第2話「王宮脱出」
「たしか、ここは城の地下3階だったよな?」
「たしかそうだ。地下1階に関所を兼ねた衛兵詰め所があった。警備のことを考えると迂回路はないはずだ。グレネードを使えば突破できるだろうが耐震基準のたの字どころかtすらなさそうな城でぶっ放したら最悪生き埋めになるぞ」
M1911をやや内傾に構え、肘を曲げて銃を体の方へ引き付ける形で保持するCenter Axis Relock systemという近接戦闘に特化した拳銃の構え方で、地下牢をクリアリングしつつ、後ろでチョコレート味の羊羹を食いながら文句を言ってくる魔術師に作戦を説明しつつ、プラスチック爆薬を仕掛けつつ衛兵を射殺していたら、2つ目の階段の手前までやってきた。
「ひ~ふ~み~……40人ぐらいだな。でかい音を出したら地上でも聞こえることを忘れるなよ」
「分かっているよ。しかしまさか、くそ高いミュートチェンジャーを使う羽目になるとは……」
ミュートチェンジャーとは兵士の移植元であるFPS「Scavenger Armory’s」ヴァージョン1.7.5.0で実装されたバトルピックアップの一つで、床や壁に設置することで3秒間のチャージの後、25秒間周囲の音をほとんどゼロにする装置だ。クールタイムが約1時間あることや1回使用するごとに3万クレジットも消費するから簡単には使えないバトルピックアップらしいアイテムといえる。
M1911をホルスターに入れ、ストレージから取り出したAA-12を構え、慎重に階段を上っていく。
……あと5歩……2歩……ここだ。
〔キュ――ン!〕
「何の音だ?」
「声が小さくなっているぞ!?」
「魔法か!?」
〔キャチャン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!〕
「……クリアだな」
わずか20秒で40名の衛兵を片付けたが、死体の隠蔽に10分以上かけ外に出てみると、完全に夜になっていた。
都合がよいといえばよい。なぜなら、信二が掛けた隠密魔法はハッキリというわけではないが、影が出てしまうからだ。しかし、夜ならば影ができにくいし、よほど明るい場所でなければ気付かれにくい。FPSのスキルやアビリティがほぼそのまま移植されている兵士の能力である足音探知や鷹の目で巡回兵を察知し、隠密行動や潜入作戦、生存回避抵抗脱走の諸効果により気配を消すことでやり過ごしながら兵舎や詰所、倉庫、監視塔など作戦能力を奪える場所に爆薬を、あとついでにいろんなところに対人散弾地雷を仕掛けながら西側の通用門に近づく。気分はスネークだ。
色々とお城の怖いパパ達にサプライズプレゼントをばらまいておいたから準備は完了だ。――花火大会の始まりだ!
通用門やその左右に存在する監視塔まで水平距離でだいたい80メートルほど。最低射程ギリギリだが、隠れるところはたくさんある。ストレージから多連装焼夷ロケットランチャー、M202A1……をさらに改良したゲームオリジナルのM202A6ランチャーを取り出した。これはM235 66㎜焼夷ロケットを7発連続発射できるランチャーで3×3のうち、中央とその左側の2セルが撃発機構となっている。見た目はM202A1が縦と横に1セルずつ大きくなっただけだ。M202ランチャーは20世紀中盤にM2火炎放射器の代替として開発されたが、重量や弾薬の信頼性などが問題となり大規模配備は中止されてしまった。しかし歩兵携行式の多連装ランチャーはこれしかないため様々なゲームで登場している。
今回はポリ窒素弾頭を使用する。この弾頭は通常のM235焼夷弾頭の10発800クレジットに対して1発で600クレジットと法外なレベルで高いが威力が高く、焼夷弾頭と違い火炎ダメージがないがその分、|こちらの移動制限もない《延焼しない》ため使いやすい。唯一の欠点は購入から2時間経過するか被弾すると、爆発四散して即死するということである。
