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第11話 港での出来事

「……どういうこと?」


 カリハの言っていることは分かるが、しかしその理由が分からずに俺がそう尋ねると、カリハは頷いて続けた。


「まぁ、そういう反応になるだろうな。私もまだ詳しくは理解していないのだが、分かっていることを話そう。端的に言うと、だ。海の向こうから、空を飛ぶ船がもう一隻やってきたのだ」


「空を飛ぶ船……」


 飛空艇か。

 そう言えば、あの獣人たちもそういうもので来た、ということを示唆する台詞は言っていた。

 考えるに、この世界にそのような技術を保有する国家が一つでもあるのなら、何隻あったとしてもおかしくはない。

 コストはかかるだろうが、技術さえ確立しているのならいくらでも作れるはずだからな。

 ただ、話の流れから察するに、あの獣人たちの仲間がやってきた、というわけではないようだ。

 それはつまり、あの獣人たちと敵対する勢力か、何かだということだろうと思われた。

 カリハは続ける。


「港に行って、空を飛ぶ船が空に浮かんでいるのを見たが、初めからそこにあった方は巨大な肉塊のような、醜悪な代物だったな。よく見ると血管のようなものや眼球なども見えたし、船というよりかは、生き物のように見えた。後から来た方は……まさに大きな船だった。海に浮かぶ代わりに空に浮かんでいる点が大きな違いだが、こちらは人の手で作られたものだろうとう推測はついたな……」


 察するに、別の技術体系によって造られたもの、ということだろうか。

 こればっかりは実際に見てみないと何とも言えない。

 ただ、この島の技術力から見て、この世界は前世のような科学力はないのではないか、と考えていたがそうも言いきれないようだということは分かる。

 銃のような武器もあり、空を飛ぶ乗り物があるという時点で、そう大きくは離れてはいないのかもしれない。

 とは言え、前世はアメリカや日本などの先進国のような文明的な暮らしをそう言った技術力を持つ国の国民全員が享受しているかと言えばそういうわけでもないだろうが。

 そもそも魔物がいる世界だからな……色々と前世と同じようには考えられないところがある。

 母カリハのような存在も勘定に入れると、余計わからなくなるし……あぁ、カシャームみたいなのもいるしな。

 まぁ、空を飛べる乗り物くらいは作れる、と心に刻んでおくくらいにしておくか。


「それで……?」


 俺が続きを促すと、カリハは続ける。


「ああ。肉塊のような船の方からは、たまに球体がいくつか落ちてきてな。そこから獣の頭を持った人……獣人が現れて、港の集落の住人たちと戦っていたよ。私は港の住人たちに加勢して戦っていたわけだが、半分くらい片付いたところで、その空飛ぶ船がやってきてな。そこから巨大な声が聞こえて来た。『獣人どもよ、即刻戦闘をやめよ。でなければそれなりの対応をせざるを得ない』とな」


 ……拡声器のようなものもあるわけか。

 便利だな。

 しかし、そういうことなら……。


「島の人間の味方をしてくれたってことかな……」


「まぁ、その時点でははっきりしなかったが、結果的にはそうだった。その大声のあと、肉塊の方からも巨大な声が響いて、しばらく口げんかのようなことをしていたが、その間に私がほぼすべての獣人たちをのしてな。『こいつらは全員殺してもいいのか?』と叫んだら口喧嘩は終わった」


 ……我が母ながらやることが物凄い。

 鬼のようだ。

 まぁ、いきなり襲い掛かって来たのだから獣人たちは全員殺されても文句を言えないだろうし、気絶なんかさせずに全員殺しても許されるだろうが、そこまでしない辺り、カリハも色々と思うところがあったということだろう。

 別に優しいから助けてやった、とかではなく情報が欲しかったのだと思う。

 いきなり襲われて、なんだか分からないが全員殺しました、では後々の予測が立てられないからな。

 ちょうど事情を知っていそうな者たちがいるわけだし、情報を教える代わりに解放しようか、という条件をつけるつもりでそうしたのだろう。

 誰も来なかったら拷問でもして聞き出したのだろうしな。


「口喧嘩が終わったのはいいとして、そんなこと言ったら危ないような気がするけど……」


 獣人たちは銃と呼べるような武器を持っていた。

 携行式の銃が作れるのなら、飛空艇に積む大砲だって作れるだろう。

 そしてそんなものを撃たれたらいかに母と言えど無事に済むとは思えない……思えないよな?

 そう思っての質問だったが、カリハは笑う。


「何か飛び道具で狙われる危険があったと言いたいのだろう? 確かに奴ら、そういう武器を持っていたからな。もっと巨大なものがあの空飛ぶ船にくっついていても驚きはしないさ。ただ、こっちにはしっかり人質があった。その陰に隠れていれば、余程の血も涙もない奴らでない限りは大丈夫だろうと思ってな。実際、大きな声は言ったよ。肉塊の方は『仲間を回収させてくれ』、巨大船の方は『交渉と対話のために人が降りることを許可してほしい』とな」


「そのあとは?」


「獣人の方は回収されていった。巨大船の方からは、獣人ではなく、私たちとよく似た容姿の人間たちが降りて来たよ。三十人程な。肌の色は白かったし、髪の色は色々だったが……まぁ、それだけだ。獣の頭がくっついているようなことはなかった」


 つまり、巨大船は普通の人間の、そして肉塊の方は獣人の乗り物だった、というわけだ。

 カリハは続ける。


「で、降りて来た彼らから大まかにだが聞いた話によると、人間と獣人は外の世界では対立していて、この島で獣人が我々を襲ったのは人間――彼らの言葉で言う人族ヒュームとの間に禍根があるから、ということらしい。外の争いをこの島に持ってきて悪かった、獣人たちについてはさっさと追い出すから、というような話をしてきた。そこまで聞いて、私は彼らとの詳しい話は港の集落の長老たちに任せてとりあえずこっちに戻って来た。ウラガとミズキが心配だったからな。あとはお前も知っての通りだ」


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