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第1話「まずは情報を」

第4章第1話「まずは情報を」


………


 商業統計により騎士王国軍が軍事行動を起こそうとしている『らしい』という情報を得たが、実際どこに行く軍隊なのか?そもそも、その軍事行動は侵略のためなのか?侵略だとしたらどこを侵略するのか?部隊構成は?補給体制は?指揮官は?進撃路は?作戦目標は?一時的な占拠にとどめ破壊工作?重要人物の誘拐?外交的譲歩を引き出すための侵略?恒久的な占領?国内宣伝向けの勝利が必要なのか?それともルーメリア王国を取り戻す?


 ともかく分かっているのは軍事行動を起こそうとしているらしい。と言う情報のみ。具体的な情報は不足している。BOS、戦場作戦要目の筆頭に上げられているのは情報だ。正しい指揮官決断をするためには、正しく分析された正しい情報が必要だ。



「それで私たちを呼んだというわけ?」


 そう聞いてくるのはグミ。地球にいたときからの戦友だ。別に情報収集をするだけならこいつ等じゃなくてもいいのだが、最強の手札だ。少しでも正確な情報が欲しい今、こいつら以外に選択肢はない。


「ああ、現状の持ちうる手札の中でお前らを切るしかない。と考えている。欲しいのは作戦計画書と兵站計画書だ。あと可能であれば人事発令関係の書類も欲しい。装備は欲しいものをすべて用意する。2週間以内に情報を持ち帰ってほしい」


「わかったわ。やってみるわ。欲しい装備は……」


 王国軍が俺と言う地球人の口出しにより近代化されたのと同じように騎士王国軍も一度に千人と言う前代未聞の大規模召喚を敢行した結果、相当数のミリオタが混じりこんでいたらしく猛烈な勢いで近代化が行われている。ただ、19世紀ごろの軍政に詳しいものはいないようで主に第2次世界大戦頃の事に詳しい比較的ライトよりのミリオタだということが分かる。主な判断材料は以下の通り……


1.軍団編制を廃止して師団編制に改編

2.徒歩砲兵部隊を廃止して純粋な砲兵連隊に変更しているものの前線配備のまま

3.グリット座標射撃や砲兵火力指揮所、GS砲兵などのシステムは導入されていない

4.機械化歩兵比率が著しく低い機甲師団を編成しようとしている

5.戦車は機甲師団に集中配備がなされ、歩兵師団には一切配備されていない

6.兵站部隊は完全に手付かずで軍馬主体、トラックや鉄道、電信を使う気配はない



 これで、なぜそう判断したのかが分かるようなら相当ヘヴィーなミリオタだろうなとは思う。だからライトよりのミリオタと評したのだが。


 まず、師団編制。これぐらいなら大体知っているだろう。徒歩砲兵とは普仏戦争などでどうせ砲兵隊は近接砲撃戦をするときに敵騎兵の襲撃を警戒して護衛部隊を編成するのだから最初から編制に入れとけばいいじゃないか。と言う部隊だ。が、時代の流れは砲兵隊の交戦距離を格段に延長する方向に流れた。だから第2次世界大戦のころには完全に消滅した編制例となっていた。


 3番は強力な大砲や自走砲に比べれば見てくれ的に面白みがないが、なぜ米軍砲兵隊が強かったのか?という回答になる。と言えばわかるだろうか?とにかくソフトウェア方面の大革命だ。糸電話からダイヤルアップ接続を飛び越していきなりブロードバンド接続に変わったぐらいのインパクトがある話だ。と言うか、FOがいないから前線配備のままなのでは?と言う気もする


 4番はドイツ国防軍の現実だ。5番は歩兵師団に分散配備したフランス軍は集中配備したドイツ軍に負けたというのを考えると第2次世界大戦の正解だが、現代では『戦車に対抗できるのは戦車だけだ』という当たり前の事実を再確認した結果、歩兵師団でも最低、戦車大隊が配備できないとか自殺の強要以外の何物でもない!という事になっている。当然だが陸自第8師団(戦車が居ない部隊)など敵の弾薬を消耗させるための現代の技術ではとても再現できない(だって本物だもの)ようなリアルな訓練標的ぐらいの価値しかない。


 6番に関してはトラック、鉄道、電信など第2次世界大戦では常識なっており、わざわざ語るほどのことでもない。が、この時代の騎士王国軍はロシア帝国軍とルーマニア陸軍の悪いどこ取りであり、普仏戦争前で停止している。鉄道と電信は普仏戦争で初めて活用されその威力を世界に示した新機軸だ。当然、それ以前で停止している騎士王国軍が装備しているはずがない。あと、『素人は戦術を語り、玄人は戦略・兵站・政治を語る』と言う事からもよくわかる。実際、戦術やせいぜい作戦術止まりで、戦略・兵站・政治の改革はない。まあ、政治に関しては上層部が提案を聞いていないだけかもしれないが。装備調達行政(戦車)や師団という『戦略単位』の改変は十分に戦略だが21世紀において師団は『作戦単位』だ。



〜〜〜

2日後


「まさか本当に出てくるとは……」


 要求した本人が満額回答されたことで呆れるとは酷いやつだ。とは思うが、軍隊もお役所である以上「満額回答」は無いと思うのは仕方ない。ただ、半額ですらなくゼロ額回答を予想して言うだけ言ってみた。というのはいかがかと思うが。



『白管のデュアルNVG』


 こんなもの(お一つ二百万円)を要求しておいてなくても良かった。というのも色々とくるものがある。8人分で外車と同じぐいの金がかかるのに……


 テーブルに並んでいるのはマルチカムブラックの迷彩服上下、マガジンポーチ、多目的ポーチがいくつかと、ショルダーバッグが人数分。バッグの中には無線機、戦闘糧食、バッテリー、医薬品、弾薬などの各種物資。あと、ピッキングツールとカメラを入れたレッグポーチも出番が来るまでバッグの中に入れる。


 武器は、本格的な戦闘を想定していないため軽装備だ。プライマリーは.300BLK仕様でサプレッサーを装着したSIG MCX。セカンダリーはプライマリーと同じくサプレッサーを装着したEMUピストルだ。


 これらすべてが新しく用意したもので、元々ある私物を足して今回使用する装備となる。各種アイテムをすばやく確認し、準備を進めていく彼らを見つつ他の奴らもこれぐらいできたらなぁと思ってしまうが、いつものことだから諦める。何度この不毛な脳内会話を続ければいいのだ?


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