片膝を付く姿勢で照準器を覗き、監視塔に合わせ、トリガーを引いた。
〔バッシュ!バッシュ!〕
闇に染まる王宮と城下町に轟音と閃光が発生し、ロケット弾が白光の尾を引きながら監視塔へ飛翔し、爆散。
エネルギーは光や熱として浪費されることなく、そのほとんどを爆発に変換され衝撃波として爆発を知らせる。同時に石造りの監視塔が崩壊し崩れ落ちるのが見える。
威力は十分なようだ。そのまま、照準を左にずらし左の監視塔にも同じく2発発射する。さらに、右下にずらし西門に対して3連射。
〔バッシュ!バッシュ!……バッシュ!バッシュ!バッシュ!〕
西門とその左右の監視塔を破壊したランチャーは残弾ゼロになり自動的に実体化が解除され光の粒子となり消えてしまった。
「ヒャッハー!!自由だ~!!」
「お前は受刑者か何かなのか?」
後ろで外野がごちゃごちゃ言っているが無視だ。
そもそも地震が存在しないヨーロッパ風異世界で地震を想定した建築基準などあるわけがない
○登場装備紹介コーナー
・ミュートチェンジャー
元ネタはCoDAWのあれ。
元ネタとの違いはあらゆる音を9割カットする点とコスト面、さらなるコスト支払いによる性能向上があること。
基本性能は「3秒間のチャージングの後、25秒間、音量レベルを95パーセント抑制する」であるが、追加で5万クレジットを支払うことで「5秒間のチャージングの後、120秒間、半径120メートル圏内の音量レベルを60パーセント抑制、同時に効果圏外への音響的、電波的伝達を完全に遮断する」ように性能向上する。
・AA-12
フルオート式のショットガンでドラムマガジンを装備することで最大32発のハイキャパシティーを実現している。ただし、トリガーコントロールをしないとすぐなくなる。
。
・M202A1ランチャー
1960年代に開発された4連装ロケットランチャーで1個大隊に9丁づつ配備された。日本ではコマンド-で銃砲店からパクった四角いランチャーで有名になったのではないだろうか?
なお、アフガン紛争でも棚卸はされたようである。
・C-4
BF3や4で車両に張り付けて特攻する爆薬のこと。粘土と爆薬の混合材でダイナマイト的な発想のもと生まれた極めて安全性が高い爆薬の一つであり、たとえ暖炉に放り投げても燃えるだけで爆発しない。MGSで銃撃されただけで爆発してしまうのはそのような信管(多分衝撃信管とか)が装備されているからだろう。昔のC-4は爆薬マーカーが混入されていなかったため非常時はレーションの代わりになったそうで、新兵教練時に食べさせて仲良く食中毒というのがあったらしい。
・M18 クレイモア
巨大な両手剣ではなく、C-4を爆発させることで無数のパチンコ玉を飛散させ人体をハチの巣にする殺戮兵器で、建物を丸ごと吹き飛ばすような威力はない。
この地雷に使用される散弾は直径3.2㎜重量1グラムとバードショットレベルだが初速が秒速1200メートルという高速のため通常の散弾銃の9倍程度の威力を持つらしい。
※ ルビが逆なのは仕様です。
○タクトレ
・C.A.R.システム
Sabre Tactical Training Resource and Research社のPaul Castle氏によって考案されたこのテクニックで、軍や法執行機関から高く評価されている。映画ジョンウィック多用されている射撃法である。
このシステムの利点は以下の通り
・狭い場所でも銃を構えることができる。
・レディーポジションから射撃姿勢への移行が早い。
・目標が近くても無理のない構えができる。
・照準を合わせやすい。
・反動を抑えやすく、連射時も精度が落ちにくい。
・ジャミングの対処や再装填が素早く行える。
このテクニックの構え方は、従来の構え方の様にハンドガンを前方へ伸ばす方法とは異なり、基本的に体の横方向に目標を置き、肘を曲げて銃を体の方へ引き付ける形で保持する。
グリップの握り方も、サポートハンドが添えるのではなく、包み込むような形になる。