副会長と会計
恵美はベンチに座り、貴之はそのそばに立っていた。
「あのさ、恵美さんと健、何はなしてたの?」
貴之は明後日のほうを見ながら恵美に訊いた。
「母と父が結婚しようって言ってるの。でも、私、うまくやれる自信がなくて。反対してるの。それで。」
恵美がうつむきがちに答えた。
「恵美さんなら大丈夫だよ。」
貴之は恵美の前にきてそう言った。
「でも、」
「お母さんもお父さんも愛し合ってるんだろ。反対ってかわいそうだよ。」
言いよどむ恵美に貴之はきっぱりと言った。
「うん。それもそうなんだけど、やっぱりいいよって言いづらくて。」
恵美が目を伏せて言った。
「大丈夫だって。」
貴之は恵美の頭に手をのせて励ますように言った。そこへ敦が歩いてきた。
「お、恵美さんと、黒谷君。」
敦が恵美と貴之に声をかけた。
「あ、健のおやじさん。」
「あ、えっと、お父さん。」
2人が口々に挨拶した。
「え、今めぐみさんなんて?」
敦が驚いたように訊いた。
「お父さん。」
恵美が繰り返した。
「恵美さんにお父さんって呼ばれるなんて。感動だ。」
本当に感動したように敦が言った。
「言えたじゃないか。」
貴之は恵美の頭を撫でて言った。
「おかげさまで。」
恵美は目を細めて嬉しそうに言った。
「これからよろしくでいいのかな?」
敦がおずおずと恵美に問いかけた。
「ええ。」
ニッコリと恵美が言うと、敦はスキップをしながらどこかへ去った。
「あのさ、恵美さん。僕、君のことが好きなんだ。」
敦の姿が見えなくなると、貴之が唐突に言った。
「えっ、あ、あの。」
恵美は恥ずかしそうにうつむいた。それを見て貴之ももじもじした。
「それで、あの…。」
「あの、私も。」
「えっ?」
恵美の言葉に貴之が驚いて訊いた。
「だから、私も、好き。」
貴之は恵美の手を取り、二人は見つめあった。




