第4話「強制的に面倒事を押し付けると形だけになる」
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第4章第4話「強制的に面倒事を押し付けると形だけになる」
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1891年3月28日 0207時
騎士王国 王都ノーザンブリア 第3城壁西門
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「……どうなっているのだ!?」
第3城壁と第2城壁の間の地区—平民区と呼ばれる地区だ—を警邏中だった王都守備隊の警邏班を率いるワイス伍長は西門の惨状を見て叫んでしまった。
第二次世界大戦中の毒素間で繰り広げられた戦車の恐竜的進化という一種の病気が戦後も冷戦という世界大戦級の惨事が継続したことにより、英仏伊などの西側主要国にも感染したことにより、登場後すぐさま旧式化してしまったとは言え、300㎜以上の装甲を貫通可能な威力は塹壕戦すら未経験の騎士王国が想像できるモノではない。HEAT弾頭であるからして、装甲版に穴をあける以上の能力はないとはいえ、守衛所の壁である分厚いだけの木の壁を貫通し、内部の守衛たちを焼き殺し、城壁を支えていた石材を大きくえぐることぐらいは簡単だ。
登場からマイナーチェンジだけで、フルモデルチェンジや電装品のリフレッシュを一切していないくせに登場から46年たった今でも世界最強の一角であり続ける90式戦車こと化け物の複合装甲は再焼結セラミックスとハイテン鋼のサンドイッチ構造だという。この複合装甲は圧力が非常識に高いため、攻撃を受け再焼結セラミックスにひびが入ってもその圧力によりまるで圧迫止血を受けたかのように圧着されるという。
さすがに、中世ヨーロッパの城塞建築にこのレベルを要求するのはただのバカだが積み重なった石材の自重により強固な防御力を有している。ただ、地面より1メートルほどの位置に大きな穴が開いた場合、強固な防御力を実現している自重により崩壊してしまう。
通常の場合、多少外壁が欠けたところで、床材や内部の壁材により不可が分散するため、即崩壊にはならないが、ストレートやフラッシュ、極めつけにフルハウスまで一度に出してしまったため、揺り返しが来てしまったのだろう。『どうせノーザンブリアが直接攻撃されることなどないのだから絶対に使わない城壁など掃除程度でいいだろう』と、長年の経年劣化の修理や補強が行われていなかったことも原因だろう。
さらに、2年前にエレヤ要塞が壊滅したことを受け、ようやく予算がついたが、各セクションで予算が着服され、作業を押し付けられた平民兵たちが将校や勇者たちが見ているときだけ作業をしているふりをしてそれ以外はいつも通り軍の補給倉庫からくすねたウォッカを飲みながら住民に暴力をふるい、金をふんだくるだけで、何の改善もされていない。
そういった短期的に劇的な改善を見込めない諸問題により本来あるべき防衛計画の前提が最初から崩壊していたこともあり伍長の目には地獄絵図が映されていた。伍長は地獄絵図の奥……つまり城壁の外に一瞬、炎が見えた。しかし、そこで意識が途絶え確認することはできなかった。
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1891年3月28日 0209時
騎士王国 王都ノーザンブリア 軍務省庁舎裏口
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「……了解。今から進入する。……これより、庁舎内に進入する。マイケルがブリーチングを。ラッシュがマイケルの直掩。残りはここで2人を援護。そして、2人が取り付いたら私たちも前進する。いい?……よし、始め」
分隊長であるグミの指示に従い、マイケルと呼ばれた男がサルボ12と言うショットガン用のサプレッサーを装着したM26MASSのマガジンを取り換え、ボルトハンドルを引くことでブリーチングシェルを装填する。その間、ラッシュと呼ばれた男も得物のボルトハンドルを引きプレスチェックを行い、それ以外にも異常がないか確認した。数十秒で準備を終えた2人はハンドサインで報告し、裏口から出てくる兵士がいないか?窓から外を覗く影が居ないか?路地から巡回兵が来ないか?そういった『かもしれない警戒』とでもいうべきか?とにかく考えられるすべての事態を警戒し、慎重にそして大胆に移動する。
「……よし。裏口にとりついた。2人ずつ移動よ。まずは、ジャックとヨナ。移動」
「グミ。……裏口の鍵開いている……」
「……作戦中に冗談はよくないわよ……冗談よね?」
「…………本当に空いています。…ほら」
冗談のような話だが、ギーという音ともに裏口のドアが開き、室内を照らす松明の光が見えている。たしかに、一般兵は25年間の兵役、大日本帝国海軍ですら全力でドン引きするレベルの体罰天国、何があろうと貴族以外が将校になれないと言う身分主義、功績を理由とした爵位や金で買える爵位が制度上存在しないという向上心を発生するはずがない構造的欠陥エトセトラエトセトラ……城門の守衛が仕事をしないのはわかるが、重要施設の警備ぐらいちゃんとやる人間を配置しろよ!
「……これは誘いこんでいるのかしら」
「……だとこちらも楽なのですがねぇ—— 恐らく本気でやる気がないのかと」
「……そうね、攻撃にさらされているはずなのに歩哨は煙草、酒、薬、女、エトセトラエトセトラ、騎馬の音が聞こえたときだけまじめにやっていますアピールしていたものね」
いくら世界最弱軍隊とは言え、ロシア帝国軍も、韓国軍も、ドイツ連邦共和国軍も、北朝鮮軍も、ニカラグア軍も、騎士王国軍の士気の低さには負けるだろう。何があればこんなにザル警備なのだ!?ゲノム兵だって近視なだけでちゃんと巡回警備はしていたぞ!どうなっているのだ!?
「……まぁいいわ。ちょっと多いけどショットガンを持っているマイケルとラッシュが先頭にVフォーメーションで進入。いくら警備が雑魚とは言え、流石に屋内で遭遇したら確実にバレる。声を上げる前に銃弾を叩き込んで。OK?」
今回はちょっと短いですが、続きを書いたら確実に4500字を超えるので、分割しました。
◯どうでもいい捕捉コーナー
西側戦車開発年表
1990年 陸上自衛隊が90式戦車を配備開始
21世紀初めごろ 大韓民国が実質的にブルーチームから脱退
2010年 陸上自衛隊が10式戦車を配備開始
2023年 USMCが多目的装軌装甲防護車(軽戦車、或いは豆戦車)を配備開始
2026年 第3次世界大戦勃発 多目的装軌装甲防護車、米陸軍他、アジア太平洋連合軍各国に配備拡大
2028年 10式戦車、部隊配備開始後初のフルモデルチェンジを実行(20両のみで中止)
2029年 M1A3エイブラムス開発完了、翌年より部隊配備開始
2033年 第3次世界大戦終結




