6-1
レイが目覚めると、辺りは暗くなっていた。
(何をしてたんだっけ……)
記憶が朦朧としている。
そんな中、ふと思い浮かんだのは、エリオットの言葉ーー。
『その時は、笑ってやれ』
ハッキリとその言葉が再生されたと同時に、レイは一気に起こった出来事を思い起こす。
そして身の毛のよだつ思いがした。
(僕…あの魔物と、戦ったんだ……)
思い出すだけで身体が震え出す。
この世には、あんな恐ろしい生物がいる。その生物は自分を狙っていた。
レイの胸に、もう二度と平穏は戻らないという確信が重くのしかかった。
(僕は、どう戦ってたんだっけ?)
レイがそう思いながら頭を抱える。
戦っていた時は、暴走に身を任せ、親友との別れで苦しかった思いしかない。戦い方も覚えていない程だった。
正直、死を覚悟していた。自分はどうなっても良いと思っていた。
しかし、眠りにつく前、エリオットが言っていた。
サムが、レイを助けてくれと頼んだと…。
「……サム」
レイが名前を呟くと、心が締め付けられる思いがした。
(サムと、ちゃんと話したい……)
ギュッと拳を握り、レイはサムの顔を思い浮かべる。傷付けてしまった後悔がズッシリとレイの心に重みを増しているのと同時に、サムの強張る表情が脳裏から離れない。
レイはサムに会いたいという気持ちを押し殺した。
そして、自分が"黄金のドラゴンの瞳"になっていた事も思い出す。
よりによって自分が恐怖する瞳になっていた。
(どうしてこんな事に……)
レイは寒さに震えるように、自分の腕を抱え込んだ。
教会で暴走した時の周囲の人達の驚いた顔や、先日エリオットが言っていた『目』という言葉の意味がやっとわかった。
「やっぱり、僕は……ドラゴン、なんだ」
呟いた瞬間、レイの胸の奥が苦しくなる。
この事実を、レイはまだ受け入れられなかった。
モヤモヤとした気持ちの中、レイはベットから立ち上がり、1階へ降りようと歩き出す。
立ち上がるのもやっとだった身体は、ふらつきもなくなる程だいぶ回復していた。たまに痛みが走るが、生活するには問題ない程度だ。
(回復魔法ってこんなに効き目があるんだ……)
レイは驚きながらも、ゆっくりと1階のリビングへと向かう。
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