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2-3



ギルミアに言われ、レイはびくりと身体を震わせた。




ゆっくりと頷いて見せると、呆れたと言わんばかりの表情をギルミアが見せる。




「お前、セントラルの人間か。奴等は外に出ないから、森の特性を知らない者が多いんだ」




図星のレイは、何も言えずにロリエンとギルミアを交互に見た。


そんなレイにロリエンはふふと笑うと、ゆっくり口を開いた。




「セントラルを囲む森は、行先のない者や悩んでいる者が足を踏み入れると、一生彷徨う事になると言われています。先程言った魔法木(マジックツリー)とは、名前の通り魔力を持つ木で、意思を持っており、その魔法木や精霊により森から出られなくなるんです」


「そ、そうだったんですね……」




レイは自分の無知さを恥じる。


そして、シェルマン家の近くの森を思い出す。


どうやら自分が遊んでいた森は、普通ではなかったらしい。


レイはそうだったかなぁ…と考える。




言われてみれば、少し広がったスペースは、小さい頃なかったような気がする。サムが新技披露の際に、良い場所はないかと探していた所、忽然とスペースが現れ、サムと喜んだのを覚えている。




あの事かな…?と、レイは少し納得する。




その様子をギルミアは黙ったまま見ていた。


そんな二人を見守りながら、ロリエンは続ける。




「貴方を連れていた四人組は、人間国(にんげんこく)の者達で、方向からすると東に向かっていました。ここはセントラルから見ると南側になります。貴方の故郷は、西側辺りではないですか?」


「あ……そ、そうです」




レイがロリエンの推察に戸惑いながら頷く。




「やはり、そうでしたか。セントラルを通らず、わざわざ遠回りして人気のない森を抜けようとするんですから、よからぬ事を考えている人達だったんでしょう。あの中の一人は、地形を把握できる魔力の持ち主のようでしたし、尚更でしょうね」




穏やかな口調で説明するロリエンに、レイは感服した。


そして、ふとロリエンの言葉で疑問を持つ。




「あの……人間国の人達って、言いました?」




レイが恐る恐る聞くと、ロリエンが頷く。




「えぇ。あの黒いフードは、恐らくそうだと思います」


「ゲ、ゲニウス…と言う人達では……」




レイが言うと、突然、空気がピンと張り詰める。見ると、ロリエンとギルミアは目を見開いていた。




「貴方は、ゲニウスにも追われているのですか?」




少し真剣な表情を見せるロリエン。


レイは、ロリエンとギルミアの反応が明らかに変わった事に焦りを覚えた。




「あ、いや……そう言う訳では……」




必死に否定するレイは、自分の正体を言わない方が良いかも、心の中で思う。




「ゲニウスは、今、教祖交代により過激さを増しています。関わりがないのであれば、その距離感を保った方が良いですね」




ロリエンの声が低くなる。


レイは相当良くない団体なんだと身に染みた。


言動に気を付けようと思っていると、ロリエンがフッと穏やかな表情に戻す。そして空気を変えるように柔らかな声を掛けた。




「こちらのお話ばかりで、すみません。貴方のお名前を聞いていませんでしたね」


「!」




レイはびくっと肩を震わせた。




前にエリオットから、自分の事は世間に知れ渡っていると聞いた。名前を言ってドラゴンの混血(ハーフ)だとわかったら、このエルフ達も自分に何をしてくるかわからない。




もしかしたら、殺そうとしてくるかも……。




(それはそれで、良いのかも……。だけど……僕は……)




レイはギュッと拳を握っていた。


心の何処かで、死にたくないと言う思いがある。自分がそう思っている事に、内心驚いた。




どうしようかと、レイが名前を告げれずにいると、ロリエンとギルミアは視線を交わせた。




そして、ロリエンがレイに向き直り、




「どうしました?」




と、心配そうに声を掛けてきた。


ギルミアは眉間に皺を寄せ怪しげにレイを見る。




(こ、これ以上黙ってたら、怪しまれる……)




レイは意を決して顔を上げる。




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