ひねくれカウント、それでも
文化祭について話し合いが始まった。
文化祭の実行委員が、なにがしたいか、についてホワイトボードに書き込む。
▪️メイド喫茶
▪️お化け屋敷
▪️すごろく
▪️優雅にお茶
▪️ミニオリンピック
多数決で決めることになった。
僕はミニオリンピックがかなり気になっている。
結果は
▪️優雅にお茶。
(なんだそれ。)
案を出したのは中野という男子生徒、クラシックをかけて、紅茶と洋菓子を楽しむというものらしい。
とりあえずやることは決まり、3限目が終わった。
帰りのホームルームが終わり、教育相談だ。
僕は待機室で、弁当を食べ、約40分後、自分の番になった。
「失礼します」
「宇田くんよろしく」
「よろしくお願いします」
「宇田くん、このクラスはどう?先生から見ると、渡辺くんとかと仲が良さそうで、楽しんでいるようには見えるな」
「そうですね、渡辺くんとは仲良くしてもらってます。」
「良かった。じゃあさっそく進路のお話から…」
進路についての話が進んだ。教育相談は進路相談が主だろう。
しかし、僕には話したいことがある。
「じゃあ、少しずつ勉強をしていきつつ、という感じで」
「はい、ありがとうございます。」
「今日やったアンケートに、「性格について」って書いてあったんだけど、お話できる?」
ついにこの話題だ。
まあ、自分で書いて、仕掛けたようなものだけど。
「はい、実は僕、ひねくれたような視点で考えちゃうことがあって」
「なるほど、例えば?」
例えば…あまり言いたくないが、悩みでもあるので
「例えば今日、電車でモテるためには見た目より中身だって話している人がいて、その時心の中で、そんなのモテない人の言い訳、負け惜しみだろうって思っちゃったんです。」
「ふふふ…かなり辛辣だね」
「他にも自分には関係ない人なのに、その人に対して嫌味混じりな発想をしてしまったり、」
(あっ、聞かれてもいないの話してしまった。)
「そうなのね、でも宇田くんは口にはしていないんじゃない?」
「それは、そうかもしれません。」
「じゃあいいじゃない。思うだけなら自由だよ。」
「しかも、自分であんま良くないなって気づけているし、相手を傷つけなければ、なんも問題ないと思うな。」
僕は言葉がでない。
それを察してか、先生は話を始めてくれた。
「誰しも意地悪な発想はしてしまうと思うの。それが出来なきゃ優しさは生まれないと思う。」
(優しさ…)
なんだかよく分からない
実際は、構図としては、僕は言われっぱなしだ。
でも、嫌な感じはしない。
「優しさの裏には、良くない発想が絶対にあると思うの。相手への意地悪を避けた結果、優しさに繋がる。それが綺麗に、宇田くんには出来ている気がする。」
「もし宇田くんの思う、ひねくれたことを考えたら、先生に教えて?さっきの見た目より中身のはなし、なんだかクスッときた。」
「分かりました。」
「なんだか、今まではこういう自分が嫌いでしたが、このままでもいいのかもって思えました。」
(どっからか持ってきたような言葉だな。)
先生は頷いて聞いてくれている。
「ひねくれたままでいようと思います。」
「ふふっ最高」
「他には悩みとかはない?クラスのこととか」
「はい、大丈夫です。僕のお話を聞いてもらってありがとうございました。」
「話してくれてありがとね」
「ありがとうございました」
僕は教室を出た。
自分で、話すのが下手だなと思った。
心の中ではあんなにひねくれた考えができるのに。
言葉が沢山出るのに。
(僕のひねくれた考えが、優しさに繋がっている…)
ちょっと自分が好きというか、嫌いでは無くなったというか、認めることができたような気がする。
多分これからもひねくれた、複雑な気持ちで物事を見ることがあるだろう。
それでもそれは、先生の言う通りに変わるかもしれない。
(まずは会話の練習だな。テンプレみたいな言葉しか出てなかった、恥ずかし)
ひねくれカウント6