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始まりは公園で

 夕方の公園。ベンチ周辺に、高校生男女4人が集まっていた。

「いよいよ明日か。」

 黒髪ストレートの長い髪の女生徒、佐保が言った。真面目で気の強そうな女生徒だ。

「12月25日、毎年恒例クリスマスコンサート、成功させないとね。」

 焦げ茶の髪をカールさせた女生徒、梨那がそれに答えた。可愛らしい小柄な女生徒だ。  

「全くなんだってうちの学校はこんな企画立てるんだろうな。」

 元気のよい精神年齢少し低めの男子生徒、聖夜が言った。

「まあ、聖夜落ち着きなよ。」

 優しげな王子様系の男子生徒貴之が聖夜に落ち着いた口調で言った。

「まあ、別にいいんだけどな。」

 聖夜はそう言い、梨那を盗み見て視線を落としふっと微笑んだ。

「それにしても、健会長たち遅いですよね。」

 梨那は可愛らしく少しふくれっ面をして言った。

「そういえばそうかも。奏と今村君はいつもの如く文化委員長と副委員長で打ち合わせがあるとかって言って二人でいちゃついてるんだろうけど、恵美たちが遅くなるとは。」

 それに同調するように梨那の頬をつつきながら佐保が言った。

「恵美副会長、健と打ち合わせもう少しあるとか言ってたからそれじゃないんですかね。」

 貴之は無駄に王子様スマイルを振りまきながら言った。

「それにしては遅いんじゃないかと。」

 梨那は少しすねたような口調で言った。

「あの二人もいちゃついてるとか。」

 聖夜はおどけるように言った。その瞬間、梨那と貴之が固まった。聖夜は梨那をちらりと見てすぐ視線をそらし、歯を食いしばった。佐保は聖夜に避難の目を向けて言った。

「佐山、冗談やめる。」

「悪かったって。でも、勘ぐりたくも…。」

「佐山!」

 なおも言い募ろうとした聖夜に佐保が叫んだ。

「分かったって。」

 聖夜が納得していないように言った。

 新しく男女2人が公園へと走ってきた。2人手をつないで、男子生徒は女生徒に引きずられるようにしてきた。

「聞いて聞いて聞いて見ちゃったの。ね、怜君。」

 走ってきた茶髪のツインテールの女生徒、奏は4人のほうを見て言った。

「ちょっと待ってよかなちゃん。」

 奏に引きずられてきたわんこ系の男子生徒怜史が言った。

「奏、何を見たって。」

 佐保が訊いた。

「会長と副会長、あの二人生徒会室でさ。仲良くやってたんだよ。」

 奏は面白がるように明るく言った。その言葉を聞いて梨那と貴之は固まり、佐保と聖夜は目を見開いた。

「えっ、奏ちゃん、それって、…、あ、どういう、意味?」

 梨那は少し泣きそうな声で訊いた。

「怜史、どういうことなんだ。」

 貴之は詰問するように鋭い声で言った。

「だ・か・ら、会長と副会長が…、」

 奏が何故分からないかなあというように得意げにいいかけた。

「ちょっと奏、何の冗談で。」

 佐保が険しい顔で言った。

「怜史、お前の彼女冗談きついよ。」

 聖夜は地面を向いて吐き捨てるようにいた。

「かなちゃん、確証のないことは言わないほうがいいよ。」

 怜史は奏の肩に手を回して言った。奏は怜史を見上げて、甘えるように笑った。

「怜君、…分かったよ。」

 2人は見つめあい、奏はそう言った。

「かなちゃん、えらい。」

 怜史は犬がしっぽを振るように笑いながら奏の頭を撫でた。

「もう、怜君ったら、いっつも子ども扱いして。」

 甘えた声で奏は言った。

「子ども扱いなんかしてないよ。かなちゃんが可愛すぎるからだよ。」

「怜君。」

 2人っきりの世界に入り、人目も憚らずいちゃついていた。

「やめやめ。もう、こんなところでイチャイチャしない。」

 佐保が2人に割って入った。

「怜史、デレデレすんなって。」

 聖夜が少し呆れたように言った。

「奏ちゃん、でも、一緒にはいたんだよね。」

 恐る恐る、確かめるように梨那が言った。

「そうそう、とっても仲良くしててさ。」

 奏が明るく言った。

「奏。」

 佐保が鋭くとがめるように言った。

「だってほんとなんだもん。」

 奏は悪びれず、少し膨れて言った。

 梨那は俯いた。そこへ2人の男女が走ってきた。2人は手をつなぎ、男子生徒が女生徒を引っ張るようにしてきた。

「ごめんな。みんな。遅くなって。待っただろ。」

 俺様系の男子生徒、健が言った。

