2話 異世界と少女とナイフ
「コレが異世界・・・」
レンガの道と家。鱗の生えた馬とそれを御する犬頭の毛むくじゃら人(?)間。よく観察すれば犬頭以外にも牛とか猫とかちゃんとノーマルな人間とか、たぶん類似的には猿頭人間なんだけどそもそも人間は猿の進化なわけもあってもうスター○ォーズの○ューバッカみたいな方も居るし、もう哺乳類的なものから離れて二足歩行のトカゲも歩いている。
流石にこの光景には神とか称するヤツと邂逅してカラッポと謗られた『一級特異点』だか『パラダイムシフト』だか設定モリモリにされたオレ─亥仲 征驚きだ。
「あの白い空間と言い、神と言いあっちは現実味が無かったて言うのに・・・」
きっと春なのだろう吹き付ける暖かな風が、ヒトの会話とか回る車輪の音とか、吹き出て落ちる噴水の水の音とか、そしてボンヤリそんな事を考えていると遠く遙か上空から聞こえる叫び─大翼を広げ飛び回る一頭のドラゴンの雄叫びが─そう言う雑音が強く優しく告げる。
これが新しい現実
言っていて妙だが、オレはオレのまま、この未知の世界に放逐された。と言うわけだ。
─
「にしても何しよう?」
まったく一体全体どうしたものか。
噴水の位置と家の立地関係から推察するにこの噴水を中心に円形に発展しているのであろうこの中世ヨーロッパ風の異世界の街でオレには一銭もなく、なんかこの手の物語によくあるらしいチートスキル的なものもなくチートになる為のイベントもなく、ただただ観光名所はたまたランドマーク的な噴水の前にオレはぽつんと1人立ち尽くすしかなかった。
「フツーに窮地なんじゃね?」
誰にというわけでもないが「うーん。」と右手の親指と人差し指を顎に添えながら唸って顔を顰める。
「とは言っても考えてどうにかなる訳でもない。確かこういう時のセオリーはなんか情報が集まりそうな場所に行く!だ。」
というわけでなんかどっかで読んだらしい常套句たがセオリーだかを頼りに酒場かもしくは宿屋っぽいのを探そうと足を踏み出そうとした時。
─目の前には少女がいた。
赤いスカートと白のシャツ。青い好き通るような瞳と燃えるようにキレイな赤毛。そしてまるでそれを隠すように被った赤い頭巾の女の子。が、オレを見ながら青ざめた顔で、慄くように
「あ、う、あぁ…」
と小さく呻く。尋常じゃないその光景にオレは「どうしたの?」と声を掛けようとした瞬間。
「きゃぁぁぁあああ!!」
いつから居たのか分からないその少女は絶叫する。
鼓膜が破れるかと思うほどの大絶叫。その響きには当然周囲のヒト達も振り向き、そしてみんなオレを見て一様に顔が青ざめていく。
(え。え?オレなんかした?え。え?!)
この異世界風かは分からないけどちゃんと服は着てるし、体はあるし特にそんなリアクションされるようなことなんて無いハズ。それともまさか臭ったか?いや待て待てこれまでに汗なんて一滴もかいてないし、てか自慢じゃないけどオレの汗そんな臭くねぇーし!
困惑からナニが原因が自分の服の匂いやら何やら嗅ぎ回して探し回ったが特にコレと言うものは無い。なのにナゼ?すると─
「に、にいちゃん・・・。」
コレまたいつのまにか近づいてきたのか分からないが今度は恐らく狼?頭の声から察するにおっさんに両肩を掴まれ─
「は、はい?」
「わ、脇腹・・・」
わきばら?わき、ばら・・・?脇腹!!
そこでハッと思い、右脇腹を確認する。そこにはあの忌々しいナイフが突き刺さったままだった。
「ホーリーシット!!!」
あのヤロウ!神とかなんとか宣うならこういうの治療してから送り込めよおぉぉぉおおお!!!
よぉぉぉお!!
よぉぉお!!
よぉお!!
そこで俺の視界はまたホワイトアウトして、記憶も途切れた─。
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「へっくしっ!」
そうそう誰もが行き着けない何処かの空間。
いつもは気だるそうな青年がするはずもないくしゃみを1つ。
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「─おい。」
─ああ?誰だ?
「おおーい。」
うるさい、もう少し寝かせろ。
「おい!!」
─っっ!!!コイツ!誰だが知らんが耳の最近距離で叫びやがった!!くそったれ、一発ぶん殴ってやろうか!
そう余って勢いよく状態を起こす。そして─
「ウルセェ!!!」
「おぉ!!やっと起きたか!マスター!!」
「あぁん!!ナニ不躾にお兄ちゃんとか呼んでんだ誰だお前!!─!!」
勢いよく上体を起こしたオレの上には一人の少女が跨っていた。ソイツは不躾にもオレのことを兄とか呼ぶもんだから