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「フッ。無知なやつだ。こいつらは隼だよ。」
振り帰った視線の先、遥遠くに紫の人影が遠ざかって行くのが見えた。
おそらくあいつが言ったのだ。この二十一世紀に不釣り合いな格好をした。
それにしても足が早かったのだろうか。声がしたとたんに振り向いたのだが。まあ、俺がボーっとしていたかもしれないが。
俺の視線に気づいたのか紫の人影は立ち止まると。
「私に何かあるのか、駒野くん」
「えっ!」
なぜ、こいつが俺の名前を知っているのだ。
「驚くこともないだろう、普段近くにいるだろう。駒野裕則くん」
おいおいおい、知らないぞ、こんな奴。目の前のコイツはこんな格好している奴だぞ。「ゲームから出てきたのですか?」って聞いてやろうかと思う格好だ。
濃い青紫のローブは肩から胸にかけて大きく開いて、肩にはふわりとした同色の布を纏いっている。裾はスカートのように大きく開いていて靴だけが下から見えていた。って、靴は白い運動靴ですか?そこだけおかしくありませんか?
左手には身長より少し短めの棒を持っている。多分杖なのだろう。先に卵型の薄い青色をした珠が付いており、それを銀色の螺旋が包み込む。その先には三角柱の尖った槍先みたいな物が、手元は金色の細かな絵柄が入っている。全体に派手ではないがずっしりとした装飾が飾られている。
髪型は前髪が切り揃えられ、耳の前を脇の髪が細く、長く、垂れている。後ろの髪の毛の大部分は頭の後ろで大きくまとめられている。そこからさらに端が腰まではあり、しなやかな黒髪が風に揺られて背中を撫でていた。
やっぱり知らない奴だ。俺の名前はきっとコイツが魔法でも使って知ったのだろう。そんなわけないか。ははっ。何処かで偶然知った名前をコイツが覚えていたのではないのか。じゃあ、何処で知ったんだろうか。
モヤモヤと考えているうちに、少女は居なくなっていた。
部屋に戻ると時計は七時半を回っている。
「学校に遅れる!」