ろっかいめ
-町中にて-
今日は、ゴリラさんの付き添いで本屋に来ていた。
「最近の本屋は、普通に同人誌とか置いてるんですねぇ。」
正直、ちょっとなめていた。
「多くなってるみたいだね。」
返事をしつつも、真剣に選ぶゴリラさん。
狭い店内にこれでもかと詰められている薄い本。これ全てエロだというのだから恐れ入る。
よくゴリラさんは俺の事”二次元スキー”とか言うが、ゴリラさんだって立派なモノだ。
俺は通常の本が置いてあるブースへ。『ナイフ入門』という本を見つけたので読む。
しばらくして、ゴリラさんに声をかけられ次の店へ。
次は、スポーツ用品店。今度、春の行事で山登りをするらしく新しく靴などをみたいそうだ。
俺は、キャンプ用品など適当に見て回る。
「…寝袋って、全部同じじゃ無いのか。」
値段が8,000円~36,000円まで幅広く存在した。
-何だよ。36,000円って。どんだけ凄い寝袋なんだよ。
暇そうにしている女性店員を捕まえて、値段の違いを説明して貰う。
聞いてもその凄さの違いが理解できなかったが、ゴリラさんの買い物が終わったようなので問題なし…次へ行く。
一通り周ったので、お茶することに。
「何処行くっすか?。」
「あそこにしよう。」
ゴリラさんが指差したのは…。
「猫カフェ?。」
”キャットテールにようこそ!”の看板が立っていた。
「ああ、興味があってな。」
意気揚々と店に入っていくゴリラさん。
…ああ、最初からここに来たかったんだな。
今日の買い物くらい、ゴリラさん一人でも十分だったはず。しかしここに来るには、一人ではハードルが高い…故に俺を呼んだのだろう。
そんな事を考えつつ、俺も階段を上り店に入る。
「いらっしゃいませー。」
中に入ると、ガラス越しにたくさんの猫が寛ぐ様子が見て取れた。
…意外に普通だな。
このお店は時間制のようで”一時間500円で飲み物付き”という張り紙がしてある。
ゴリラさんは入り口で立ち止まり、じっと考え事をしている。
「あそこにしよう。」
真剣な表情で席を決め、座る。
「いらっしゃいませ。」
普通のおじさん店員から、店のルールについて説明を受ける。
”ガラスを叩くな”等の諸注意を受け、コーヒーを二つ頼んで一息つく。
「ゴリラさん。猫、好きなんすか?。」
「ああ。普通は寄ってこなくて…な。」
それはそうだろう。ゴリラに寄ってくる猫はいまい。
コーヒーが届き猫を見つつ会話していると、他の客に見られている事に気がつく。
…まあ、ある意味動物が動物を見てるようなもんだしな。
昔からこんな感じなので慣れてしまったが、嫌なモノは嫌だ。
きっかり一時間滞在し、店を出る。良い時間なので、駅に向かう。
「いやー、助かったよ。ありがとう。」
「いえいえ、何もしてませんから。」
そんな事を言いつつ電車に乗り家路へ。
「んじゃ、お疲れっす。」
荷物を担ぐゴリラさんを見送り、家に帰る。
「帰りにスーパーによるか。」
…今の時間なら、揚げ物が安いはずだ。
俺はそんな事を考えながら、スーパーへ向かうのだった。
-山-
「こら、しっかり歩け。」
学校行事で、低い山をハイキングで歩く事になった。
子供達は元気に歩いて行く…が、正直キツい。
俺は先頭集団のお守りをする事になっていた。
「先生頑張って!。」
しかし、応援される始末である。
「ゴリラ先生、森は得意なんじゃ無いの?。」
…ここは山だ、森では無い…の言葉が出ない。
生徒達に合わせて貰い、なんとかハイキングを終える。
バスに戻った時には、もうぐったりだった。他の先生も似たり寄ったりだ。
生徒が全員揃うまで休憩。全員揃ったら、点呼を取って出発。帰りのバスは静かなものだ。
…いつもこれくらい静かならなぁ。
中学1年は小学生の延長みたいなものだ。何かにつけて元気に動き回る。
「さ、帰ってビール飲もう。」
ビールに思いを馳せながら、学校へと帰った。
「…てな事があってな。」
こないだのハイキングの様子をオランウータンさんに話す。
オランウータンさんは神妙な顔をしながら「大変だったんすね。お疲れ様です。」と頭を下げてくれた。
「あんなに体力が落ちてるとは、思わなかったよ。」
「…毎年やってるんじゃ無いですか?。」
「いや、ハイキングは1年生だけだ。2、3年はまた別だよ。」
「そうなんすか。」
「うん。で…だ。運動をしようと思う。」
「止めた方が良いっす。」
速攻で止められた。
「え、なんで。」
「なんのかんのと理由を付けて、2日くらいで止めるのが目に見えてるっすよ。」
興味を失ったのか、FCを立ち上げ『バルーンファイ○』をやり出すオランウータンさん。
「そんな事無いよ。」
2コンを黙って手に取り、二人プレイを開始する。
「はいはい。頑張ってみれば良いっすよ。」
開始直後、いきなり人の風船めがけて突っ込んで来た。
「ああ、頑張って!みるよ。」
何とか避け、俺も突っ込む。
「この!この!。」
「落ちろ!カトンボ!。」
敵を無視した、とても幼稚な争いが始まった。
読了ありがとうございます。次は書き溜めが出来ましたら投稿します。ではまた