とらわれた女
同名の登場人物が出てきます。平仮名とカタカナで書き分けていきます。4
その近辺一体にはヨダカと呼ばれる盗賊が跳梁跋扈していた。
いわゆる裕福な豪族のもとに現れほとんどの者を皆殺しにして物品を奪う悪辣な盗賊団だ。
そして、ヨダカをとらえたものには褒美を取らすと国司よりのふれがあたり一帯のそれなりの有力者に届けられた。
そして、ある村長が縄を打たれた者を引きずって国司の館にやってきたのはそれから数日後のことだった。
庭先に通し、国司がそのものを改めることになった。
半白になった髪をすり切れた冠で隠し継ぎの当たったぼろぼろの着物を着た男が立っていた。
その背後にも似たり寄ったりのぼろを着た男たちがずらりと並んでいた。
「お達しに従いました」
そう言われて縄を打たれている相手を見た。
「これは?」
「よだかを連れてきました」
そう言われたが、ヨダカと呼ばれる盗賊から命からがら生き延びた者たちの証言とその縄を打たれているものの人相はかけ離れている。
よだかと言われている盗賊は細面で切れ長の目をしているという。
しかし目の前の者は丸顔にドングリ眼だった。
鼻筋も通っており、酷薄そうな薄い唇をしているという。
しかし目の前の者はちんまりした鼻にぽってりとした大きな唇をしていた。
そして何より。
「女だよな」
薄汚れた生成りの着物を着た波打つ髪をくくっただけの粗末ななりのまだうら若い女だった。
「間違いございません、お前名を名乗れ」
女はいやそうな顔をして名乗った。
「よだか」
ブチ切るようにそう言った。
「このものはどのような盗賊働きをしたのだ?」
「盗賊? これは機織りと山で柴だのキノコだのを取ってくるのを生業にしておりますが、葛をとってきて糸をとる仕事もしております」
「それは、ただの村の女だろう」
「しかし、ヨダカは盗賊だとそちらがおっしゃっているのでしょう」
「とにかく間違いだ、恩賞など出せるか」
「しかし、そちらがよだかをとらえよと申したのでは」
「ただの村女をとらえろとは言っていない」
「しかし、盗賊と分かった以上村に置いておくわけには」
「いや、だから盗賊ではないと」
まったく話がかみ合わない。よだかという女は疲れた顔をしてただうつむいていた。
そしていい加減面倒くさくなったのだろう。
「もういい、この女を牢につなげ」
そう言い放った。
さすがに驚いたのか女が何とか逃げようともがき始めたが多少憐れむ目をしていたが。国司の部下たちは女を引っ立てた。
同名の登場人物が出てきます。平仮名とカタカナで書き分けていきます。