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外伝1話「妙に戦いなれした連中」



『……何と言うか、こう……妙に戦い慣れているというか……とにかく変な連中だったよ』


 これが彼らの周りの評価である。



……………



「見て」


 刃渡り30センチほどの短剣を2つ装備する長身の女性が指さしたのは、何やら深い穴が空いている大木だった。


「これは弾痕ですか?」


 大木を見てそう推測したのは、女性と同じく黒髪に黒目のこの辺りではあまり見ない風貌の青年だ。


 弾痕とは銃弾が着弾した傷口のことを言う。素人目にはキツツキが作った穴ぐらいにしか見えないが、この2人には判別可能だった。


「これは……エスビットと缶詰だよなぁ」


 その2人の少し離れたところには、4人の黒髪の男女が地面の穴を囲んでいた。



 明らかな野営のあとがあり、弾痕と薬莢、そして死体。……この世界の住人がこれを起こすことは可能だろう。しかし、すぐ近くで騎士王国軍が謎の壊滅的損害を出し、撤退しているという怪情報……さらに薬莢は彼らが普段よく見るNATO弾のものであるという事実。コンバットブーツのものと思われるゲソ痕……ここまでくればもはや決まったようなものだ。この惨状を生み出したのは作戦統制官(ハンドラー)のくせにやたらと突る江坂だと。



〔ガッサ!〕


「「「「「「ッ!」」」」」」



 全員が思考の海にダイブしていたことが災いし、至近距離と言える距離まで接近を許してしまった。気配がないとはいえ、草木の不自然な揺れや遠くの木々の間を除く影、小枝を踏み折る音、体臭、汗、エトセトラエトセトラ……気づくべき点はいろいろあった。


 そんな反省はともかくとしてさっさと片付けなければならない。全員が武器を構えようとしたとき、すでに終わっていた。



 短剣を装備する長身の女性が右手で構えたSIG P220から発射されたハイドラショック弾が音の主を正確に撃ち抜いていた。


「……これヤバくね」


 声の主は騎士王国の近衛騎士であった。当然だが生きて返せるはずがなく……


〔ダン!ダン!ダン!〕


 確実に殺すべく3発も打ち込んだ。


「ゴッホゴッホ……貴様ら…こんなことして」

「知らねーよ」


 弾倉を入れ替えた女性は続けて2発も撃った。流石に息絶えたようだ。




「ちょっと令和(レナ)……さすがにRIPはやり過ぎでは……しかも2発」



 2種類のホローポイント弾を撃った長身の女性に苦言を申し立てるのは長い髪をポニーテールにまとめている小柄な女性……いや少女だろうか。彼女も殺すことではなく、撃ち過ぎに対する苦言を言っているという点で、普通とはかけ離れた常識を持っていると言える。


 しかし、今重要なのはそんなこと(常識のこと)ではない。騎士王国の国家公務員を殺してしまったということだ。いくら機密保持に必要だとしてもだ。ばれたらヤバいことは火を見るより明らかである。


 3分ほど議論を交わしたのち、結論は彼らのリーダーと同じだったようだ。




…………

○NATO弾とは

 北大西洋条約機構が定めた共通弾薬のことであり、9㎜パラベラム弾、5.56×45㎜NATO弾、7.62×51㎜NATO弾、12.7×99㎜NATO弾(.50BMG弾)が有名な弾薬である。その他、40㎜グレネードなどが指定されている。

 北大西洋条約機構では弾薬以外にも様々な軍用品に共通規格を定めており、腕時計のストラップもNATOストラップとして規格化している。

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