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第2話「順調な作戦と順調ではない訓練」

第4章第2話「順調な作戦と順調ではない訓練」


………


3日後 1400時

騎士王国 王都ノーザンブリア郊外


………



「ここまでは順調ね。問題はここからよ」


 今回の情報収集作戦のチームリーダーであるグミが言ったこの一言が、『騎士王国が軍事行動を起こす可能性大』という未確認情報の裏付けができてしまう。


 なぜなら、王都ノーザンブリアの警備が厳重になっているからだ。東西南北の各城門には80人程度の兵士が常駐し、城壁外周には巡回警備兵がうようよいる。当然、城壁や監視塔の上にも兵士がいる。間違いなく、厳戒態勢だ。もはや何かがある。と周りに大声で言っているのと同じだ。


 ドローンで上空から偵察した結果、王宮ではなく、軍務省庁舎が最も警備が厳重だ。おそらくここに目的の資料があるのだろう。



「夜になるまでここに潜伏する。ケーリーとカービーは陽動班。車両で移動し、西側の城門を爆破。これにはM72を使う。爆発に吸い寄せられた兵士たちをブローニングで攻撃。これを釘付けにして増援を呼ばせる。うまい具合に『突破したいけど、突破しきれない』と装う事。私直率の本体は陽動で手薄になっているであろう北側から市街地に入り、軍務省庁舎の裏口に移動する。裏口から警備兵を蹴散らしながら侵入し、書類を捜索・撮影する。その後、北門から脱出し陽動班が本体を回収・逃走。以上、何か質問は?……よろしい。続けて装備品のチェック。ケーリー?」


「ああ。まず、時刻規制だ。各自時計を突き出せ。……よし。1407時、5秒前、3、2、11マーク! 次にコンパスの確認。各自コンパスを出せ」


 腕時計を巻いた左手を戻し、左側の肩ベルトに取り付けたコンパスポーチからレンザティック・コンパスを、襟元からドッグタグのチェーンに取り付けられたベースプレートコンパスを、ショルダーバッグから、マイクロコンパスを、それぞれ取り出し、針がきちんと北を指しているか確認する。と言っても、原器があるわけではないため、作戦に支障がない程度の誤差であるか。という確認になる。まず、全24個のコンパスが同じ方向を指していることを確認し、腕時計と太陽を使い北を確認、コンパスが正しい方向を指していることを確認する。


 確認が終了したらレンザティック・コンパスとベースプレートコンパスは元の場所に戻し、マイクロコンパスは釘、タボ、紙幣などと一緒に葉巻ケースに入れる。葉巻ケースにしっかりと蓋をしたら、マイクロコンパスを入れていた防水ポーチから潤滑油が入っているボトルを取り、潤滑油を塗りたくる。あとはご想像におまかせしよう。何故なら食事がまずくなった!と文句を言われそうだから。


「……次に弾薬の配分を行う。5.56ミリが90発と9ミリが21発だ。銃のクリーニングを忘れるな。銃の整備を怠ればいざという時に裏切られる。キチンとしておけ」





〜〜〜


同時刻

クライル


………


「そろそろ現地に到着した頃だな。俺も仕事をしよう」


 同時刻。第2軍団司令官代理の職を離れたシロウは第1軍集団直轄の第1機動集団司令に着任していた。たった今、着任式が終了したばかりだが早くも仕事をすることになっていた。


「閣下、時間です」


 閣下。閣下ねぇ 一兵卒だった俺が少将になるとはね。本来中将がつくべき軍団司令官職を代理とはいえやっていたのだから降格人事のような気もするが、サクセスストーリーだよこれ。ブランデンブルク師団の司令官とか特殊作戦オペレーターにとっては一つの到達点だよ。どうなってるんだよ?


 一通り、愚痴が終わったところで、仕事をしますか。今日の仕事は新編の第105猟兵連隊の訓練観閲だ。



『第105猟兵連隊』


 第1軍集団直轄の師団級コマンドである第1機動集団の隷下部隊で1890年11月に新編が決定。翌年3月始めに初期作戦能力を獲得した。


 後方撹乱を主任務とし、敵勢力圏内部に浸透し、司令部や物資集積場などを襲撃。また、戦略予備の戦域機動阻止を想定している。



 本日は1891年3月27日。第105猟兵連隊は初期作戦能力を獲得してから1月もたっていない。しかも、編制完結には至っていない。計画では大隊を置かず、直接10個の中隊を配置することになっているが、1個中隊のみが配置されているのが現状だ。





……と言うのが事前情報だった。


「……これは酷い」


 初期作戦能力を獲得しているとされている第1中隊の日施訓練の視察をしているのだが、意欲はあるのだろう。体力トレーニングと射撃訓練を行っている。しかし、とても特殊部隊とは思えない。これではただの精鋭歩兵部隊だ。


 思わず出てしまった言葉に俺の案内をしている連隊長も『やはり……』と言う顔をしている。なぜこうなったのか?計画では第1中隊を教導部隊に設定して残りの中隊を編制することになっていたのだ。これでは全ての予定が狂ってしまう。


「皆意欲はあるのですが、訓練を実施することが可能な教官が居ないのです。手探り状態だとどうしても……」


 第101大隊を教導部隊に充てていたが、よくよく考えてみれば教導経験など無いし同じ特殊部隊でも101が市街地戦闘に特化した部隊で105は戦線後方での偵察と襲撃であり、方向性が違った。そのことを忘れていたようだ。


「……仕方ない。俺が教官を務める事にする。予定を調整しておいてくれ」


「了解しました」


 地球と同じ感覚だとイカンな。こりゃ他にもありそうだぞ。戻ったら全部確認しないといけないのか……


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