐる巻きにしてミノムシにしておいた。
「行くぞ」
「お、おう……」
一仕事やり遂げ、さわやかな気分で見学者に声をかけるとなぜか大変困惑したような返事をしてきた。なぜだろう?
「なあ、お前……一応は遠山の家系なんだよな?」
「ああ、お袋が遠山家の長女だったな。でも、俺の魔術は親父から教わった対人戦闘魔術がメインだから魔術名家の誇りとかはないぞ。というかお前の魔術師も血筋だろ?」
遠山家とは日本有数の老店酒造企業である昭和酒造を経営する一族として有名だ。しかし、これは表の顔であり、世界有数の魔術旧家であり現代でも実力を維持している三名家の一つでもある。アジア圏最古にして最強の実力と権威を誇るこの家は魔術師業界では天皇家に匹敵する権威があり尊敬の念を集めている。
そんな良家のお嬢様が馬の骨でしかない魔術傭兵と駆け落ちし、その子供が俺というわけだ。
血縁関係はあっても、親戚関係ではない。というのが正しい評価だろう。公式に絶縁されている他、お袋から基礎的な理論以外はほとんど学んでいない以上、技術的にも継承されていないと言える。だから一応なのだ。ただ、その血縁上の父が死んだ後に遠山の分家に引き取られたというのは何たる皮肉だろうか?と思わなくもないのだが。
地球の魔術師はホームの柱に激突することで学校に行けるなどということはない。生活魔術の役割を井戸や火打ち石に譲り、戦闘魔術も騎兵とロングボウに譲ったが、除霊や占術など神秘に道を見出した魔術師たちは聖職者として生きるようになった。しかし、本来は検死や遺族と最後の別れをさせるためのモノであった降霊術を死者復活に使ってしまったことから教会にすら追われるようになってしまった。それから数百年間逃げ隠れ続けるが産業革命の波に乗り資産家として成功できた者が現代に生き残っている魔法名家というモノだ。
産業革命によって急速に力をつけた各家は目に見える偉業を求めた。いわゆる成金症候群である。その自己顕示欲によって生み出されたのが最初の現代魔術だ。しかし、この現代魔術も19世紀に生み出されたものであり、いろいろと非効率であった。(そのため、近年では近世魔術や近代魔術とも呼ばれる)それを再編集し、効率化したものが現行の現代魔術である。
一口に現代魔術と言っても多数の流派があり、(というか、科学だけでは説明できず体系化されている技術全般を指す言葉である)例えばお袋の実家である遠山家は古典的な除霊の概念が強いモノや宝石を発動媒体とする説明が大変めんうどくせぇ魔術が多い。その対極と言えるのが親父の魔術傭兵という仕事に最適化された「複合魔導戦闘術」だろう。こいつは一言で言うならば、「マジカルCQC」とかだろう。
基本的に魔術師は自分の魔術の流派に誇りを持っており、他の流派に良い感情を持っていないことが多い。魔術以外もフルに活用する「複合魔導戦闘術」は魔術至上主義の魔術師達から腫れ物を触るような反応をされることが多い。それは兄妹の間でも同じで、大変仲が悪い。兄弟喧嘩で町ごと消滅する可能性すらあった我が家では両親が必死にガス抜きと不発弾処理をしていたが、異世界転移してしまったからには、死なないために距離を起きたかった。そういった面では好都合と言えた。
…とまぁ、そんなことを説明しながら(誰にしているのだろ?)衛兵詰め所を粉砕し、王都と市外を分ける城門まで走る。
「おいどうすんだ!?完全に閉ざされているぞ!」
当たり前だが、現在日付が変わったところだ。さらに王宮で謎の噴火があったばかり。厳戒体制であった。そこで取り出したのは、ダネルMGLグレネードランチャーだ。こいつはリボルバーのような回転式弾倉を備え、40ミリグレネード弾を6発連続発射できる。
「こうするんだよ!」
ポン!ポン!ポン!ポン!ポン!ポン!
グレランから発射された6発のグレネードはきれいな放物線を描き、城門とそれを封鎖していた兵士たちを吹き飛ばした。向こうからして見ればいきなり爆発し、目に見えない矢が次々と降り注ぐという悪夢が突然やってきたのだ。これで脱獄者を突破させるなと言うのはムリな話だった。
厳重な警備であったが案外簡単に突破できてしまった。だがまだ郊外に配置されているであろう王都防衛部隊が無傷で残っている。一気に引き剥がすためにストレージからジープを取り出し陽動も兼ねてフルスロットルで北にかっ飛ばしていく。
メチャクチャ唐突でしたがこの話をふれるやつが2人しかいないくせに第一章途中でフェードアウトするやつとラスボスしかいないという地味にタイトなスケジュールの癖に1、2話で前フリを忘れると言う失態を犯しただけなので許してください。
登場兵器装備紹介コーナー
◯ダネルMGLグレネードランチャ
GGOで二丁拳銃ならぬ二丁グレランしてたアレ。リロード時にゼンマイ巻きの様な手順があり疲れるらしい。