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第10話(最終話) 私たちの新しい朝

最終話です。 嵐は過ぎ去り、穏やかな朝がやってきました。 主人公と息子が掴んだ、新しい日常をご覧ください。


 カーテンの隙間から差し込む柔らかな朝日で、私は目を覚ました。


 隣の部屋から、目覚まし時計を止める音が聞こえる。かつてのように、夜中に義父の呼び出しブザーで叩き起こされることも、酔っ払って帰ってきた健太の物音に怯えることもない。


 なんて静かで、穏やかな朝なんだろう。


 私は大きく伸びをしてベッドから起き上がり、キッチンへと向かった。


 コーヒーメーカーのスイッチを入れると、部屋中に香ばしい香りが漂い始める。以前は「介護臭がする」と健太に文句を言われ、消臭スプレーを手放せなかったこのリビングも、今は私の好きなアロマとコーヒーの香りで満たされている。


「あ、ママおはよー。いい匂い」


 パジャマ姿の春斗が、あくびをしながら起きてきた。  その顔色は良く、以前のような影はない。


「おはよう、春斗。今日は目玉焼き、半熟にする?」


「うん! あとウインナーも!」


 たわいない会話。けれど、それが何よりも愛おしい。  健太がいた頃、食卓は常に緊張感に包まれていた。彼が機嫌を損ねないよう、春斗も私も息を潜めるように食事をしていたのだ。  でも今は、笑い声が最高の調味料だ。


 朝食を終え、春斗が登校の準備を始める。  ランドセルを背負った息子が、玄関で靴を履きながら振り返った。


「ねえママ。僕たち、もうずっとこの家にいられるんだよね?」


 春斗は時々、ふと不安そうに確認することがある。心の傷は完全には癒えていないのかもしれない。  私はしゃがみ込み、春斗の目線に合わせて力強く頷いた。


「もちろんよ。ここは春斗のお家。誰も奪ったりしないわ」


「そっか。……へへ、よかった」


 春斗が安心したように笑う。


 そう、法的な手続きはすべて完了した。


 健太の「相続放棄」により、彼は遺留分を主張する権利を失った。そのおかげで、義父の遺言通り、家と土地はすべて春斗のものになり、私がその後見人として管理することになった。


 借金の問題も、義父の遺産(わずかな預金)で相殺し、実家への返済も債権者である私の両親と相談して、無理のない計画で進めることになっている。


 皮肉な話だ。健太が自分の保身のために行った「相続放棄」が、結果として私と春斗に、借金の心配のない綺麗な家と、完全なる自由をプレゼントしてくれたのだから。


「行ってきます!」


「行ってらっしゃい、気をつけてね」


 春斗が元気よくドアを開け、光の中へと駆け出していく。  その背中を見送りながら、私はふと、どこかの空の下にいるかもしれない元夫のことを思った。


 今頃、彼はどこで何をしているのだろう。  寒さに震えているのか、後悔に苛まれているのか。


 けれど不思議と、もう怒りも憎しみも湧いてこなかった。彼という存在は、私の中で完全に過去の「異物」となり、記憶の彼方へと消え去っていたからだ。


「……ありがとう、健太」


 私は青空に向かって、小さく呟いた。


「あなたが最低のクズで、最高の馬鹿でいてくれたおかげで、私は今、こんなに幸せよ」


 私は深く息を吸い込み、新しい朝の空気を胸いっぱいに満たした。


 さて、私もそろそろ準備をしよう。  再就職したパート先での仕事が待っている。自分の力で稼ぎ、自分の足で立ち、息子を守り育てる。そんな当たり前の毎日が、今の私には輝いて見える。


 ガチャリ、と鍵をかける。  その音は、新しい人生の始まりを告げる、希望の音色だった。


 私の名前は美咲。  35歳、シングルマザー。  人生は、ここからが本番だ。


(完)

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!


理不尽な夫に虐げられていた主人公でしたが、皆様に応援していただいたおかげで、無事に幸せを掴むことができました。 自滅した元夫も含め、因果応報な結末を楽しんでいただけていれば幸いです。


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これからも、皆様に楽しんでいただける物語を書いていきます。 本当にありがとうございました

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