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竜血少年は、力加減が難しい  作者: moai
始まりの儀式
9/39

4-1



翌朝。




レイは目覚めると身支度をする。


そして、昨日マリーから受け取った母の形見であるペンダントを手に取り、ジッと見つめた。




(透明で、綺麗だなぁ……)




窓から差し込む朝日に石をかざすと、石の中に無数の色彩が静かに浮かび上がった。


その光達は、石の外に光を映し出す訳でもなく、石中で静かにたゆたっている。


角度を変える度に表情変える光に、レイは目を奪われた。




(この模様は……よくわからないけど)




石に刻まれた金色の模様。何か意味があるのかもしれないが、レイは深く考えない事にした。


手のひらに乗せた石からは、昨日も感じたほのかな温もりと、鼓動のようなものが伝わってくるような気がした。




(いやいや……石が生きてる訳ないでしょ)




感じた温もりについて、自分でツッコむレイは、小さく首を振った。


だが、その不思議な感覚は、何故か心を落ち着かせてくれた。




『肌身離さず、身につけていてほしい』––––




マリーから聞いた母親からの言葉の通り、レイは常に身に付けておくと心に決め、早速ペンダントを首に掛けてみる。


そして、部屋の隅にひっそりと置かれた使った事の無い母の鏡台の前に立ち、自分の姿を映してみる。




(……何、浮かれてるんだ、僕)




鏡に映る頬の緩んでいる自分を見てそう思ったレイは、スッと表情をいつもの無表情に戻すと、服の下にペンダントを仕舞い込んだ。




それでも、いつもと違う物を付けると、少し気持ちが浮き足立つ。




レイは、気持ちの高まりをそのままに、自室を出て階段を降りた。




降りた先にはいつものリビングが広がる。


いつもの空間に一歩足を踏み入れた瞬間レイは、いつもと心地が違う気がした。




(いつも通りだけど、いつもと違う……?)




嫌な気は全く無い。むしろ、優しく包み込まれるような感覚。


だが、見られているような、話しかけられているような…レイは不思議な感覚を覚える。




(……なんだろう?)




レイは辺りを見渡し、いつもの部屋で感じるこの”違和感”の原因を探した。


その時、ガチャリ、と玄関が開かれる。




「あら、レイ! おはよう!」




開かれたドアから中に入って来たのは、作業用の軽装に身を包んだマリーだった。


マリーは、レイと目が合うなりパッと笑顔を見せる。


レイもその笑顔に釣られて微笑む。




「マリーさん、おはよう」


「明日は儀式の日だけど、今日の畑、仕事手伝って貰うわよ~!」


「もちろん」




昨晩、マリーに手伝いを頼まれたレイは、二つ返事で承諾をしていた。


今日は、新しい野菜の苗を庭に植える日。


広い庭の作業をマリーひとりでこなすのは大変な事だった。


それを理解していたレイは、子供の頃から何度も一緒に畑仕事を手伝っており、頼まれて断った事は一度もなかった。




「午前中には終わらせちゃいましょう!」




マリーが威勢よく言うと、レイは大きく頷いた。




マリーとレイは、玄関を開けて外に出る。すると気持ちの良い朝日が二人を迎えた。




花々の甘い香りが、風に乗って二人を包み込んでくる。


土の匂い、葉のざわめき、小鳥の鳴き声––––全てが、レイの心を満たしていった。




レイはゆっくりと深呼吸をして、この空気を胸いっぱいに吸い込む。




(よしっ)




レイは気合を入れる。






そうして、作業が始まった。






マリーは、井戸場で大量の野菜の苗にたっぷりと水を含ませ、庭へと運び込む。その手際の良さは流石だった。




その間、鍬を使い土を掘り起こし、山と谷を作るレイ。


何度も手伝っていた事もあり、レイも慣れた手つきで畝を作っていた。




レイは、黙々と畝を作って行く中、部屋の中で感じた感覚を覚える。


まるで誰かが、喜んでくれている気配。


それがまた、身体を軽くしてくれているようで、気付けばレイも驚く程順調に作業が進んでいった。




(この感じ……なんなんだろう)




レイがそう思っている中、服の下に忍ばせているペンダントがキラリと光っていた。




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