第2話「事件」
第3章第2話「事件」
……………
「夢なんて、久しぶりに見たな」
「なにか言った?」
「独り言だよ。続けて」
「? 分かったわ。今日の昼前までギルドで会合があるから、昼間からデートしましょう」
「了解。じゃ、中央広場で待ち合わせということで」
「分かったわ。それじゃあ行ってくるわ」
ロビンスキーとか言う騎士王国軍元帥を捕虜にした後、騎士王国領内に侵略し、講和を引き出してからしばらくは、コマンド部隊に出し合いになったが、ここ最近落ち着いてきた。
余裕が出来てきたから今の内に婚約者らしい事をしよう。と今日の午後からデートをする事になった。
中央広場とは冒険者ギルドや商業ギルドなどの各種ギルドや王都に本店を置く様な大きな商家の支店が置かれる中央街区の中心部にある都市公園だ。
午前中は特に用事が無いため、銃器の分解整備や装備類の点検整備をして時間を潰した。時間になり、拳銃とマガジン、ファーストエイドキット、無線機、手榴弾を入れた多目的ポーチをつけたレザーベルトを腰に巻きジャケットを羽織り、出発した。
1230時 中央広場
「遅いな」
約束の時間から、30分の遅刻。流石に遅すぎる。何かあったのかもしれないな。と思い始めた時、メイドが走って来た。
「若様! お嬢様が誘拐されました!」
「誘拐って……どういうことだ?」
遅いと思ったら本当に何かあったのか。本来なら、驚きと犯人に対する怒り、後手に回った自分への不甲斐なさと怒りがあるはずだが、不思議となかった。しかし、なぜか知らせを届けに来たメイドはひどく怯えた様子で手紙を差し出してきた。
『拝啓、エセ勇者どの
お前の女を預かった。返してほしければ、金貨10億枚を持って一人で森の中の通商隊野営地へ来い。
夕方までに来たら残り物をくれてやる』
ふざけやがって!!野郎ォォーーーブッ殺してやる!!!
気づいたときには走り出していた。中央街区を抜け、中央市場を抜け、宿屋街を抜け、城門を抜け、街の外に出て、バイクを召喚。乗り込み、出発した。
走りながらスキルを操作し、偵察ドローンを呼び出し、指定された野営地の偵察をさせた。
………
国際交易隊野営地手前
バイクを30分走らせ、野営地の手前までやってきたときには、冷静になっていた。偵察ドローンによってレシアが連れ込まれた天幕は分かっている。その天幕を攻撃目標から外して……
«ッザ……シロウ、ディスイズ、シエラ。聞こえる?»
何だ付いてきたか。毒づきながら無線機の送信ボタンを押しながら返事をする。
「シエラ、ディスイズ、シロウ。よく聞こえている。何だ?手伝ってくれるのか?」
«その通りよ。と言っても直接救い出すのは王子様に譲るけど……
あんた一人に任せるといつぞやのエリカさんみたいになるでしょ»
古傷をえぐるなよ……
カルシウム足りてないのか?牛乳飲めよ。などとは言わない。なぜなら大人だから。
«……聞こえてるわよ。こちらの戦力は、MSR持ちのスナイパー2名と417D持ちのスポッター2名のスナイパー2チームとシューター2名とミドル2名を合わせた8名よ。作戦は任せるわ。うまく使いなさい»
口に出てたか。まあいい。まずは索敵を……
「タブレットかラップトップは持ってるか?」
«サーフェイスでいいなら»
OK. ……持ってるなら話が早い。
「ドローンで撮影した空撮写真を転送した。開いてくれ」
«開いたわ»
「まず、救出目標はこの天幕にいる。ここを攻撃禁止エリアへ設定」
空撮写真が表示されているタッチスクリーンを操作して赤い丸で囲む。
「次に、この3箇所に合計8体のワイバーンがいる。航空戦力を放置するのはマズい。これを最重要排除目標に設定」
モニター上にピンが表示され、強調表示された。
「まず、ワイバーンを狙撃で殲滅し、俺がM202ロケットランチャーで敵が密集している地点を攻撃。その後、単身突撃し、レシアを救出する。必要であれば簡単な応急処置をしてから、同じ道を通り、脱出する。この間、狙撃で周りの敵を排除してくれ。優先順位は指揮官、弓兵、魔導師、重装歩兵の順番だ。余裕があれば騎士王国に向かう早馬も殲滅してくれ」
«…了解。狙撃地点移動へ移動する。到着予定時刻1355時。アウト»