拾った責任、最後まで!
キリのいい所まで書いたけど、
あれ?これで完結?ってぐらい最後が…笑
ガチャッ
「何だい、座ってなかったのかい?そこの椅子に座りな、立ったままじゃ乳飲ませられないだろ。」
女はジョウゴのような物を持ち扉から部屋へ入ってきた。
「何だそれは?」
「…あんたこれ見た事ないのかい?メェから直接乳飲む訳にはいかないだろ?メェの乳を赤ん坊に飲ますにはこれに入れて先っぽの管から飲ましてやんだよ。」
なるほど、確かに他の人間からなら直接飲ませられるが他の動物となると誤って赤子を攻撃する可能性もある、動物は我らと違い知能が低い、乳を飲ますにしても道具を使った方が安全という訳か…
「ほら、飲ましてやんな!赤ん坊も腹ペコだろう!」
「あぁ、すまぬ。」
女から乳の入った道具を借り飲ませようとするが、
…どうやって飲ませるのだ!先っぽから飲ませると言うておったが口に咥えなかったら溢れてしまうぞ!
我の母は母になれば自然と乳のやり方は分かると言うておったが!我はまだ子を産んでおらぬし、ましてや道具など我らは使わぬ!
一頭でアタフタしていた我を見かねて女が隣に近づいてきた。
「あんた、めちゃくちゃ不器用だね!そんなんじゃこの子が乳飲めないだろう!貸しなアタシが飲ませるから!」
アタフタしたままの我から道具と赤子をとりあげ女は向かい椅子に腰掛け乳を飲ましだした。
「まぁまぁ、可哀想にそんなに必死に飲まなくてもちゃんと腹一杯飲ませてやるから、ゆっくりお飲みな、
よっぽど腹が減ってたんだねー、そりゃそうだわね。半日も飲んでなかったんだから、泣きもせずに我慢してたんだね。お前さんは強い子だ。」
赤子に話しかけながら、乳を飲ます女をじっと見つめる。
赤子はやはり腹を空かせておったか…
ここで乳を貰えたのは運がよかったかもしれぬな。
「あんた、この先どうするつもりだい?」
女は乳をやりながら、こちらに話しかけてきた
「どうもこうも、親を探さねばならんだろう。赤子1人で生きていけるはずなかろう、ただ、捨てたというなら帰した所でまた捨てるだけだからのぅ、里親を探してやるのが1番良いかもしれんが分かぬ、まだ捨てたと言う確証がない、とりあえずは親を探してやるのが懸命だろうて」
先程考えていた事を女に話す。
「言っちゃ悪いけど、多分この子は捨て子だよ、この子の髪を見れば分かる。真っ黒な髪で産まれた子はこの土地では魔物の子として恐れられているからね。」
「…そんな事だけで子を捨てるのか?」
「そんな事…あんたは他の土地から来たのかい?そうさね、他の土地から来たのならそんな事と言われるかもしれないねぇ。でもね、この土地ではそうは思って貰えないのさ、この村から見える火山があるだろう?あそこにも魔物がわんさかいるけど、反対の森にも同じくらい魔物がいるんだ!この村にとっては魔物は日常で最も恐ろしい存在さね。その魔物達が垂れ流す瘴気が黒く見えるから黒髪は瘴気を吸って産まれた子だと言われてるんだよ。いつ人間を襲うか分からないとも言われる。だから、この子が山にいて親がいなかったのなら、捨て子で間違いないと思う。」
何だそれは…確かに強いと言われる魔物は瘴気を放っている、だがそれは威嚇行動の1つで自身の魔力を示し相手を脅す為に使うものだ。
決して相手に吸われる事はない。
子は宝だ、我はガーディアンドラゴンだが親はレッドドラゴンとオーラドラゴン。
竜王族は親が仮に同じ種族でない限りどの種のドラゴンかは産まれてこなければ分からない。
それが何故かは分からぬが…
竜王族は魂からの伴侶としか子を成さない為その伴侶が竜以外という場合も多くある。
だが、子はドラゴンの血を多く受け継ぎ産まれてくるだから我ら竜王族はどのような子が産まれても慈しみ育てる。
稀に違う種族の血を多く受け継ぎドラゴンでない子も産まれるがそんな事は関係ない、産まれた子が何であれ愛しい我が子だ。
それを毛色が違うからと蔑むとは人間とは本当に愚かな生き物よ!
