にかいめ
-男子校の話1-
「俺の居た高校、男子校だったんですよ。」
「へー。」
興味なさげに、ゴリラさんが返事を返す。
特に面白い話をしようと思った訳でも無い俺は、本を読みながら続ける。
「教室に『ドラゴンボー○』が全巻あって「ちょっと待て。」…へ?。」
見ればゴリラさんは、やっていたRPGを一旦止めこちらを見ている。
「教室に?。」
「え、ええ。普通でしょ?。」
「…俺の居た学校の教室には無かった。」
「そうなんですか。他にも『ふたりエッ○』とか『ベルセル○』とか色々ありましたよ。」
「…そうなのか。…で?。」
納得して無さそうな顔をしているが、本題はそこでは無い。
「で、授業中次の巻取りに行くと「ちょっとまて!」…え。」
「授業中?。」
「ええ。次の巻…読みたいでしょ?。」
「…まあ、確かに。」
完全に聞く体勢になってしまったようだ。たいした話じゃ無いんだが…。
「で、取りに行くんすよ。」
「うん。」
「その時に、席を立つと先生に”どうした?”って聞かれるんす。」
「そりゃ聞くだろ、普通。」
「で、漫画指して本棚を指す。って合図してたんですが…先生に”次の巻ぐらい用意しとけ”って怒られたなぁ…と。」
「…納得は出来んが…で?。」
「次の巻を取って欲しくて、本棚近くのヤツに電話すると”誰だ!携帯ならしてるヤツは!”って激怒した事があってですね…ゴリラさんもそんな事無かったですか?。」
「…色々言いたい事はあるが…ある。」
「どんなです?。」
-レベルアップ-
「授業中にレベルアップ音が流れた事上がったな。DQの。」
「ああ…”てれれれってってってー”ってやつっすね。」
「ああ、それと”でっでっででんでん、でんでんでん↑”ってヤツな。」
「○ネークッ!って叫んで大爆笑になった事があります。」
オランウータンさんも頷いてる。
「当時は、難しい着信音とか出来なかったもんなぁ。」
「時代は進歩してるっすよ。」
「今の着信音は、声が出るもんなぁ。」
「録音して着信音にできますもんね。」
「それでこないだ電車に乗った時”パパー電話だよー”って着信が流れてな。」
「良いっすね。お子さんの声で着信、自慢したいんでしょう。」
「いや…続きがあってな”早く出ないと○ン○だしてペ○○○しちゃうゾ”ってな…。」
「…で?。」
「その着信の人、寝てたみたいで…俺が降りるまでずっと流れてた。」
オランウータンさんは、頭痛を堪えるように頭を抑えていた。
「後、ずっと”死ね…死ね…死ね”ってのを聞いた事がある。」
「ええっと、俺の高校の頃の話なんですが。」
オランウータンさんの優しさが沁みる。
-男子校2-
「テストの赤点が30点以下でして。」
「俺の学校は、クラス平均の半分だったよ。」
「そうなんすか。色々あんすね。で、テスト中に教科書開いてた「ちょっと待て」…え?。」
「テスト中に、教科書?。中間とか期末とかの?」
「ええ。そうっすよ。」
「…まぁいいや…で?。」
「教科書指して”ここ、分かりません”って言うと、教えてくれ「ちょっと待て」…はい。」
「教えてくれんの?。テスト中に?。」
「…はい。教えてくれます。」
「さすがにおかしくないか?。盛ってるだろ、話。」
「いいえ、全く。俺の学校では普通でしたよ。」
オランウータンさんは、心外だ…と真顔である。
「…そうか。すまない、話の腰を折ってしまって。」
「いえ。それでですね、教えてくれるのは良いんですけど時間かかっちゃって…すぐテスト終了になるんすよ。もちょっと要領よくしてくれてもいいじゃないかなって。」
「最初から!勉強しとけよ!。」
…なぜ怒られてるのか…。
-学校の話-
「まあ、いいや。オランウータンさんが悪いわけじゃ無いからな。学校の事は…。」
「そうっすよ。酷いっす。」
俺は気を取り直して、止めていたRPGを再開する。
「で、結局何が言いたかったんだ?。」
「ゴリラさんの高校って、共学だったんすよね。良い思い出とか無いっすか。」
「良い思い出ねぇ。…具体的には?。」
「男女交際うんぬんってヤツっす!。」
…こいつは。
「お前…この体と顔を見て、もう一度言ってみてくれ。」
オランウータンさんは、正座に座り直して真顔で真っ直ぐ頭を下げた。
「女子との良い思い出を、聞かせて下さい。」
…こいつ…言い切りやがった!。
「だって、何気にゴリラさんモテるじゃないっすか!その頃の話が聞きたいっす!。」
「…オランウータンさんの話も聞かせろよ。」
「良いっすよ。たいしたのは無いっすけど。」
「…うちの学校には、階段にいくつかのスポットがあってな。」
「…その話、犯罪じゃ無いっすよね?。」
「女子のした「犯罪!ダメ!絶対!」んじゃ何を話せと!。」
「…落ち着いて下さい。ゴリラさんは、イケメンゴリラじゃないっすか。」
「ゴリラはゴリラじゃん!。」
「こないだ、飼育員のお姉さんも言ってましたよ。」
「飼育員って言った!?、今、飼育員って!。」
「ああ、ダメだこりゃ。俺の話は、また次回にしましょう。」
「ちょっとまてぇぇぇぇぇ!。」
読了ありがとうございます。実は…男子校1と2、レベルアップは実体験を元にしております。次は、明日12時です。ではまた。