表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/98

5-3



エリオット達が商店街を抜けると、北側にシェルマン家が見えてくる。


その先に見えるセントラル西側の森の入り口。




(もうすぐだ……!)




エリオットがそう思った時だった。




「うぁああぁぁあーーーー!!!」




森の方から悲痛な叫びが聞こえたと同時に、一瞬森が黄金に光り輝いた。




「!?」




エリオット達は驚き、森の方を見た。




その時ーー。




『グゥアアァアアァアァアア!!』




人間のものではない恐ろしい雄叫びを聞く。




「なんだ、今の!?」




アウロが走りながら声を上げると、




「急ぐぞ!」




エリオットも強く言い放ち、スピードを上げた。




森へ入ると、辺りは薄らと瘴気の霧に包まれている。そこから見て一角の植物が、茶色く枯れているのを見つけた。




「あそこか……!」




エリオットが駆け出すと、コリーと先鋭部隊四人も追いかける。そして、枯れきった樹木に囲まれる少し広がったスペースに出た。




辿り着いた瞬間ーー




「「「「「「!!?」」」」」」




全員がその光景に仰天し、そしてエリオット以外は皆身を震わせた。




自分達の四倍はある魔物が横たわり、苦しみもがいている。


その横で消えゆく瘴気を浴びながら、ふらふらと立ち上がる黒髪の少年。




その少年からは、(おぞ)ましい程の魔力が溢れていた。




「レイ……シェルマン……?」




エリオットがその姿に名前を呼ぶ。




それにピクリと反応したレイは、素早く振り返りエリオットの姿を捉えた。




(! ……黄金の、瞳……ッ)




エリオットは視線を合わせるレイの瞳を見て、目を見張る。すると、レイの無表情だった顔が緩み出す。




「……ッ、エリオットさん……」




涙を流し、微笑むレイ。




瘴気を物ともせず佇むレイは、黄金の魔力のベールに包まれ、この世のものとは思えない金色に輝く瞳に涙を溜めている。




その神々しくも見える姿に、皆息を呑んだ。


恐ろしい魔力に脅える中、皮肉にも『美しい』と思ってしまう。


誰もが、言葉を失っていた。




(これが、ドラゴン……)




そう思いながら、エリオットはレイの身体を見て驚く。


服は埃まみれで所々破けており、打撲の痕や血が滲んでいる。魔力のせいか、身体は小刻みに震え、立っているのもやっとの様子だった。




(アイツ……本当に一人で……ッ)




エリオットが驚きを隠せずにいた、その瞬間。




魔物の右腕がレイに向けて振り落とされる。




「あ、危ないッ!!」




コリーが声を上げる前に、エリオットが瞬時に身体向上魔法を足に掛け、素早くレイの元に駆け出した。




「副隊長!!!」




アウロの声が聞こえた時には、後半分の距離まで詰めたエリオット。




(間に合え……ッ!!)




レイはもう逃げる気力も無い状態のようで、振り落とされる漆黒の腕を茫然と眺めている。




エリオットは手を伸ばす。


そして、レイに覆い被さるように急停止すると、伸ばした手でレイを抱き、反対の手を寸前まで迫り来る魔物の拳へとかざした。




氷河(グレッチャー)!!』




エリオットが叫ぶと、青白い光が手の平から弾け飛ぶ。


その瞬間、魔物は拳からすごいスピードで氷に包まれていった。同時に、辺りの空気が凍り付いたように青く輝く。




氷漬けになっていく魔物が動きを止めた。それを見て、エリオットはコリーと先鋭部隊達の方へ視線を向け、声を上げる。




「アウロ、周辺を探れ」


「は、はい!!」


「コリー、浄化の準備」


「了解です!」


「他の者は、魔物を確保しろ」


「「「はい!」」」




エリオットの指示にそれぞれが動き出す。




アウロは気配を探る為、その場で両腕を突き出し目を閉じ、三人の先鋭部隊はシールドを展開し、魔物を覆う。そして、コリーは浄化の為の魔法詠唱を始めた。




エリオットはレイを抱えると、後ろへ退避し、再びピクリとも動かない魔物を見る。




コリーが詠唱を終えると、翡翠色の光が上空へ立ち上るようにコリーの体を包みこんだ。




神聖なる解放(サケルリベラーレ)!』




コリーが叫び両腕を開くと、凍った魔物の下に大きな魔法陣が現れる。翡翠色の円陣は一瞬にして輝きを増し、シールド内を覆い尽くすと、凍っていた魔物の身体は小さくなり、徐々に消滅していく。




エリオットが怪訝な表情でそれを見ている中、腕の中からレイもその様子を見て呆気に取られていた。


辺りが緑の光に包まれる中、アウロが目を開き、動き出す。




(深追いするなよ、アウロ)




エリオットはアウロを一瞥すると、浄化を終え、鎮まりゆく光の方へ視線を移した。




(やはり、この魔物も……)




エリオットは眉をひそめ、解かれゆくシールドを見つめた。すると、レイが弱々しく呟く。




「あれは……リス……?」




.

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