色彩ビルディングを考えよう!(色について 1)
みなさまは、自分で絵を描いてみて、一生懸命に色を塗ったのに、
何かイメージが違う
安っぽい
薄っぺらい
などと思ったことはありませんか?
わたしは良くありました。
で、「何でだろ~、何でだろ~」と考えているうちに、分かったのです。
文章を書くには、単語や文法を知らないといけません。
知らない街を、迷わず歩くには、地図が必要です。
上手く見える絵を描くには、色のことを知らないといけませんでした。
色には、人の心に強く働きかける「力」があります。色彩を操れると、いい絵が描けるんですねー。
「色彩は、美術において、最高の美的目的を達成するための手段のひとつとして利用される」ってゲーテが言ってました。
と言うことで、今回は色のお話。
まずは、建物を想像しましょう。
「はあっ?」じゃないです。地上100階建てのビルです。角のない丸いビル。
ただし、1階と100階は、針先のように、すごく細くなってます。
こんなかんじ。
これは、何かと言うと、「色彩ビルディング」と言います。
これ、わたしが勝手にそう呼んでいるだけで、調べても出てきません。
これをイメージするのが、色を操れるようになるための近道です。ものすごい近道。ワープといってもいいでしょう。
中身はこんな感じ。
50階には、色相の円盤が入っています。紅、橙、黄、緑、青、紫の6色がぐるっと一周に配置されているのを色相環っていいます。
12色に分類する、ヨハネス・イッテンの12色相
24色に分類する、オストワルトの色相環
20色に分類する、マンセルの色相環
とか、いろいろありますけど、まったく覚える必要はありません。
この教室は、わたしたち素人が「上手に見える絵」を描けることを目的としているので、6色を知っていれば十分です。
100階は、完全な白色。
1階は、完全な黒色です。
50階から、
上に上れば上がるほど、明るくなり、
下に下がれば下がるほど、暗くなります。
見る人にどんな印象を与えたいか、まずこれを考えましょう。これが第一歩。
そのうえで、何階の色で描くか、決めましょう。
75階であれば、淡いトーンの優しい感じの絵になります。
25階であれば、暗くて不気味な感じの絵になります。
1階だけしか選べないってことじゃないですよ。
例えば、45階から55階の色を使うって感じでもいいです。
与えたい印象と、選んだ階、これが合っているか考えましょう。
これが間違っていると、観る人に違和感を感じさせてしまいます。
それから、わたしたち素人が初期によくやってしまうのは、
深みのない絵。観光地のお土産屋さんで売っているような、原色ばかりで彩色した、良く言えば、色鮮やかな派手な絵。
なんで、そうなってしまうのか。
それは、「色彩ビルディング」の表面、外壁にある色だけで塗っているからです。
深みのある絵を描くには、ビルの中の色も使わないとだめ。
「色彩ビルディング」の表面の色って言うのは、
・紅、橙、黄、緑、青、紫の6色
・紅、橙、黄、緑、青、紫の6色の、となり同士、交ぜた色 (例 紅と橙)
・上記の色に、白、あるいは黒を足した色
から出来ています。
「色彩ビルディング」内の色も使うには、さらに
・紅、橙、黄、緑、青、紫の6色に、となり合わない色を交ぜ、(例 紅と緑)
・それらに、白、あるいは黒、あるいは白黒両方足す
これだけ。
色はビルの中の方がいっぱいあります。これを使わないなんて、もったいない。これらの色を使うだけで、わたしたちの絵は、100倍レベルアップします。
で、この「色彩ビルディング」というのは、1フロアーが6つの区画に分かれています。壁はありません。何となくです。
6つというのは、お察しの通り、紅、橙、黄、緑、青、紫の6色です。
この色ごとに、役割があります。
役割って言うのは、人の精神に影響を与えることです。色ごとに与えるイメージが異なります。
順に、見ていきましょう。
・暖色系
紅(赤色・深紅色)
高進性・厳粛・品位・愛らしさ・優美・華麗・幻想的・女性的・情熱
橙(朱・黄赤色) 最高度
明るい・明朗・快活・暖かい・快い・快適・喜び・栄誉・歓喜・元気・活気・積極的・開放的・活動的・躍動感・前向き・縁起良い
(強力)明朗・華麗・高貴
(濁り)不快・不潔・恥辱・嫌悪
黄色 軽度
陽気・気楽・日常・明朗・開放的・豊穣・豪華・きらびやか・肯定的
・寒色系
青色
暗い・鎮静・寒い・空虚・悲しげ・理性・冷静・誠実・勤勉・堅実・実用・爽やか・爽快感・涼しさ・冷たさ・静寂・精密・先進性・信頼
紫色(青赤色) 青色の性質が最高に強烈になる
不安・優雅・高貴・上品・神秘・幻想
・中間色系
緑色 青と黄の均衡
現実的満足・安らぎ・野生・自然・泥臭い・新鮮・健康・成長・健全
白色
楽しい・幸せ・安心・心地いい・純粋・清潔・清らか・開放的・主張のない・冷たい・クリア
黒色
不安・不気味・恐怖・死・終わり・秘めた・完全な閉鎖・神秘・闇の中
(重複した表現があるけれど、気にしないでください。絵を描こうと思った時のイメージを探しやすいようにです)
表にまとめると、こんな感じ。
ちなみに、この色の名前と、実際の色は、時代や国によっても異なります。例えば、フランスの緋色(深紅色)が黄みがかっていて、イタリアの緋色は青みがかっているように。
と言うことで、これからは、この色の性質を考えて、色を塗ってみましょう。
ゴッホとか、ルノワールとか印象派あたりから、自然や人物に独特の色を使っています。それまでは、ありのまま彩色するのが基本でした。
印象派の色づかいは確信犯です。確実に、見る人の心への影響を考えています。
最近見たTVアニメ、『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』の風景、道路や空なんかも、おもしろい色づかいでした。
いろんなイラストを見ると勉強になります。いろんな名画を鑑賞して、色づかいを分析してみると良いですね。
それでは、練習問題
1.好きな絵を自由に描いて、色を塗ってみましょう
2.小説を読んで、あなただったら、その挿絵を何色でまとめるか、考えてみましょう。また実際に描いてみましょう。 ( 自分の小説でも、人の小説でもいいです )
例題
『ピジョラの襲来』( https://ncode.syosetu.com/n4561ev/ ) を読んで、
挿絵を描くとしたら、何色にしますか? どのくらいの明るさにしますか?
次回は色についての続き。
お楽しみに。