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第1話 用済み宣言

ハッピーエンド確約、全10話の短編連載です。 全話一挙掲載しました。最後までノンストップでお読みいただけます!


義父の介護を押し付けられた挙句、用済みと捨てられた妻が、元夫の「浅はかな法律知識」によって大逆転するお話です。


スカッとしたい方、ぜひ最後までお付き合いください!


 私の名前は美咲みさき、35歳。

 小学5年生になる息子・春斗はるとと、夫の健太けんた、そして義理の父との四人暮らしをしていた専業主婦だ。


 私と義父は、初めて会った時からどうも折り合いが悪かった。

 頑固で昔気質の義父とは性格が合わず、同居の話が出た時も「とてもじゃないけど無理」と断り続けていたのだ。


 けれど5年前、義父にどうしても介護が必要な状況になってしまった。


「美咲、頼むよ。親父の家もだいぶ古くなってるし、俺たちが移り住んで二世帯住宅に建て替えればいいじゃないか。将来は息子の春斗のためにもなるし」


 健太にそう説得され、だいぶ悩んだ末に、将来春斗がこの家を継ぐことになるのなら……と、自分を納得させることにしたのだ。


 まあ、予想はしていたけれど、夫の健太は全くの役立たずだった。

 それどころか、介護疲れでふらふらの私に向かって、家事がおろそかになっていると文句ばかり垂れる始末。


「お前の父親の面倒見てるんだから、少しは手伝ってよ」


 いくらそう言っても右から左。「俺は仕事で疲れてるんだ」と面倒くさそうな顔をして、スマホでゲームに興じるだけ。


 そんな地獄のような生活が5年続き――先日、ついに義父が鬼籍に入った。


 不謹慎かもしれないけれど、正直ホッとした。「これでようやく終わったんだ」と、肩の荷が下りた気がした。

 義父の葬儀も終わり、ようやく一段落した、その夜のことだ。


 リビングで一息ついていた私に、健太が突然とんでもないことを言ってきた。


「美咲。お前とは離婚だ。とっととこの離婚届にサインして、春斗連れて出ていけ」


「……え?」


 思考が停止した。

 あまりに唐突で、文脈が理解できない。

 目の前に突きつけられた緑色の紙切れと、ニヤニヤと笑う健太の顔を交互に見る。


「ちょっと、どういう事よ? なんなの突然」


 虚をつかれたが、次第に怒りが湧いてきて声を荒げてしまう。

 けれど健太は、そんな私を鼻で笑った。


「はいはい、別に突然じゃないから。親父の介護がいらなくなったら、お前とは別れようと思ってたし。ほんと、介護おつかれさーん」


 ――なんだ、その舐めた言い方は。


「なに……? 要は、介護ヘルパー代わりにお情けで結婚生活を続けてたってこと?」


「そうそう、わかってるじゃん。もうね、親父の下の世話してるお前を見てるとさ、汚いっての。もう女として見れないんだよね。まあ年のせいもあるかもだけどな」


 ブチッ、と頭の中で何かが切れる音がした。


 なんだと? 歳だと?

 それは百歩譲って認めてやってもいいが、お前の親父の汚物を処理していた私を汚いだと? よくそんなことが言えたな。


 私は拳を震わせながら、健太を睨みつけた。


「あんたの親父の為に、女も捨てて尽くしたこの5年は無駄だったってわけね」


「いやいや、すごい役に立ったし、親父も喜んでただろう? 感謝してるよ、感謝」


 口先だけで心がこもっていないのが丸わかりだ。本当に頭にくる。


「そんじゃ、早くサインして出て行ってくれよ。俺はこの家で、新しい女と暮らすんだからよ」


「……は? 健太、あなた……浮気していたの?」


「ああ、そうだよ。悪いか?」


 健太は本当に何の悪気もない顔で、キョトンとして聞いてくる。

 悪いに決まっているだろうが。


 倫理観のかけらもないその態度に、私の心は急速に冷えていった。怒りを通り越して、呆れと軽蔑しか残らない。

 私も、こんな男とはいつか別れてもいいと思っていた。

 でも、もう無理だ。一秒たりとも顔も見たくない。


「わかった……離婚してあげる」


 私は冷たく言い放つ。


「でも、財産分与と慰謝料はきっちり貰うからね。それと春斗は私が引き取る。養育費もきっちり払ってもらうわよ」


 それは健太も覚悟していたのだろう。少し不貞腐れたように口を尖らせた。


「はいはい……財産って言っても、俺らの定期預金500万くらいしかないし。半分の250万に、慰謝料は200万も出せばいいよな? あと春斗の養育費も毎月出すから心配するな」


 相場からすれば決して高くはない金額だ。

 だが、健太はさも「大金を恵んでやる」と言わんばかりの態度をとる。


「お前みたいなババアに出し過ぎだが、仮にも夫婦だったんだしな。俺の情けをありがたく思えよ」


 何が情けだ。財産分与も慰謝料も養育費も、出すのが当たり前だろうが。

 もっとむしり取ってやりたい気持ちはある。けれど、今は一刻も早くこのクズと縁を切りたい。これ以上揉めて、離婚が長引く方が苦痛だ。


「わかった、その条件でいいわ」


 私が頷くと、健太は用意周到に別の紙を取り出した。


「よし。じゃあ後で『無し』とか言わないように、この念書にサインしてくれ。俺とお前用、2通ともな」


 こいつ……こんな物まで準備していたのか。

 あまりの段取りの良さに、ムカつくやら呆れるやら。

 私は念の為に念書をじっくりと読み、内容に不備がないことを確認してからサインをした。


「よし、じゃあこれで離婚成立だな! いやースッキリしたな!」


 健太はあからさまに上機嫌になり、伸びをした。


「お互い新しい人生を歩むとしようぜ。まあ、お前みたいなババアはもう人生終わりなのかもしれないけど、春斗もいることだし頑張れるだろ?」


 どうしてここまで人を馬鹿にできるのだろう。

 それとも私が気付かなかっただけで、元々こういう性格だったのかな。


「おい、早く荷物まとめて出て行ってくれよな」


「わかったわよ。もう疲れたから明日からでもいいでしょう」


 少し不満顔だが、健太も頷き、この日の話し合いは終わった。


 ――この時、健太はまだ気づいていなかった。


 彼がこれから実行しようとしている「とある計画」が、自らを破滅させる引き金になることを。



読んでいただきありがとうございます。 今は勝ち誇っている元夫ですが、彼が切ったカード『相続放棄』は、とんでもない自爆スイッチでした。


次話、早くも元夫の顔面が蒼白になります。 浮気相手と共に地獄へ落ちていく様を、ぜひご覧ください。


面白そうと思っていただけたら、ブックマーク登録をしていただけると嬉しいです! (全話投稿済みですので、サクサク読めます!)

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