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議長と副議長

 聖夜が佐保の手を引き街を歩いていた。

「佐山。」

 佐保が聖夜に声をかけた。

「あの二人うまくいってんのかな。」

 聖夜が佐保に言った。

「恵美と黒谷君のこと?」

 佐保が聖夜に訊いた。

「ああ。」

 聖夜が答えた。

「大丈夫だと思う。」

 佐保が少しうつむいて答えた。

「そっか。梨那ちゃんと健もかな?」

 明るく聖夜が訊いた。

「きっと…、ね。」

 佐保がためらいがちに言った。

「そうだよな。…、そうだよな。」

 聖夜が少し悲しそうに言った。

「佐山、あっちのほう、綺麗な小川がある。」

 佐保が聖夜の気をそらすように言った。聖夜は少し驚いた顔をした。

「ありがとう。」

 聖夜は小川のほうへ走っていった。


「文月、分かって…。」

 聖夜が呟いた。そこへ啓子が歩いてきた。

「こんばんは。」

 啓子が声をかけた。

「あ、こんばんは。」

「どうしたの?」

 聖夜の元気のない様子に啓子が訊いた。

「失恋。だな。」

「そうなの。私も、失恋じゃないけど、弟に捨てられたみたいなものでね。」

 励ますように啓子が言った。

「え、そんな。」

「でもいいの。分かってたことだから。」

「そう、ですか。」

 啓子の言葉に聖夜は戸惑いつつ言った。」

「そういえば、向こうで一人立ってた子。いいの?」

「えっ?」

 啓子の言葉に聖夜が驚く。

「そう。」

「あ、くそ、そういうことかよ。馬鹿。」

 聖夜は何かに気付いたようで毒づく。

「行ってらっしゃい。」

「ありがとう。お姉さん。きっとお姉さんにも優しい恋人ができるよ。」

 聖夜はそう言って佐保のもとへ走っていった。

「恋人、お姉さんって。私、もう37なのに。でも、できたらいいな。」

 啓子はひとり呟いた。


「行っちゃった。」

 聖夜を見送った佐保はひとり歌を口ずさんだ。歌も終わりに近づいたとき、聖夜が走ってきて、一緒に歌った。

「佐山。」

 呟く佐保の手を聖夜は黙って取った。佐保は聖夜に問いかけるような視線を向け、聖夜は無言でうなずいた。2人は手をつないで街を歩いて行った。

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