その3 マンガ目考
今回は、制作はこの際、忘れて、気になったことを、つらつらと書き綴っていこうかと思います。
今日の、テーマは、「マンガの目」について
「マンガの目」には、いろんな目がありますね。たくさんあって楽しいですね。
でも、多すぎると、整理がつかないから、
とりあえず、おおざっぱに、分類してみました。
1.黒目あり・白目あり・瞼あり
( a.リアル系 b.横にノビール系 c.縦にノビール系 d.黒目の変化系(点化・記号化) )
2.黒目あり・白目なし
( a.下瞼省略系 b.上下瞼省略系 )
3.黒目なし・白目あり
( a.常にその状態系 b.感情によって変化系 )
4.瞼だけ
( a.常にその状態系 b.感情によって変化系 )
ちょっと説明させていただきます。
(なお、例は、作品名、あるいはキャラ名)
まずは、
● 1.黒目あり・白目あり・瞼あり
a.リアル系 (例:ジョジョの奇妙な冒険・スラムダンク・バガボンド・シティハンター・はだしのゲンなど)
これは、多くの劇画が当てはまるかな。マンガの王道と言って良いかも……。
もっとも長い歴史を持つ。詳しくは後述。
b.横にノビール系 (例:ゴルゴ13・北斗の拳・銀河鉄道999・陰陽師……)
目が横に伸びるデフォルメが入る。
キャラのクール感が上がる。
同時に、
まつ毛が異常に伸びたり、眉毛が異常に太くなったりすることあり。
c.縦にノビール系 (例:ディズニーキャラ・ベルサイユのばら・エースをねらえ!・Dr.スランプ・フルーツバスケット……)
目が縦に伸びるデフォルメが入る。
キャラの可愛さが上がる。
同時に、
黒目が異常に大きくなったり、異常にキラキラ輝いたりすることあり。
b+c.縦横にノビール系 (例:少女革命ウテナ・名探偵コナン・パワーパフガールズ……)
目が縦横に伸びるデフォルメが入る。目の巨大化。
d.黒目の変化系
イ.常に黒目が点化している (例:ゲゲゲの鬼太郎・キン肉マン・ドラゴンボール・賭博黙示録カイジ ・ワンピース・ワンパンマン……)
黒目の手抜き工事。黒い点だけ。
ロ.感情などによって、黒目が変形する。 (例:NARUTO・ドラえもん・パーマン……)
黒目の記号化、円形ではなく、別の形。
● 2.黒目あり・白目なし
目の輪郭が欠損、消失する。
目が、縦に伸びることで、左右の輪郭がなくなることもあるが、消失は、主に上下の輪郭にておきる。
a.下瞼省略系 (例:ちびまる子ちゃん・クレヨンしんちゃん・まどか☆マギカ・ハンターXハンター……)
視線の方向がかろうじて分かる目。
b.上下瞼省略系(例:バカボン・がっちゃん・オー次郎・コロ先生・コボちゃん・うちの三姉妹……)
たいていは、ただの黒い点。あるいは黒いかたまり。
まつ毛と、反射光が描かれる場合あり。
● 3.黒目なし・白目あり
現実の人間の黒目は、直径11から12mm。生まれてから変化することは、ほとんどない。
マンガだと、感情によって、大きさが変化したりするけれど、消失することもあり。
a.常にその状態系 (例:NARUTOのネジ・ヒナタ・バッファローマン・バンプ将軍・星の王子さま……)
b.感情によって変化系 (例:ガラスの仮面……)
例は他にもたくさんあるけど、『ガラスの仮面』の印象が強い……。
● 4.瞼だけ
a.常にその状態系(例:ラーメンマン・パタリロ・カリン様(仙猫)・魔人ブウ・不二周助・市丸ギン……)
b.感情によって変化系
笑ったり、微笑んだりする時など。
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ところで、「1.a」の「リアル系」の目はいつごろからあるんだろう?
