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BE DAYS!!  作者: 正葉
5/12

兄さん、夕飯です

5話です!どうぞ

『なるほど、それは大変だ』


部活から帰ってきた俺はそれから特にやることがなかったので、昼御飯を食べ、仮眠をとったり、読書をして過ごしていたら、いつの間にか夜になっていた。

そして、読んでいた本も読み終わってボーッとしていた頃に、バイトが終わった光から電話が来たのである。


どうやら光も部活のことが気になっていたみたいだったので、今日のことを話したところだった。

部活がないと思って、バイトのシフトを入れていたらしいし気になるのは仕方ないか。


『それで?どうするの?』

「明日から勧誘しまくるらしい」


今んとこ、それしかないしな。


『来ると思う?』

「来ないな、絶対」

『絶対なんだ……』


光があははと呆れたように笑う。

この笑い方はこいつの癖だ。長い付き合いなので分かるが、ごまかしや相手の調子に合わせるときに使うことが多い。


「あの部活に入部するメリットがあると思うか?」

『ないね』


……聞いたのは俺だけど、即答するこいつもどうかと思う。


「はぁ……どうしたもんかね……」


新入生なんて、特に高校の部活に期待を抱いているはずだ。そんなやつらが、何をするかわからない文芸部になんて、入りたいとはまず思わないだろう。


「そうだ、お前が勧誘したら、女子部員増えんじゃねーの?」

『そんな子が、部長に耐えられると思うかい?』


お前、部長をなんだと思ってんだよ。同感だけど。

俺も言ってみただけで本気にはしてない。


「だよなぁ」


さすがに無茶だよな。

にしても、こいつには謙遜というものがないのか。


『まぁ何をするにしても、対策は考えないとね』

「それ考えるのって、先輩たちの仕事なんじゃ……」


なにか思い付く自信もないし。

ひたすえあ勧誘!っていう誰でも思い付きそうなものしか出てこない。


『ヒョロ先輩はともかく、部長や沙織先輩がまともなこと考えると思う?』


部長は絶対無茶なこと言うし、椎名先輩は笑顔で無茶なこと言うな。

あ、どっちも無茶だ。


「じゃあ、ヒョロ先輩に任したらいいと思うけど」

『あの人、絶対部長に任せようって言うでしょ』

「だよなぁ……」


ヒョロ先輩は基本、文芸部のことを部長に委ねている。


「立夏が作った部活なんだから、立夏の思うようにやればいいんだよ」という、保護者みたいな方針らしい。


『何をするにしても、俺たちが今考えてもしょうがないか』


そう言った後、光は、んーと伸びをしたような声を上げる。

こいつも、働いて疲れているのだろう。俺も今日は、色々あって疲れた。


「じゃあ、明日にするか……」

『そうだね、じゃあまた明日』

「おう」


切られた電話を机に置いたら、ふとあくびが出た。

寝すぎて、逆に眠いな。夜寝れないよりかはましか。

っと一息ついたところで、コンコンとドアがノックされた。


「兄さん、夕飯です」

「おう、わかった」


十川結実とがわゆうみ、俺の4つ年下の妹だ。


「志田さんとはもういいんですか?」

「……もしかして待ってたか?」


だとしたら悪いことしたな。


「いえ……」


そう言って、結実は少し顔を伏せる。

……悪いことしたな。



「おにぃ、遅いよー!」

「あー悪いな」


リビングに行くと、幼女が食卓に座っていた。

この出された食事を前にうずうずしてるのが、もう一人の妹の可鈴かりんだ。

小学三年生である。


「親父は?」

「仕事、遅くなるって」

「そっか」


そして、母親の十川理恵子とがわりえこ……これ以上説明しようがないな。

俺を生んだ親であるが、ビックリするほどなにもかも、俺に似ていない。

息子の俺が言うのもなんだが、年よりは若く見える。

なににしても、俺の母である。


「じゃあお母さん、また出ないと」

「おかーさん、おしごとなの?」

「えぇ、だから可鈴、お兄ちゃんたちと良い子にしてるのよ」


