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さんかいめ

 -桜の話-







 「桜の時期っすねぇ。」


 だいぶ暖かくなってきた。そろそろ咲いてる頃だろう。


 「そうだな。」


 ゴリラさんは、スマホで何かやっているらしく忙しそうだ。


 「桜の下には死体が…有名っすよね。」


 「梶井基次郎か…そだな。」


 「檸檬っすよ。で、思うんすよ…死体なんか埋めたら、花がヤバい事にならないのかなって。」


 ゴリラさんは顔をあげ、”何言ってんだこいつ”みたいな顔をしてすぐにスマホに戻った。


 「欧米訳には”薔薇のしたで”ってヤツがあるみたいで、そっちはハッキリ”おかしい”と分かるですけど。」


 「…で?。」


 「人間の死体は言わば”ゴミ袋”っす。焼いて埋めるなら…まあ、焼いても全部は不味いんすけど花を元気にして黄色がかった薔薇にしてくれます。」


 ゴリラさんは何が気に障ったのか、胡乱うろんな目つきで俺を見つつスマホを置く。


 「…で?。」


 「日本のそれって、たぶん生の死体っすよね。そんなもん根元に埋められたら、9割くらいの確率で桜は枯れると思います。」


 「…言いたい事は色々あるが…で?。」


 「だから、死体うんぬんってどうなんすかって…。」


 「…あのな、梶井基次郎の檸檬に載ってる『櫻の樹の下には』は、生命の醜華しゅうかを表した作品でな。」


 …話が長くなったので切りました。






 -花見の話-






 


 「で、なんで急にそんな話を。」


 「お花見しましょう!。」


 …急に言うなぁ…。


 「どっか良いとこあったっけ?。」


 「ゴリラさんの実家の庭で良いじゃないっすか。」


 「あー。やっぱそうなるか。」


 「十分でしょう。」


 家の庭には桜が何本か植わっていて、今なら咲いているだろう。


 「んじゃ、明後日行きますんで。酒は持ってきますよ。」

 

 「料理は、俺か…。」


 「逆でも良いっすけど…大丈夫っすか?。」


 …正直、逆にしたい…でも。


 「親父さんの酒か?。」


 「そっすよ。5本溜まったすよ。」


 「料理で。」


 「了解っす。」


 オランウータンさんの親父は酒を飲まないらしく、オランウータンさん所に貰った酒を持っていくのだ。オランウータンさんも飲まないので、良いお酒が溜まっていくノミとなる。


 「そういや、ご両親は?。」


 「親父は海外。母さんは病院だ。」


 「そっすか。んじゃ。明後日。」


 「またな。」









 -オランウータンさんの話-









 俺はよく”オランウータンによく似ている”と言われる。


 昔はよく否定したもんだが、鏡を見る度思う…”すっげえ似てる”と。


 話は変わるが”二次元スキー”の間では、大凡二者に分かれると思われる。


 一つは、自分と主人公を同一視するモノ。


 主人公を自分と同一に見る。一体になった気分で、女性や男性と組んずほぐれつする為に進めていく。


 恐らく、そういう人間は多くが”私の旦那、俺の嫁現象”を起こしているのでは無いかと推察される。


 でなければ”俺の、私の”と言った言葉など使わないのでは…と思う。


 同一視するが故に…と言うわけだ。


 もう一つは第三者視点だ。


 これは、”それ”をお話としっかり認識した上で物語を楽しんでいるモノと言える。


 同一視勢からは”作品を十分に楽しんでいない”とか”感情移入できないなんて想像力が貧困”等、言われる事があるだろう。


 だが待って欲しい。物語とはそもそも「あのさ、オランウータンさん」…はい?。


 「その話、まだ続くの?。てか、オランウータンさんの話はどこいったのよ。」


 ゴリラさんが、赤い顔で一升瓶からマスに入れながら聞いてくる。


 「そっすね。良い機会だと思ったんで…つい。」


 「んなことより、オランウータンさんの高校時代の話を聞かせてよ。女子との話はどこいったんよ。」


 「…分かりました。お話ししましょう。」









 -オランウータンさんと女子の話<前編>-







 「で、ええっと。何でしたっけ?。」


 「女子だよ女子!。男子校に通ってたのに女子となんかあったって話!。前にいってたじゃん!。」


 「ああ、パチンコの当落演出の話っすね。」


 「パチンコなの?!…現実でしょ?。」


 「ええ。これも実際あった話っす。正真正銘マジ話っすよ。」


 「んじゃそれで。」


 「了解っす。…あれは、俺が高校1年の夏の話っすね。。」


 当時、俺は今よりも髪がフサフサしてて…あ、それはいい。はい。で、夏休み中に部活に出る事になりまして。…え?文化部っすよ。無線部です。え?どんな部か?、その話はまた今度。


 で、学校に行こうと電車に乗ってたんすよ。その日はクッソ蒸し暑くて、冷房気合い入れろよ。と思ってたのを覚えてるっす。


 電車の車内、ふと横を見ると…女子スカートの中に傘を入れてるおっさんが居たんすよ。


 …俺”まじかよ!”って思わず3度見しました。女の子は、怖いのか震えてて…すぐにそのの所に行きました。





 「こんな所にいたのか、探したよ。」


 「え?あの…。」


 「向こうで、皆待ってるよ。行こう。」


 彼女の手を引いて、別の車両まで移る。


 三つほど車両を移動した所で、座席に座らせて「大丈夫」と告げる。


 男が近くに居ると、嫌な思いをするだろうと思いその場を離れる。丁度、降りる駅だった。


 彼女は泣いていたので、そっとしておくに限る。と思い、電車を降りた。


 「あーあ。勿体なかったなぁ。弱ってる女につけ込めるほど、賢い男になりたい。」


 そんな事をほざきつつ学校へ。


 部活が終わった帰り。電車に乗ろうと駅で立ってると。


 「…あの!。」


 俺は、急にデカい声で話しかけられたので吃驚して変な声を出しつつ振り返った。


 「今朝は、ありがとうございました。」


 そこには、朝の女の子が立っていた。






 「長い。そこまで。」


 「でっすよねぇ。」


 もう良い時間である。酒も入りご満悦でもある。


 「このまま、夜桜見物も良いが、世は眠い。また今度じゃ。」


 そんな事をのたまい、片付けをオランウータンさんに全投げして家に入る。


 こたつをつけ、布団をよせダイブ。最高じゃ!。


 「んじゃ、おつかれっす。」


 オランウータンさんのそんな声が聞こえた。



 

お読み下さりありがとうございます。次は明日、お昼です。ではまた

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