「ごめんごめん。ちょっと打ち合わせ長引いちゃって。」

 黒髪ショートの元気っこ系の女生徒、恵美が言った。

「恵美さん!」

 梨那が毅然として恵美を少し睨んだ。

「梨那ちゃん、どうしたの?」

 恵美は梨那の強い口調と強い態度に気おされた。梨那は恵美の肩をつかんで言った。

「本当に打ち合わせなんですか?会長、健さんと仲良くおしゃべりしてたんじゃないですか!?」

 梨那の言葉に恵美は困惑して言った。

「梨那ちゃん何言って…。」

 恵美の言葉を遮るように梨那が畳みかけた。

「恵美さん、いつもいつもすましていて、私の気持ちも知っていたくせに。最低です。」

 梨那の言動に佐保、聖夜、奏、怜史、健、貴之は何も言えず、黙り込んだ。

「梨那ちゃん、ちょっと待って。」

 どうにか落ち着かせようと恵美が言った。

「恵美さんなんかもう知りません。生徒会の書記も辞任させていただきます。」

 梨那は恵美に平手打ちすると走り去った。恵美は唖然とした。

「えっ、ちょっと雪井。誤解だって。待って。」

 慌てて追いかけようとする健を聖夜が引き留めた。

「やめろよ健。」

 聖夜が強い口調で言った。

「佐山、放っておけないだろ。」

 健は苦々しそうに聖夜に言った。

「聖夜の言うとおりだね。恵美さん放っておいて他の女追いかけるつもりなわけ?」

 きれいな顔を歪ませて貴之が言った。

「佐山君、黒谷君、待って。誤解だって。兄さん、ここは私がどうにかするから梨那ちゃん追いかけて。」

 恵美は聖夜と貴之を止めて言った。

「ありがと恵美。じゃあ、行ってくる。」

 健はそう言うと、聖夜と貴之を押しのけて走り去った。

「おい、健。」

 聖夜はなおも追いすがろうとしたが、あきらめたように戻ってきた。

「恵美、どういうこと?」

 佐保が訊いた。

「むしろ私が訊きたいのだけど、梨那ちゃんどうしたの?」

 恵美が何が何だかわからないというように言った。

「ごめん、佐保、恵美。私が冗談言ったから。」

 奏がしおらしく言った。

「成宮、どういうことなんだ。」

 聖夜が奏に訊いた。

「えっと、だから、その…。言ってもいいのかな。」

 奏が、どうなの?と尋ねるような視線を恵美に向けて言った。

「話す必要ないと思ってたから言わなかったのだけれど、健は私の兄さんよ。」

 やれやれといった調子で恵美が言った。佐保、聖夜、怜史、貴之は絶句した。

「ごめん。」

 奏が手を合わせて言った。

「え、でも、それなら、もしかして異母兄妹?」

 貴之が訊いた。

「違う違う。母も父も同じよ。」

 恵美が手を顔の前で振りながら言った。

「じゃあ双子!?」

 佐保が驚いて言った。

「ええ、そうなのよ。」

 恵美が微笑みながら言った。佐保、聖夜、怜史、貴之唖然として恵美を眺め回した。

「ちょっと待って、それなら奏、知ってて梨那をからかったわけ?」

 佐保が責めるように奏に言った。

「えっと、あー、その。だって梨那ちゃん可愛いじゃない。」

 奏が開き直って言った。

「ふざけんなよ成宮!!」

 聖夜が奏に詰め寄った。

「あ、う、ごめん。」

 奏がうつむいて謝った。

「僕たちがいると邪魔になりそうだから行くね。」

 怜史が言った。

「うん。これ以上いても、佐山を興奮させるだけになるから。」

 佐保が賛成した。

「なちゃん、行こう。」

「うん。」

 怜史は手を差し出し、奏が手をとった。二人で手をつないで歩き去った。

「それにしても驚いたよ。恵美さんと健が双子だったなんて。」

 貴之が驚き冷めやらぬといった調子でしみじみと言った。

「普通分かりませんからね。」

 恵美が少し悪戯っぽく言った。

「文月、明日の司会の打ち合わせ、ちょっと確認忘れてたところがあるから行こう。」

 聖夜が唐突に佐保に言った。

「えっ、そうだった?」

 身に覚えがないといった調子で佐保が言った。

「いいから行くぞ。」

 聖夜が有無を言わさぬ調子で言った。

「えっ、あっ、ああ、そういうこと。うん、行こう。」

 途中で何かに気付いたように佐保が言った。

「あ、じゃあね。」

 恵美がそう言うと、聖夜は佐保の手を取り歩きだした。佐保は手を握られたことに戸惑いつつそのまま歩き去った。


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