言っても、もう飯食って風呂入って寝るだけだけどな。


「はーい」


そんなことを可鈴は考えているはずもなく、元気よく返事をする。

我が妹ながら、実に愛くるしいものだ。


「武久、結実、お願いね」

「はい」

「あいよ」


俺たちがそう返事をすると、母さんは仕事に出ていった。

母さんは、いわゆる、キャリアウーマンというやつで、一年中忙しくしている。

親父も忙しいらしいので、食事はこうやって兄弟3人でとることが多い。


「じゃあ、食うか」

「いっただきまーす」


俺がそう言った瞬間、待ってましたと正面にいる可鈴が食べ始める。

どうやら、余程腹が減っていたらしい。


「いだだきます」


可鈴とは対照的に、結実も食事にありつく。

隣り合わせの二人が食べ始めたのを確認して、俺も揚げたての唐揚げに箸を伸ばす。

……ちょっと冷めてるけど、うまい。

やっぱり大皿に、唐揚げがいっぱいあったら幸せになるよなぁ。

唐揚げが世界平和に、繋がる気がする。


「おにぃは、おへやでなにしてたの?」


勢いよく食べて、少し空腹が満たされたのか、一端落ち着いた可鈴が唐突に聞いてくる。


「どうしたんだ急に?」

「おねぇがおにぃ呼びに行ってから、かりんずっとまってたから」

「どれくらい?」

「えっとね、じゅ……「ほら可鈴、お野菜も食べないと」……え、あ、うん」


結実が可鈴の声を遮るように、声を被せる。

俺に気を遣わせたくないのか。あるいは、嫌われているのか、真意は分からない。


「光と電話で話してたんだよ」


渋々と結実の言われるまま、サラダをむしゃむしゃと食べている可鈴に、諭すように言う。

可鈴は光に割となついている。多分、俺より。


「ふぁりんもふぁなひたはったー」(訳:かりんもはなしたかったー)

お前は草食動物か。ちょっとずつ食えばいいのに、なんで口いっぱいに含んじゃうんだ。

フグみたいになってるぞ。あと食べながら話しちゃいけません。なに言ってるか、分からんし。


「ほら、マヨネーズついてる」

「んー」


こんな面倒見の良い姉と世話のかかる妹の図を目の前にして、何故だが癒しを感じてしまう。

毎日のように見ている光景のはずなのに、妙な距離を感じる。


「結実、あんま俺に気を使うなよ」

「……はい」


こんなことを言っても、意味はないと分かってながら、それしか言えない自分に嫌気が差す。

結実とはこんな感じでぎこちない。

これは、結実が中学に上がった頃からだ。


俺と結実は血が繋がっていない。


具体的に言うと、母さんと親父が九年前に再婚した時、親父の連れ子が結実だった。

もう一人結実には、姉がいるらしいが、親父の前の奥さんが引き取ったらしいので、会うことはないだろう。

結実も姉のことは記憶になかったらしい。

なので、可鈴だけはれっきとした母さんと親父の子供ということになる。


この事実を、結実が知った。いや、母さんが結実に伝えた時から、俺から距離を置くようになった。

敬語もその一つだ。

まぁ、どこの兄妹もこんな距離感な気もするので、不満もないんだが。


かくいう、俺は母さんと親父の再婚のことを覚えていたので、結実みたいにショックはなかった。

仮に覚えてなくても、気づいていただろうとは思う。

……顔、死ぬほど似てないしな。


「じゃあ、洗い物は俺がするわ」

「いいです、私がやります!」


晩飯を三人とも平らげたので、食器を台所に持っていこうとすると、案の定、結実が俺の手を止める。

こうなるとは思ったが。


「昨日はお前がやったろ?」


一昨日もその前もだけど。


「だから、たまには俺が……」

「大丈夫です。私がやりますから」


結実はそう言って、食器を台所に持っていく。


「あ、そう」


そう言った、俺の声は聞こえてないだろう。


「すぅーすぅー」

「……お前は自由か」


可鈴の方を見ると、空腹が満たされて眠くなったのか、それはそれは気持ち良さそうに寝ていた。

……部屋、戻ろう。

















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