と思って、簡単に考察してみました。
たぶん人類史が始まった時からあるんじゃないかなぁ……。
古代シュメール文明の遺物、紀元前2600 – 2400年ころの木製の箱には、このような目が描かれてます。
紀元前1500年くらい。古代エジプトの壁画ではこんな感じ。
ちなみに、これは新王国時代、アメンヘテプ2世の王墓。
ヘレニズム、ルネッサンス、近代、現代と、歴史上有名な絵画を見る限り、
人の目はリアルに描くのが基本っぽいですねー。
でも、目のマンガ化・デフォルメも、日本に限って言えば、結構歴史がありそう。
平安時代にはすでにそれが見られます。
これなんて、11世紀ころの「山水屏風」。
「2.a」の「下瞼省略系」ですねー。
これは、鎌倉時代の「一遍上人伝絵巻」。
左から、「1.a」、「4.a」、「2.a」と目を描き分けてます。
右のお坊さん、目がカワイイです。左のお坊さんは意志が強そう……。
日本絵画では「1.a」のリアル目に加えて、「2.a」それから「4.a」の省略目も、とっても多い……。
なんでだろう?
目の省略形は、屏風絵、掛け軸、絵巻物に描かれることが多いです。
ということは、
筆で、人物を小さく描く時、なので、
ただ、「細かく描けなかった」ってのが理由かもしれませんね。
その証拠に、仏画や肖像画など、大きく描かれた人物の目は、必ずと言っていいほど、リアルな目なんですよね。
マンガの神様と言えば……、
葛飾北斎!?
『北斎漫画』でも、顔面アップのマンガは、必ず「1.a」のリアルな目。
全身を描いたものだと、「2.a」それから「4.a」のような省略目。
やはり、絵の大きさ、筆の太さってのが重要かもね。
こうゆうことが、現代のマンガ表現の起源だと考えるとオモシロいですねー。
直接的につながっていないかもしれないけど、「そうする」っていう、血とかDNAみたいのがあったりしてね。
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ただ、目を、黒い円形の点「2.b」にするのは、また別の理由がありそう。
ミッキーマウスの目は、時代と共に、可愛らしく、表情を豊かにできるように、変化しましたが、
初期には、黒い点目の時がありました。
白目がなくて、黒目だけ。
これって、動物の目ですよね。
『鳥獣戯画』でも、うさぎはこんな感じ。
『北斎漫画』だと、ねずみはこう。
人物画で、小さな黒い点目っていうのは、「小動物的なカワイさ」を表現できるからかもしれませんねー。
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最近よく見る、目に、こんなのがあります。
いつから、誰が広めたのか、よく分からないけれど、
( 詳しい人、どなたか教えてください。m(#^.^#)m )
これって、「1.d.ロ」と「3.b」の合体っぽいですね。
眼が廻った時を表現する、「ぐるぐる渦巻き」
何パターンか、ありました。
1.黒目、白目ともに消失し、完全に「ぐるぐる渦巻き」に置換される
2.黒目の中に「ぐるぐる渦巻き」が描かれる
3.黒目が消失し、「ぐるぐる渦巻き」に置換される
4.白目の全体に「ぐるぐる渦巻き」が描かれる
そして、この新しいのは、
5.白目の外縁部に「ぐるぐる渦巻き」が圧縮して描かれる
ってパターンなのかな?……
「2」から「4」の「ぐるぐる渦巻き」が描かれるってのは、眼が廻った時だけでなく、
「狂気」とか「混乱」、「驚愕」などを表現しますから。
やっぱり、これは、まったく新しい描写方法ではなく、この流れなんじゃないかなぁ……。
と思う。今日この頃でした。
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おまけ
成宮りん先生の作品
(先生の許可をいただいて、掲載してあります)
分類すると、どうなるのかしらん。
ご意見・ご感想・誤りやアドバイスなどありましたらお聞かせください
m(#-.-#)m