繁殖力だけは強いがそれは寿命の短い種族にありがちな事だ、繁殖力が強いが為にこのような事が平気なのか?我には到底理解できぬ。
「だが、それなら何故お主はこの赤子に乳をやった?まさか!その乳に毒でもいれたのか!!」
我は考えが足りておらなんだ、この人間は親切なのではなかった!ただ畏怖する存在の赤子を始末しようしていただけ… だが、まだ間に合う!!
赤子を奪い返し解毒魔法さえかけられれば助ける事はできる!
我は竜王族、魔力で我らに敵う種族はおらん!
即刻、赤子を奪い返しこの地を更地に変えてくれる!
「何言ってんだいあんた!そんな事する訳ないだろう!確かに黒髪で産まれた子だし、恐れられる存在って言うのも嘘じゃない!だけどね、アタシはそんな理由だけで子供を殺したりしないよ!!」
さっき道端で言い合った時とは比べものにならないくらい目を吊り上げ女は怒鳴った。
「この子はね、一生懸命生きようとしてるじゃないかい!半日も乳を飲んでなかったのに、泣きもせずにいるなんて可笑しすぎる話しだよ!普通は泣き続けるか泣き疲れて眠ってるかのどっちかだ!!けどこの子はアタシらが道端で話してる時も寝もせず、泣きもせずただじっとしてただろう!日常的に粗末に扱われて泣いても意味がないって分かってたとしか言いようがない…。そんな姿見せらて、アタシの腕で必死に乳を飲んでるこの子を髪の色だけで殺すなんてアタシにはできる訳ないじゃないかい…。」
最後は女が泣きそうな声で絞り出すように話す。
その姿を見てさっきまでの怒りが無くなっていった。
「…すまぬ、誤解をしたようだ。」
「いいさね、アタシも変な話しして悪かったよ。けれどこの子の環境は親が見つかったとしても良いものになるとは言えないだろう、里親っていってもこの村には親になってくれる人がいるかどうかだ。森を抜けた先の村なら黒髪ってだけで疎まれる事もないかもしれない。あんたは黒髪がここいらで疎まれている事を知らなかったみたいだから、あんたの村に連れてっておやりな。」
女は微笑みながら乳を飲み終えた赤子を抱えて直し優しく揺すり寝かしつけてくれている。
ー 我の村といっても我は人間ではない、竜王族は各自で子育てをして子が巣立った後はまた自由に世界の何処へでも飛んでいく。我は乳を出せぬし、人間の育て方など知らぬ、里親が難しいなら他の土地へ行くのが懸命だろうが、そこでも毛色差別があればこの子が育っても、まともに生活できるとは思えん。
それなら長い目で見て少しずつ周りに馴染んで行くしかないが、ここなら少なくともこの女がおる、子を見捨てる事はないだろう。
だが、どうやってこの女を納得させる?この子を育てろと脅してもいいがそれではこの子が疎まれる理由を増やす要因になってしまう。
どうすればいい? ー
「…我の村へは連れて行けぬ。」
ここはどうにか嘘を通すしかない!
「それは…どうゆう意味だい?」
「我の村に辿りつくにはかなりの距離がある。
我から乳はでらん、そこに辿りつく前にその赤子は飢え死にさせてしまうゆえ、今すぐ連れて行く事はできぬ。」
苦しい言い訳だが、今だけでもここにおる理由を作らねばどの道この子を飢え死させてしまう事になる。
それだけは避けねば!!
