表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

蟻の門渡り物語

作者: 血塗五六

友人Hへー

「蟻の門渡り物語」




【蟻の門渡り】ってなんだろう。


友人がSNSで【蟻の門渡り】とつぶやいたのを見て思ったのが始まりである。


これは1人の青年の【蟻の門渡り】をめぐる一夜の物語だ。



「ありのもんわたり…」


話の流れからすると下の話なようだ。なにせ友人HはとてもHだ。口を開けば下ネタである。であればこの【蟻の門渡り】も下ネタであるに違いない。


そう当たりをつけると俺は自分の持つ下知識をフルに引き出し始める。


ネットで調べれば一発だろって?そいつは風情がないってもんだ。それに苦労して行き着いた答えにこそ価値は付いてくる。少なくとも俺はそう思うのだ。


まず最初に浮かんだのは【四十八手】である。


ご存知だろうが【四十八手】とは【セックス】における【体位】の種類のことだ。その名の通り48種類ある。相撲の技では無い。


この【四十八手】の中にはとても性にまつわるものとは思えないほどにイカした名前が付けられているものがある。個人的には【菊一文字】や【窓の月】なんかは特に秀逸だと思う。


さて、そんな名前のつく【四十八手】だからこそ【蟻の門渡り】という名前が付いていてもおかしくは無いだろう。蟻が門を渡るかのような【体位】に違い無い。蟻が門を渡るという状況が全然掴め無いが。


とここまで思考を巡らせたが一つ重大な問題が俺の想像に歯止めをかける。


俺は【四十八手】全てを覚えているのだ。


その中に【蟻の門渡り】という言葉はなかった。


この【四十八手】、実は【裏四十八手】というものがあり合計96種あるともされているのだがそちらの方にも当てはまってはいない。


おそらく別の意味がある言葉なのだろう。


ここで俺は【四十八手】説を切り捨てた。御免。



さて、次に考えられることだが、【蟻の門渡り】が下ネタであるならばこれは何かの【隠語】であるという線が濃厚だ。そして【隠語】というものはそのままの意味で隠したい語録ということだ。スラングとも言うか。公の場で口に出すことが憚られる言葉。いくらでも思いつくが卑猥な何かを指していると思われる。


【行為】なのか、【部位】なのか、はたまた【道具】なのか。【現象】という線もあるだろう。


俺は昔読んだ宮武外骨の【猥褻廃語辞彙】を思い出す。


【猥褻廃語辞彙】は簡単に言うと昔の【隠語集】である。昔の言い回しというのは奥ゆかしく、また現在の下ネタは横文字のイメージが強いためそういった言葉が正しく伝わっているというのはごく一部である。友人Hがどれだけ物を知って口に出しているのかはわから無いがあれで中々頭のキレは良い人間と見える。下ネタの為に一つ二つ小難しい言葉を覚えるくらい訳はないだろう。


【猥褻廃語辞彙】に書いてあった一節をひとつふたつ思い起こす。


【一深九浅の法】。簡単に言えば浅く9回やったら次は一度だけ深く。ということである。


【かかいの祭】。暗闇で行う事。


隠語の中には【やり方】という物も含まれる。【蟻の門渡り】とは蟻が門を渡るように【行為】に及ぶことなのかもしれない。

…まてまてまて。


やはり蟻が門を渡る、という意味を考えなければどうやら先に進めはしないようだ。


蟻が門を渡るか…蟻…門…


そもそもこれはありのもんわたりという読み方であっているのだろうか。語感は決して悪くはないが…


くそっ、考えてもわからん。気がつけばもう1時だ。早く答えにたどり着かねば…明日も仕事だぞ…



思考の転換。発想の逆転。


シモから離れてみるってのはどうだろう。いや、下ネタなのは間違いないのだ。俺の下ネタレーダーもそう言ってる。だが普段の何気ない日常の中にエロという物は隠れている。


蟻…黒い…小さい…働き者…


門…扉…高い…閉ざされている…


門を渡るというのはそのままの意味で考えるなら門の上を渡り歩くということだろう。蟻のように小さき物が門の上を歩く。その様を捉えた言葉。考えられるのは場所であるというのが妥当なところか。門の上というのはイメージだが細い物なような気がする。その狭いところを蟻のように小さい存在が渡る。道理はあってる。もしくは狭き門を通る、といったところか?場所から場所へと移り歩くことも渡り歩くというし。


蟻しか通れぬような狭き場所。うん、かなりしっくり来た。蟻という主語が門を渡るということからも人間の動作ではないのではないかというのも一因だ。ひとまずこれを主軸として話を進めよう。


場所というのはここで考えられるのは【そういう店】または【行う場所】か【部位】だろう。


ここで【猥褻廃語辞彙】を再び取り出そう。


【金勢大明神、市松、得手吉、活きた御用の物】男性のアレ。


【糸口】男性のアレの裏の部分。


【菊座】肛門。


このように体の一部を【隠語】にすること、またその一部をさらに細分化した箇所に【隠語】を使うことも珍しくはない。【そういう店】は今回の下ネタ会話の流れとして似つかわしくない、いや、そもそも友人Hはもっと直接的な表現を好むはずだ。だから【蟻の門渡り】も【竿】だとか【菊】といったような








ち ょ っ と ま て





何故気付かなかったのだ。【門】だ。【門】である。【門】なのだ。


【門】と言えば、





【肛 門】しかないだろう!!!






つまりはなんだ!?!?【蟻の門渡り】というのは蟻を【肛門】に這わせるとかそういった超級者向けの【プレイ】なのだろうか!!この世には様々な【性癖】が存在し、その中にはナメクジを体に這わせるといったものもあるそうだ!全然おかしくないぞ!!!【春画】にも蛸とまぐわったりしてるのもあるし!!!!!





俺は今夜一つの解にたどり着いたのかもしれない…!!!





かつてこれほどまでに晴れやかな気持ちになったことがあったろうか。


気がつけばあれから更に時間が経ち、長い夜があけようとしていた。


黄昏時の空のように、俺はうすぼやけた思考を休ませるべく、眠りにつくことにした。


おやすみ。【蟻の門渡り】。

あなたにはあなたの蟻の門渡りがきっとあるはず

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