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BE DAYS!!  作者: 正葉
11/12

無理だろ、これ

やっと動き出した、かな?

毎度ながらお久しぶりです

 恋愛をしたことがない。


 佐藤さんの相談を受けるうえで、間違いなく俺が一番不足していることだ。そして、これは絶対に不足していてはならないだろう。


 「無理だろ、これ」


 寺島と別れた後、新入部員を散策、及び校内ぶらぶらしていると、相談のことを考えてしまう。というか考えなければならないという衝動に刈られる。形はどうとはいえ、引き受けてしまった以上はどうにかはしないといけない気がする。


 しかし、なにも思いつかない。

 

 第一、成功する気がしないものをどうしろと言うのだ。佐藤さんが悪いわけではない。ただ、俺が何をしたというところで、結果が変わるわけがない。まず、恋愛経験が皆無の俺が何をできる訳じゃない。

 詰まるところ、何をしたらいいかわからない。 


 「随分、辛気くさい顔をしているのね」

 「あれ、こんなとこで、なにしてんの?風見さん」

 

 なぜか、ゴミを見るような目でこちらを見ている風見さんがそこにはいた。


 「はぁ……、図書館から出てきた人間に対してその質問は愚問としか言いようがないわね」

 

 俺、そんな罵られるようなこと言っただろうか。厳しくない?

 

 どうやらふらふら歩いているうちに、図書館近くに来ていたらしい。


 「あなたの方こそ、こんなところで何をしているの?まさか待ち伏せ?」

 「違うし!そんなあからさまに防御体制に入られると、さすがに傷つくんだけど……。ただ、部活の勧誘のためにフラフラしてただけだよ」

 「そう」


 興味ないんかい!冷静に考えたらないだろうけどな!


 あ、そうだ。恋愛のことなら女子である風見さんに聞けばいいじゃないのか?いや、しかし、風見さんはそういうの寄せ付けない雰囲気があるからなぁ。

 よし、一応聞いてみるか!


 「あの、風見さん」

 「何かしら?」

 「風見さんって恋したことある?」

 「は?」


 うわー、マジでなに言ってんのこいつって顔向けられてるー。


 「急になに?」


 やっぱ、そうなるよな。5秒前の俺どうかしてたわ。だって、マジでなにしていいか分からなかったし。


 「いや、すいません。忘れてください……」

 「急に、なにかと思えば……。口説くならもっとマシな切り出し方をしなさい。薄情そうなナンパ男並の浅はかさだわ」

 「聞き方変えます。じゃあ、告白されたことは……」

 「さっきから、なんのつもりなの?」


 風見さんのいかにも人を軽蔑した目線が刺さる。仕方ないことだよなぁ。かといって、訳を話すのもダメだし……。


 「ちょっと訳がありまして……、答えていただけるとありがたいのですが……」

 

 風見さんが大きくため息をつく。そして、呆れ、いやなにか仕方なくという感じで口を開いた。


 「特にそういうのはないわ。強いて言うなら、中学生の時に下駄箱に好きです。付き合ってくださいって書かれた紙切れが入ってたことくらいはあったかしら」

 

 「ちなみに、その紙切れは……」


 答えは分かっているが、一応聞く。


 「捨てたわ。いたずらでしょ?」

 「その判断は間違ってないと思うけど、決めつけるのはどうだろう」

 「悪いかしら?」

 「いえ」


 なんの屈託もないキョトンとした顔に言葉失ってしまう。彼女に悪意とかは全くないのだろう。


 「そもそも、言いたいことも直接言えないような人なんかにハナから興味ないわ」

 

 そう言った風見さんは後ろ髪を髪ではらう。

 彼女には多分、素直なのだろう。自分の信じていることを真っ直ぐ信じて曲げない。一本の線がハッキリあって凛としている。そして、あまり他人には興味がない。


 「なに?」


 「いや、すごいなと思って」


 「まぁいいけど。聞きたいことの答えはこれでいいかしら」


 「うん、ありがとう。参考になったよ」


 「あ、いたいた武久!……と風見さん?」


 鞄を二つ持った光がこちらの方へ走ってくる。ふらふらしてるうちに部室を閉める時間になったのだろうか?そういえば、図書館からも人が出てきてるな。

 

 「なんで二人が一緒にいるのさ?」

 「たまたま会ったんだよ」

 「じゃあ、私は帰るわ」


 そう言って、彼女は校門の方へ歩きだす。

 

 「また明日……」


 この声は届いてないのか、風見さんは振り向かなかった。


 「いつの間にか、仲良くなったんだねー」

 「そんなんじゃない……」


 ったく、誰のおかげでこうなったと思ってんだよ……。いや、こいつが悪い訳じゃないけどさ。というかこの件に悪者はいないはずだ。強いて言うなら、柊ぐらいか、俺視点からでしかないけどな。


 「武久が転校早々の女の子に対して、手をつけるようなことしないか。はい、これ鞄」


 「ありがとうだけど、お前の表現の仕方は問題あると思う」


 光から鞄を受けとる。ほとんどの教材は教室に置いてるので中身はほとんどない。軽いものだ。


 「部室閉めるって?」


 「うん、結局あの話しかけてきた子達を部室に連れってたから今日はいいんじゃないかって」


 「あれ?お前、あの後部室戻ったの?」


 「ちょうど一年生だったし、ついでに連れていこうと思ってさ」


 ついでとは、また随分な扱いだな……。悪意がないから、厄介なやつだ。


 「入りそうなのか?」


 「どうだろうねー。なんか部長たち話してたっぽいから分からない。部室戻ってきたとき、なんか睨まれたし。その後は普通に会話したけど、その前は大事な話してたみたい」


 大事な話?なんだろう。進路とかそういうことだろうか。でも、それで睨むか?そこまで気にはならないけど。光そこまで気になっていないようだ。

 

「それで、椎名先輩が戻ってきたから、帰ることになったんだ。武久も一緒にいると思ってたよ」


 「はぐれたんだよ」


 あーと光が納得したような顔をする。さすが文芸部員、理解が早くて助かる。


 「ま、とりあえず帰ろうよ」


 「おう」


 すっかり空は茜色に染まり校門へ行くとぞろぞろと生徒たちがそれぞれの帰路へとつく。歩いて駅の方へ行く者、自転車で友達とじゃれあいながら帰る者、逆に外からの干渉をイヤホンやヘッドホンなどで一切遮断している者、みんなこの青春の1ページにもならない瞬間が意外に大事なのかもしれない。


 「やっぱ、直で伝えないとだよなぁ」


 「なんか言った?」

 

 「なんでもねぇよ……」


 俺もこのぐちゃぐちゃに書かれた落書きのような青春の1ページをどうにかしないといけない。難しいが、もう答えは決まった。





 


 

 

 

  


 


 


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