「あんた…本当にどっから来たんだい、飢え死にするくらい遠くってここに何しに来たんだい?
何から何まで怪しいとしか言いようがないけど…
これも運命ってやつかねぇ。
はぁー…この子が旅をしても飢え死にしない歳になるまでだよ。まったく変な拾いもんしたもんだ。」
「だけど!ここに住むからにはきちんと働いてもらうからね!それとこの赤ん坊をしっかり育てな!途中で泣き言いったり逃げたりしたら承知しないからね!」
女はため息をつきながら不本意だと言いたげに目線をこちらに向けてきたがそんな視線は無視した。
成り行きとはいえ、拾ってしまったのだから見す見す殺す訳にはいかん、それに人間など数十年とせず巣立って行く生き物だ、長命な竜王族の我からすればほんの瞬きほどの時間でしかない。
貴重な体験?とでも思い人を育てるのも悪くはなかろう。
「よろしく頼むぞ、………….そち、名は?」
「はぁー言った側からアタシは不安だよ…。
マリーナ!マリーナだよ覚えておきな!あんたの名前は?」
「マリーナか、我はレイツビアだ!」
「レイツビア?言いにくい名前だね、レイって呼ぶよ。アタシの事はマリーって呼びな!」
「おい!勝手に呼び名を決めるでない!」
「はいはい、レイ静かにおしよ!この子が眠れないだろう、そういえばこの子の名前もないねぇ、レイこの子の名前は何にするんだい?」
「だから、勝手に呼び名を決めるなと申しておるだろう!無礼なやつだ!レイツビアとしっかり呼べ!
……して赤子の名前か。ふむ、どうするか…。
名はかなり重要なものだからのぅ
下手に付けるのは良くないが…」
「無礼はどっちだい!住まわせてやるって言ってる人にする態度なのかい!?本当にあんたは会った時からイケすなかい娘だよ!!
何でもいいさね、名前なんて元気に育ってくれればいいんだから。」
「何でも言い訳なかろう!名とは親から子へ壊れる事も無くなる事もない最初の贈り物じゃ!一生死ぬまで背負うものでもあるのだから慎重に考えてやらねば!」
「あんたまともな事も言えるんだねぇ。そうね、そういう事ならしっかり考えてやりな!」
マリーは感心したようにこちらを見た。
「本当に、お主が子を助けてくれた恩人でなければ即、消し炭してやるのに…。」
「何か言ったかい?」
「…嫌、何も?( 地獄耳か此奴!)
そうさな、サイモンド、アルキメデス、ライディーンどれも捨てがないが…」
「どれもこれも仰々しい名前だね、もっと呼びやすい名前にしておやりよ…」
マリーはブツブツうるさいのぅ!
我は今真剣に考えておるのだから邪魔するでない!
「んーーーーー、よし!決めたぞ!!お主の名前はルーファス!!ルーファスだ!!我のじぃ様の名、ルーファイアスから受け継ごうぞ!」
我の母方のじぃ様は竜王族でもかなりの力をもっており周りの竜達からも尊敬されておったらしい。
そんな偉大なじぃ様の名なら受け継ぐにも相応しいだろう!!
「ルーファスか!それならルーって呼べるね!いい名前じゃないかい!!」
「だから!勝手に呼び名を決めるでない!」
「まぁまぁ、ルーあんたは今日からルーだからねぇ」
「ルーではなくルーファスじゃ!!!いい加減にせい!」
ーそうして、レイツビアは拾った赤子の親となる事に決めた、拾った責任は最後までー
いや、まだ書きます。笑
書かせて下さい汗
とりあえず補足を
マリーナは34歳です。
狩人の夫がいましたが狩りの途中で帰らぬ人となりました。
曲がった事が嫌いなまっすぐな人と思ってください。
旦那さん殺してごめんマリー。
ここまで読んでくださりありがとうございます。